運命
頭が切り離されたあと、一瞬でも首からほとばしる血の音が聞こえるでしょうか?
それが全ての快楽を締め括る、最後の悦楽になるでしょうから。
〜ペ-ター・キュルテン〜
少女は少年との出会いを運命だと思った。
急いで帰る理由もないのにただなんとなくで入ってしまった裏道。
そこにいた二人の男。
そして自分が探していた少年。
これだけの偶然が重なるなんて奇跡以外にはあり得ない。
殺されかけていると言うのに少女はそんなことを考えていた。
いや、あまつさえ少女はナイフを振り下ろそうとしている凜を見ながら心の中で笑いさえもしたのだ。
自分を殺せるものなら殺してみろと嘲るかの如く。
そして、ナイフが振り下ろされかけて…
止まった。
『…なにをしてるんですか貴方は』
少女に向け振り下ろそうとしたナイフ。
それが、空中で制止した。
いや、それは正しくない。
それは後ろから聞こえる声の主によって止められたのだから。
振り返らなくてもわかる霊華さんだろう。
ボクの後ろをとれるのは彼女くらいしかいない。
いや、いるだろうけどボクはまだ知らない。
『貴方は、食人鬼の確保が任務だったでしょう?なぜ、殺しているんです?それに、なぜこの少女を殺そうとしたんですか?』
咎めるような声で霊華は続けて言った。
だが、凜は聞いていない。
彼女の言葉などどうでもいいからだ。
今すぐ彼女を殺してでもこの少女を殺さなくてはならない。
そんなことばかり考えていた。
自分の秘密を知られてしまったのだから。
殺さなくてはならない。
この秘密を知るものはいてはいけない。
そんな風に考えていた。
少女を殺すためにはまず霊華が邪魔だろう。
しつこく自分に文句を言っている霊華を横目で見ながらシミュレーションを開始する。
最初は、体を回転させ裏拳。
そして、彼女の顔を蹴り飛ばし壁に叩きつける。
そして、そのまま呼吸困難で動けない彼女の胸をナイフで貫く。
それで、彼女は動けなくなるだろう。
彼女とて人間なのだから
その後で、少女を殺す。
完璧だ。
頭の中で何通りかの動きを考えながら霊華に向け行動を開始する。
まずは、頭。
霊華に向け裏拳を放つ。
彼女は驚いたような表情になりながらも腕を離すことで交わす。
だが、それが狙い。
腕を離されたことを確認し裏拳の勢いを地面に手を付き蹴りあげることで利用し霊華の顎を狙う。
霊華はそれを間一髪で両腕で受け止めるこれはまだ予想の範囲内。
押し戻されるのを腕をバネにすることで阻止し、彼女の体を壁のように蹴り飛ばし前へと転がる。
そして、不意に蹴り飛ばされたことでガードが緩くなった霊華の間合い内に入り込みナイフを突き刺そす一歩手前。
『そこらへんにしといたらどうだい?』
今、一番聞きたくない人の声が聞こえてきた。




