4.娘二人
ヴァイオレット様が出産されてから2ヶ月後、私も娘を出産した。
ちょっと未成熟気味だったのではないだろうか?
とはいえ、スカーレット様との乳姉妹の誕生である。
この2か月間は、ヴァイオレット様がスカーレット様に御乳を上げ、一時的に私が面倒を見るということをしている。
なお、ジョシュからすごく子供の扱い方を勉強させられたので、スカーレット様はすくすく大きくなっている。
そして、私の娘も無事育っている。
というか、結果的に歴史は変わった。
ヴァイオレット様はご健在だし、グルード様との仲はより深くなっているようで、現在毎晩頑張っておられる様子。
というかグルード様とヴァイオレット様は高位貴族には珍しく恋愛結婚だったらしくとても仲が良い。
むしろ政略結婚みたいな我々のことを心配されていたが、「ちゃんと愛はあります!」と二人で宣言しており、表面上はお二人の不安を払しょくできていると思う。
どうも、無理やり結婚させたんじゃないかとヴァイオレット様が気にかけてくださっている。
大丈夫、貴方を支える為ならば私達はこの身をささげることを厭いません。
私達の子供も順調に育っている。
生まれてすぐはあまりに小さく心配したが、今はスカーレット様とあまり変わらない大きさになってきている。
今気を付けるべきは、この子が悪役にならないようにすること。
一応子爵令嬢だが、私達があんまりスカーレット様を構いすぎて、娘が捻くれたんでは話にならない。
二人とも貴族令嬢として恥ずかしくない様に育てなくては。
出産から3年。
二人とも片言ながらしゃべれるようになり、1年前にはちゃんと乳離れもした。
スカーレット様がなかなか乳離れできなくて、家の娘も遅くなってしまったよ。
今は二人とも”これなぁに?星人”である。
娘のサーシャは見事な茶髪の黒目で「あー私たちの子だわ」って感じ。
そしてロリスカーレット様の破壊力。マジ人形。
こんな二人が日々、おててつないで私の周りをついて回る。
どうも屋敷の女主人として手腕をふるうヴァイオレット様の邪魔をしない様に遊ぼうとすると私かジョシュがそれに付き合うことになる。
結果、私が普通にメイドの仕事をしていても、その仕事道具などに向かって「これなぁに?」をお見舞いされる。
私は仕事の手を停め、丁寧に道具の名前や使い方を教えてあげる。
てか公爵令嬢には不要だと思うんだけどねその知識。
でも、下々の働きを理解することも将来の女主人としては重要かな。
あと、ヴァイオレット様は二人目をご懐妊中。
男の子がいいなとのこと。
そうですわね。と二人で笑いあっております。
今度の乳母は別の方にしてくださいましね。
スカーレット様は兄弟ができることをご理解されているようで、気丈にふるまっておりますが、たまに甘えたそうにしております。
特にサーシャが私に甘えているのを見ると、まさに指くわえて見つめている状態になるのです。
なので、私はスカーレット様も一緒に甘やかします。
別にわがまま言わせるわけじゃないですよ?
それに、二人の教育についてはジョシュも手伝ってくれています。
まだ、家庭教師はつきませんが、私は淑女の嗜みを、ジョシュはまず読み書き数字を教えております。
スカーレット様もサーシャもなかなか飲み込みがはやいようで、教えていて楽しいですね。
月日が経つのは早いもので、スカーレット様も娘も7歳になりました。
すでに家庭教師もつけ、学校で習う初等教育の範囲の勉強を始めています。
サーシャは私の子でしょうか?スカーレット様と学力ではかなり張り合っております。
スカーレット様にも良いライバルとなっており、切磋琢磨して互いに良い刺激になっているようです。
そんなある日、伯爵家以上のご令嬢に王宮主催のお茶会への参加打診がありました。
すでに公爵家執事になっているジョシュからの情報です。
いよいよいやってまいりました。
王子との顔合わせです。
この3年間、サーシャには徹底したメイド教育と護衛教育を施しました。
そうです、スカーレット様の護衛メイドとして当日のお茶会にはついていきます。
スカーレット様ご自身も一緒に護身術は学んでいらっしゃいます。
さらに!スカーレット様は随分素直な性格に育たれました。
淑女の鑑とでも言いましょうか。
あとヴァイオレット様の二人目のお子様は見事男の子でした。
跡取りができたとグルード様もお悦び。
隠居したグラッド様夫妻も完全におじいちゃんおばあちゃん顔です。
ヴァイオレット様を悪く言う年配メイドも退職したり、改心したりで、お屋敷の雰囲気も良い状態です。
跡取りを生んだのが最後の決め手になったのでしょう。
そのおかげで、スカーレット様はのびのび育たれております。
むしろちょっとおっとりしすぎです。
サーシャにちゃんとサポートさせませんと、悪いオオカミに食べられてしまいかねません。
ジョシュと共に、スカーレット様とサーシャが馬車に乗り王家のお茶会へ向かいました。
無事乗り切ってくれよ…サーシャ何かあればきっちりスカーレット様を守るのよと心の中で祈りながら日々の仕事を進めます。
そして、日が沈む少し前に、3人とも帰ってきました。
スカーレット様、全く王子殿下に興味を示さなかったそう。
サーシャと二人で王宮のお菓子を楽しみ、お友達をいっぱい作って帰ってきました。
えぇなんかイメージと違う…いや、王子に言い寄らなくてよかったとは思うけれど。
「二人ともしっかりしていたよ」
とはジョシュの談。じゃあ大丈夫だろう。
特に喧嘩だとか、侮辱されるだとかもなかったそうだし、友達を作れたならよし。
サーシャは少し、男の子に子爵家の令嬢が何でこんなところにいるんだと、絡まれたそうだが、護衛メイドとしてついていることはおかしなことじゃないのと、つかみかかろうとした騎士団長の息子を投げ飛ばしたそうだ。
いや、十分事件だったじゃねーか…
「向こうの有責で丸く収まった」
とはジョシュの談。大丈夫?それ公爵閣下の後光でとかじゃないよね?
てか騎士団長の息子投げ飛ばしたのかサーシャ…ずいぶん強いとは思っていたけれど、それほどとは思わなかった…いや正しく教育できているとは思うけれど、将来がある意味心配だ。
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