説教
人は死ぬ、絶対死ぬ、必ず死ぬ。
この世の命は幻に過ぎない
〜麻原彰晃〜
遊具にめり込んで動けないボクを見下ろしながら七花さんは笑っている。
知藺乃さんは、そんな彼女を見て敵か味方かわからずおろおろしている
そして、ボクはめり込んだまま動けずにいる。
…なんだこの三竦みは。
『えっと、七花さん…』
『なによ?』
彼女はボクの呼び掛けに対し面倒くさそうに応答しながら煙草を吸う。
その煙は白い。
病的なまでに。
『なぜここに?』
『買い物よ買い物』
ほら、と言いながら彼女は右手に持っていた包みを持ち上げる。
確かに買い物に行っていたらしい。
中には色々な食材が入っていた。
『えーっと…じゃあ何でボクを殴ったんですか?』
『ムカついたから』
彼女は、ボクの問いに対しスパスパと答えながらボクに近付いてきた。
そして、ボクの体を遊具から出すと共に思いきり殴ってきた。
本日二度目。
今度は地面にめり込んだ。
辺りの土を抉り尚止まらない。
重い重い拳だった。
『あんたさぁ…言ったわよね。自分の快楽のために殺人はしないって。あたしに稽古をつけて貰うときに言ったわよね?』
七花さんは出来の悪い息子を叱るような口調だった。
これだから彼女には敵わない。
これでは怒られていると言うよりも不出来な弟を諭してると言った感じではないか。
『…言いました』
地面から必死に起き上がりながらボクは言った。
『じゃあ、なんで笑ってんのよ。殺そうとしていたときのあんた笑顔だったわよ?楽しい?殺すのは』
そんなボクに彼女は質問を浴びせながら痛いところを突いていく。
だが、やめてくれ。
それ以上は。
『楽しかった?自分の殺人を肯定して人を殺すのに理由をこじつけたときは』
だが、彼女は言った。
ボクが少し考えてしまっていたことを。
なんの躊躇もなしに。
『貴方に…貴方に…なにがわかるんですかっ!ボクの何が!』
『なにも?』
彼女は、とぼけたような表情を浮かべながらこちらに向けて指を指す。
『あんたのことなんかなにもわからない。わかりたくもないわ』
そう言って、彼女はボクの頭をくしゃりと撫で笑う。
『あんたは最低よ。人を殺すことに躊躇をしない。世界一最低な男よ。でも、雪ちゃんは貴方を選んだ。なら、あんたもあの子に相応しくなりなさい。大丈夫。我慢できなくなったら、私にぶつけなさい。お姉さんはそれくらいいくらでも受け止めてあげるから』
そう言って、彼女は買い物袋を知藺乃さんに預け煙草を指で揉み消す。
これからなにをされるのかがわかった。
なら、全力を尽くさねば死んでしまう。
そう思いながら周りを見渡すと食人鬼はすべて地面にねじ伏せられていた。
だから、彼女が話している最中誰も襲ってこなかったのか。
きっと、七花さんの仕業だろう。
あの量を一瞬とは
スゴい人だ。
そう思いながらナイフを構える。
狙うは目の前の阿修羅の首のみ。
七花さんはボクの様子を見ていった。
『んじゃま、いっぺん死になさい』
その一言と共に殺しあいは始まった。




