Sunday 異聞昔話
Sunday 異聞昔話 (ウメ太郎のもののけ退治)
むかしむかし
あるところに
ウメ太郎という子が
おじいさんおばあさんと一緒に暮らしておりました
三人が住む村では最近もののけが現われ
村人がいたずらされて困っていました
ある日の朝、ウメ太郎が二人に言いました
「おじいさんおばあさん、今からもののけをとっちめに行ってくるよ」
二人は大変心配しましたが、ウメ太郎の意志が固いことを知り、
それぞれ役に立ちそうなものを持たせました
「大丈夫、もののけをやっつけて帰ってくるから」
二人に見送られて、頭にハチマキ、上着はタスキ掛け
腰帯に刀を差し村道に向かって歩き始めます
*
しばらくして、ウメ太郎に声が掛かりました
「おいらも行くよ。一緒に戦おう!」
学校で一番親しい友達のマリ男です
肩掛けの吊りズボン姿の動きやすい服装で
頭に赤いベレー帽を被っています
ウメ太郎は喜び
おばあさんからもらったチョコボールを渡しました
「おいしい」
マリ男は嬉しそうです
*
道を進んでいくと女の子が現われました
「あたしも行くわ!」
二人と同じクラスのセイ羅です
胸に蝶飾りを付けた丈の短いワンピース
長髪を左右に垂らした姿に思わず目が移る
一人でも多い方がいいと思いチョコボールを渡すと
「あたしチョコボ大好きよ!」
手にしたスティックを振りながら笑顔で応えた
*
更に歩いて行くと道の真ん中に
腕を組んだ男の子が目に入りました
「俺も連れて行け」
ケン四郎も同じクラスです
TシャツにGパンの軽装ですが
筋肉が付いた胸に7つの傷があるそうです
いつも体を鍛えており、そして無口です
この日もチョコボールを口にしましたが
「うまい」
の一言でした
*
4人が向かった先は動物の森です
今はもののけ達が集まっているそうです
入り口受付の女の人に声を掛けると
「入場料一人一万円だニャア」
もちろんそんな金誰も持っていません
ウメ太郎はおじいさんから預かった
スマホを思い出し、窓口に差しだしました
「これで支払いできますか?」
「スマホ決済できるだニャア」
女の人は入金処理をして言いました
「大丈夫、入っていいだニャア」
おじいさんの金を使って申し訳ない気がしましたが
仕方ありません
「でも、すぐに戻ってくるだニャア、ニャニャニャア」
女の人の瞳は黒光りし、口からは牙が覗いています
少し妙な気がしましたが4人共中に入ることにしました
*
場内は不思議なほど静かです
いつもは、ウサギやリス、羊が出迎え
鳥も飛びまわっているのですが、動物の姿は見えません
その代わりに空中に浮かんでいるものが見えました
布切れようですが、突然飛んで襲ってきました
4人共かろうじて避けましたが
表面に目と口がついており噛みつかれそうでした
3体が飛び回りながら話しかけます
「俺たちは一反木綿、ここは通さないぞ、帰れ帰れ!」
次々と頭の上から飛んでくるので避けるだけで精一杯
その時、セイ羅が前に出て言いました
「あたしがやっつけるわ」
両足を広げ、手に持ったスティックを上に掲げます
「セーラースクリュウー!」
と言いながらくるくる回し始めますと
向かってきた一反木綿がスティックに絡んでいきました
全てが巻き付いた後、思い切り振ると
「ヒエーイッ」
森の彼方へ飛んで行った
「お見事」
と仲間が讃え、先に進む
*
ところが真っすぐな道の途中で壁にさえぎられた
しかも中央にある口が開き、言葉を発した
「わしはヌリカベだ。これ以上通さんぞ」
体全体で威圧し、前進を阻む
「俺が相手する」
ケン四郎がヌリカベの前に立ちTシャツを脱ぎ捨てた
そして拳を固め両腕を振り上げヌリカベに近づく
「ウリャアー!」
声を張り上げ壁に向かって何か所か殴りつけた
そのあとケン四郎は言った
「もうお前はくたばっている」
それに対しヌリカベは体を確かめ応えた
「ふん、痛くもかゆくもないぞ」
ケン四郎は首を傾げながら足で下部を蹴った
「ギャーッ」
どうやら急所に当たったようである
ヌリカベは悲鳴を上げながら森の奥に逃げて行った
「やったあ、すごい!」
*
と、仲間の声が上がったつかぬ間
木の上からゴムのようなものが伸びてきて
ケン四郎の体に巻き付きました
なんとその先には女の顔がついています
「ワッチはロクロ首よ。もう殴りも蹴りも出来ないね」
ケン四郎が力を入れてもびくともしません
仲間が外そうと首を引っ張りましたが固くてゆるみません
その時、マリ男が言った
「今度はおいらの出番だ」
マリオはポケットから付け髭を出し、自分の鼻の下に付け
ロクロ首の顔の前に行き睨み合った
「ロクロさんロクロさん睨めっこしましょ、あっぷっぷ」
そう言いながら、思い切りひょっとこ顔を真似る
その顔を見たロクロ首は噴き出し
「なんて可笑しい顔なの。ほほほほ!」
笑いが止まらず締め付ける力が弱まった
すかさずケン四郎は巻き付けから抜け出し
首をつかんで森の遠くに放り投げた
「キャーッ!」
ロクロ首の姿はあえなく消え去った
*
「マリ男、お手柄だな」
誉め言葉が上がった直後に森の奥から大声が聞こえた
「野郎ども、一斉にかかれ!」
前方を見ると多くのもののけが向かってきます
かなりの数で一気に来られては敵いません
ウメ太郎はもしやと思いながらふところから
チョコボールを取り出し全てバラマキました
すると、もののけたちはチョコボールを食べようと殺到
もはや関心がそちらに移ったようです
お互い取り合っている間に、4人は森の奥に向かいます
「いったいどうしたんだろうな」
ウメ太郎は説明しました
「もののけは、もとは動物達だったのかもしれないよ」
「なーるほど、だから皆食べ物に目がなかったのね」
お互い話ながら森の奥に進むと前から声が掛かった
*
「とうとうやって来おったか。だがここまでだな」
4人の前にいるのは大きな一つの目であった
鋭い眼差しに思わずたじろぐ
「お前がボスなのか?」
ウメ太郎が問うと、目玉が答える
「わしは一つ目入道。ケガする前に大人しく帰るがよい」
「お前が動物たちをもののけにしたんだな、許さないぞ」
「そうか、ではお前たちももののけにしてやろう」
4人は一斉に身構えた
ところが目玉は見る間に赤く輝き始めた
そしてその真ん中から一気に光線が放たれた
マリ男、セイ羅、ケン四郎の三人はまともに目に入った
ウメ太郎だけが辛うじて腕で目をふさいだ
「どうしたんだ、体が動かないぞ」
「私もだめだわ。自由が効かないわ」
「クソッ!」
三人共、一瞬にして金縛りにあってしまった
「ハッハッハッ、お前たちはわしの意のままになるのだ」
ウメ太郎だけが体を動かせた
けれども相手が見られずどうにもならない
その時、おじいさんがスマホにアプリをインストールしてくれたことを思い出した
ウメ太郎は素早くスマホを取り出し画面を開く
密かに操作してアプリを起動
「どうれ、どんなもののけにしてやろうかな」
ウメ太郎の動きは見破られていないようだ
位置情報ソフトを覗き込む
すると一つ目入道の居る場所が示されていた
ウメ太郎はとっさに刀を抜きその方向に狙って投げた
「ギャーアー」
刀の先は入道の目の中心を貫いていた
「おのれ、小僧め・・・」
そう言った直後に一つ目入道の姿が消えていく
「やったあ!体が動くようになったわ」
「ありがとう、ウメ太郎」
三人共金縛りから逃れ喜びあった
*
ボスを倒した4人は来た道を戻っていく
途中で木から降りたサルに出会った
その片方の手にチョコボールが握られている
更に進むとウサギ、リス、ヒツジたちも現れ
そして、クマやキツネ、空には鳥も飛んでいる
本来の動物の森に戻り、皆が4人に感謝しているようだ
「村の人たちに知らせよう」
4人は笑顔で入り口に向かう
受付で女の人から声が掛かった
「お客様、料金を頂き過ぎていましたのでお返ししますわ」
ウメ太郎がうなづきスマホを差し出すと、返金処理して
「またいらっしゃってくださいね、お待ちしております」
どうやら、女の人も元に戻ったようだ
「そうだ、おじいさん、おばあさんにも礼をいわなくっちゃ」
4人は胸を張って村の道を戻って行った
それからは元通りの平和な村にもどったとさ
めでたしめでたし




