6.実質最年少・女性宰相の誕生と断罪劇とその後
メイド長としての私の朝は早い。
その日一日のシフトから来客予定、その他もろもろを前日ヴァイオレット様と調整した内容をお屋敷のメイドたちに伝える。
最近は、若いメイドも増えてきており、私も指導者としての立場になった。
が、娘に負ける。
サーシャのほうがメイドとしての能力も高い。
大丈夫か私…
スカーレット様は本当に1年で卒業されてしまった。
現在はグルード様の補佐として王城勤めをされており、護衛でサーシャもついている。
一応宰相はグルード様だが、実質取りまわしておいでなのはスカーレット様だという。
グルード様は書類にサインをするだけのマシーンになっているらしい。
その代わり、今まで碌にできなかったという領地運営に力を入れていらっしゃる、
息子と二人で公爵領を盛り立てたいのだそうだ。
実質最年少・女性宰相爆誕である。
そして、来年にはルドルフ様と挙式なさるそう。
なお、代わりにグイード様が今は学校へ行っていらっしゃいます。
グイード様はちゃんと3年間通われるそう。
公爵領を盛り立てるためには国内のつながりが大切とのこと。
スカーレット様は言い寄る男たちから逃げ出したくてさっさと卒業なさったことを考えると、どっちがちゃんとしてるんだかって思う。
ぶっちゃけ、この国を裏から牛耳るのがスカーレット様になりそうな勢いだ。
そういえば、グイード様から伺ったところによると、王太子殿下はいまだに学校でスカーレット様を探しているらしい。
もういないのだが、気が付いていないのか?
そして、どうもスカーレット様の気を引くためか、例のヒロインちゃんを構って嫉妬してもらおうとしているようだ。
で、ヒロインちゃんもあることないこと殿下に話しているらしい。
あの、スカーレット様もう学校にはいらっしゃいませんよ。
スカーレット様の結婚式が静かに執り行われました。
公には?一切発表せず、公爵家内のチャペルにて神父さんを呼んでの結婚式です。
小さいながらも素敵な挙式でした。
「今までありがとう、これからもよろしくねサリナ」
スカーレット様からのお言葉で思わず涙してしまいました。
さて、グイード様のお話では、学校ではスカーレット様の良くない噂を流す者たちがいるらしい。
てか、スカーレット様もう学校行ってらっしゃらないんですがね?
グイード様はスカーレット様至上主義なので、裏でかなりな根回しをして、根も葉もないうわさは、まともな貴族であれば信じない状態には出来ているようです。
どうも情報発信元はヒロイン男爵令嬢。
あー、完全に転生者だわ…もう少しうまくやりなさいな…状況把握大切よ。
そのせいで、グイード様は断罪の準備を着々と進めていらっしゃるみたい。
それはそれで怖いよ。
スカーレット様は気にせず国政に力を入れておられます。
ほぼ実権を握っていらっしゃる状態。
そしてグイード様と協力して、現王太子殿下の奇行を逐次報告して、廃嫡を働きかけているらしい。
アシュレイ家怖いよ。
まぁ現在王家には下に王女殿下がいらっしゃるから、そちらに王位を継いでいただき、王配をつけることを計画しているようだ。
私もジョシュもそんなゲーム情報とか伝えてないのに、二人とも勝手に動き始めている。
もう恐ろしいよこの子達。
そして、スカーレット様の護衛をしつつ、学校へ潜入捜査するうちの娘サーシャ。
もうめちゃくちゃである。
翌年、本来のスカーレット様の卒業式。
スカーレット様は生徒ではなく、宰相代理つまり賓客としてご参加。
当日、卒業生代表として王太子殿下が挨拶、送辞はグイード様がなさって、つつがなく終了した。
グイード様曰く、賓客席にいらっしゃるスカーレット様を見つけた王太子殿下はにやりと笑ったそうだ。
そこにいらっしゃる時点でおかしいことに気が付かないんだから廃嫡されても仕方がないか…
「スカーレット・アシュレイ!貴様との婚約を破棄し!ここにいるアミル男爵令嬢と私は婚約する!!貴様はアミルを事あるごとに虐め・・・(以下略」
卒業パーティーが始まり、しばらくして、王太子殿下はステージの真ん中でそのように叫んだそうだ。
多くの生徒たちは「何言ってんだ此奴」と思っただろう。
「閣下、私はあなたの婚約者だったことはございませんよ?寝言は寝てからおっしゃってください。それに私は隣国の元第三皇子であるルドルフ様とすでに結婚しております。またすでに2年前に学校は卒業しており、今日は宰相代理として参加しておりますが、何を勘違いしておいでですか?」
バッサリ切り返され、唖然としている王太子殿下に、スカーレット様は追い打ちをなさったそうだ。
というか”閣下”と呼ばれた時点でおかしいと気が付けよ。
「そうそう、王太子殿下は本日正式に廃嫡され、地方の領地に1代限りの公爵として臣籍降下することになっておりましたわね。それほど大きくない領地ですから殿下でも運営できるでしょう。
アミル男爵令嬢でしたか?1代限りですので子供は公爵位を継げませんが、公爵夫人ですわね。おめでとうございます。ところで卒業式をこのような戯言で台無しにされました公爵閣下は、どのように責任をお取りになるのでしょうね?」
閣下は真っ白になっていたそうだ。
アミルも目を白黒させていた。
殿下付きだった側近たちもうろたえたそうだ。
そろいもそろってバカである。
誰が国の実権を握っているのか把握も出来ていないとは…まぁ膿を出せたというところだろうか?
その後、公爵家はグイード様が切り盛りし、宰相スカーレット様は鉄の女と呼ばれるほどの才女として国王に代わり国を取り仕切った。
45を超えた私たち夫婦は、すでに結婚していたサーシャに家督を譲り隠居。
サーシャは?アシュレイ家を支える暗部のトップ且つメイド長として腕を振るっている。
「スカーレット様が幸せになられてよかったよね?」
「そうだな、私達が何かしたおかげなのか疑問だけど」
「ベースが強すぎじゃない?ゲームとは何だったのか」
「それはここが現実だってことだよ」
「そうね、みんなの今後をゆっくりと眺めていきましょう」
私とジョシュは毎日サーシャの報告を聞いて推しの活躍に一喜一憂している。
三つ子の魂百までというが、ジョシュはどうもBL小説を作るつもりらしい。
私はそのサポートでもして老後を楽しもうかな。
これからも楽しく生活できそうだ。
完結です。
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