終了
俺には死刑こそが最もふさわしい。
俺や俺みたいなヤツから社会を守るには、それが当たり前の事だ
〜テッド・バンディ〜
『…一体全体何をしてるんだい凜くん?』
少女、篠宮雪はボクに近付いてくる。
少しずつ
少しずつ
まるで、今からボクの首を落とすハロスのように静かにボクに近付いてきた。
ボクは動かない。
いや、動けないのだろう。
それほどまでに彼女に精神を切り裂かれていた。
彼女がボクに近付く度にボクの根本。
魂のようなものが死滅していく感覚だった。
それは、達観でもなく
陶酔でもない。
純粋なる恐怖だった。
『あ…あぁ…』
彼女が近付く度にボクは下がる。
まるでミステリー小説における被害者のように。
はたまた、悲劇の主人公のように。
彼女に圧倒される。
彼女に気圧される。
彼女に圧迫される。
そう思うと、足が鋤くみ地面に腰を落としてしまった。
少しずつ下がる。
地面を指で削り逃げ道を探しながら。
みっともなく下がった。
彼女から逃げられるように。
彼女から少しでも遠くに離れられるように。
だが、すぐに追い詰められてしまう。
篠宮雪は冷たく笑いながら凜を見落ろしこう言った。
『助けてほしいかい?』
…と。
その言葉に凜はハッと顔を上げる。
今にも泣き出しそうな顔だ。
先程殺しあいをしていたとはとても思えない。
一瞬、凜は『はい』と、言いかけた。
助けてほしい。
自分を何とかしてくれと。
『いいえ、いりません。貴方の助けは受けないと決めましたから』
だが、凜は本心とは別の答えを出した。
その答えを出した理由は山程ある。
だが、そんなことはどうでもいい。
決めたのだ。
殺人鬼になったあの日から。
とある少女を殺したあの日から。
彼女の役に立とう。
彼女を守り続けようと。
『ふふ、そうかい』
雪は凜の返答に笑いながら返事をする。
そして少ししてから凜の髪をクシャリと撫で霊華に言った。
『ボクたちの仕事は終了だよ霊華くん。これで帰らせて貰うとするよ。無駄な働きは嫌なんでね』
壁にもたれ掛かったままの霊華は一瞬文句を言いかけたが今の自分に命令など出来るわけがないと悟ったのだろう。
大人しく頷いた。
『ああ、そうだ。君も来るといいよ』
突然、思い出したように少女に提案をする雪さん。
少女は困惑顔をしていた。
よく意味がわからなかったらしい。
『彼女といると事情聴取を受けてしまうからね。ボクたちについておいで。お詫びに凜くんがパフェでも奢ろう』
どうせ、自分が食べたいだけだろうに…などと凜は思いながら少女に手を差し伸べる。
パフェと言う言葉に反応したのか少女はニッコリと笑いながら大きく頷き凜の手を握った。
『さぁ、帰ろうか。ボクたちの日常に』
吸血鬼は宣言した。
日常への帰還を。
だが、ボクたちはこのあと知ることになる。
日常などボクたちにはないと言うことを。
ボクたちに気付かれないようにしながら獰猛な笑いを浮かべていた少女以外は。
だが、とりあえず今だけは戻ろう。
あの暖かい日常に。




