下級貴族に転生した!
例のごとく頭空っぽで呼んでいただけると!
学園の卒業式を終え、その後のデビュタントに参加し、初めて飲むお酒がおいしくて飲みすぎてしまったらしく、家に帰ってきてから倒れた私、サリナ・ミラフォード。
ミラフォード子爵の三女に生まれた私は、この酔っぱらって昏睡している間に前世の記憶を思い出した。
前世の名前は何とか紗理奈。苗字は思い出せなかった。
ただ、たぶん前世でも飲みすぎて死んだんじゃないかと思う。
そんな私とこちらの世界のサリナの記憶はすでに三日も続いた二日酔いにより溶け合っており、私は私であるという記憶の整理ができていた。
問題は、ここが私が生前やっていた乙女ゲームの世界だということ。
「星降る夜に誓いを立てて」”フルチカ”と略されていた乙女ゲーム。
王道なストーリーながら、攻略対象の王太子には婚約者の公爵令嬢がおり、ライバルキャラとしてヒロインの前に立ちはだかる。
他のキャラたちには婚約者はまだおらず、純愛を楽しめるのだが、王太子ルートのみが略奪婚なゲームだ。
そして、公爵令嬢はヒロインだけではなく、貴族学校での生活態度から悪評が立っており、王妃にふさわしくないと、社会的に抹殺されてしまう。
最後は修道院送りか国外追放。
ただ、彼女の見た目は素晴らしいのだ。
ヒロインが元平民と言うことも有り「特徴がないのが特徴」というような女の子で、ヒーローたちはカラフルな髪色と様々な萌え属性を持つイケメンばかりという特性上、「見目麗しい女キャラ」は彼女しかいないのだ。
スカーレット・アシュレイ公爵令嬢。
アークレイ、アシュレイ、アレクセイという三公爵の1家のご令嬢だ。
幼き頃母を亡くし、現在宰相をやっている父は忙しくて家に帰ることが少なく、家族の愛が欲しい彼女はメイドや執事にかまってもらいたくて我儘放題に育ってしまい、結果高ビーの性悪女になってしまう。
ただ、彼女は他のキャラに比べると悪役令嬢なのに設定が盛りに盛られており、見た目は金髪碧眼のお人形さんのような見た目で、スレンダー。劇中でも学校ではほかの生徒はみんな制服を着ているのに、出てくるたびに様々なドレスを着ていたため、カルト的な人気で同人誌も多かった。
というより、フルチカにおける同人誌はBL9割、スカーレット1割という変なことになっていた。
だれも夢女がいねぇと思ったが、私もスカーレットの同人誌はローラー作戦で買い集めていたので人のことは言えない。
さて、問題は現在15歳の私は、なんとスカーレットのお父さんであるアシュレイ公爵と同級生ということだ。
知り合いではない。
子爵令嬢がおいそれと声はかけられないので。
さらに問題なのが、まだ「アシュレイ公爵令息」なのだ。
婚約者はヴァイオレット・ラクーン伯爵令嬢。スカーレット様のお母さんになる女性で、私の1個下の学年。
スカーレットが生まれるより前に私は転生しているらしい。
そこで私は考えた。
「推しのスカーレット様の専属メイドになって、仮に母を亡くしても支えてあげることで悪役令嬢ではなく、だれからも愛される令嬢に出来るのではないか?」と。
というのも、同人誌にも「生存レット・ラクーン様」ネタは結構あったのだ。
ヴァイオレット様が死ななかったことでよい子に育ったスカーレット様ネタ。
私が一番好きだった二次創作。
なお、なぜかそうなると王太子と婚約しないものが多かった。
まぁいいけど、あの王太子それほど好きじゃないし、私の可愛いスカーレット様は、それこそ「真実の愛」に目覚めてほしいと思っていた。
つまり、目標はスカーレット様の専属メイド又は乳母になること!
翌朝、父から二日酔いの薬をもらい、お酒の飲み方を覚えなさいと怒られた。
三日も寝込んでいたので甘んじて怒られるだけ怒られ、相談することにしたのだ。
私は現在、学校を卒業したものの将来の進路が決まっていなかった。
成績は中の下、父は文官貴族で王都に屋敷があるものの、姉二人はすでに嫁に出ており、兄が家督を譲られる予定。
末っ子の私はある種甘やかされて育っていたこともあり、のらりくらりとしているうちに卒業してしまったのだ。
だが、今は明確な目標がある。
アシュレイ公爵家のメイドになる。
運よく、我が家はアシュレイ公爵家の派閥である。
それに成績が中の下であったとはいえ、姉から「つぶしが効くから取っときなさい」といわれた侍女教育課程の卒業証書を持っている。
なので、高位貴族のメイドになることは事実上可能。
「というわけで、アシュレイ公爵家のメイド試験を受けようかと」
「お前では無理だろう」
父から一刀両断された。
ばっさりである。
公爵家のメイドになるには子爵家以上の女性で(身元保証の為)、且つ一定期間以上の奉公実績があり、2か国語以上が話せ、その作法がわかること、という厳しい条件がある。
厳しい!!!第二外国語なんて話せない!!
「どうしても、公爵家のメイドになりたいというのなら、クレイソン伯爵家に行ってはどうか?あそこは、奥様が隣国のお生まれだから向こうの言葉が話されることがある。勉強する気があるのなら、そこで実績を積んでから受けなおしてはどうだ?」
「なるほど!有難うございますお父様のアドバイス受け入れますわ!」
こうして、父の推薦の元、商売に明るく、奥様が隣国の生まれであるクレイソン伯爵家のメイドとして働くことが決まったのだった。
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