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運搬屋と獣人族フェーン

勢いよく開かれた扉の先にいたのは、

 獣の耳、獣の尻尾の生えた獣人族。


「フェーン、よくぞ来たな」


 フェーンと呼ばれた女性だった。



「ヤマト、お主は既に知っておるかもしれぬが、一応自己紹介をするぞ」


 魔王はそう言うと獣人族の女性、フェーンを持っていた木の棒で小突く。


「フェーン、ヤマトに自己紹介をせんか」

「はい、魔王様!!」


 フェーンは元気よく答えるとヤマトの方を向き自己紹介を始める。


「オオカミの獣人族のフェーンです!!魔王様を生き返らせてくれてありがとう!!」


 そういうとヤマトの手を握り、ブンブンと腕を上下させた。

 ヤマトがされるがままだということもあるが、細く柔らかそうな肉体に対して力は強かった。


 そしてもう一つ気づく。


(手足は獣なのか………)


 獣人族における獣と人間の部位の比率は、元の種族と個人差によっても大きく変わる。


 フェーンの場合、獣の耳と尻尾だけではなく、手首から先と足の踝から先も獣の物となっていた。


 獣人族によっては、全身獣の身体でも二足歩行をする獣人族もいたりする。もしかしたら獣だと思っているだけで四足歩行をしている獣人族もいるのかもしれない。


 そういった視点から改めてフェーンの獣の手を見た。

 人間よりも一回り大きく、銀色に近い銀色の毛皮でおおわれている。

 手のひらにはピンク色の肉球がついており、指先には鋭利に尖った爪が引っ込められていた。


(初めて会った時に首に突き付けられたのは、この爪だったのだろうか……)


 あの時に突き付けらえた鋭利な存在、それに首の皮を当てらえていた記憶が蘇る。

 思い出すだけで寒気がする。あの時殺されていた可能性は十分にあったのだから。


「あの時はゴメンね。魔王様を殺されて頭にきていたんだ」

「いや、仕方ないよ」


 仕方ないことだ。仲間を殺したのだから、復讐に走ろうとするのは。

 ただ今こうして思い出話に花を咲かせることの出来る関係になったのは、素直に嬉しかった。


 だが魔王様はそうでもないらしく


「フェーン、お主。ヤマトを殺そうとしたのか」

「まっ、魔王様。はじめに会った時の話だよ?今は――」

「そこが問題じゃ。ワシは絶対に復讐はするなといったじゃろ。

 もしヤマトを殺して人間の国に攻め込まれていたら――」

「ごめんなさい……」


 フェーンはしょんぼりと、立っていた耳が垂れ下がり、尻尾はしおらしく太ももの間に挟まれた。


「まぁ……過去のことは今は良いか。

 ただ反省はするように」

「はい!!」


 っと元気よく返事をするフェーン。

 それはまるで親子か……いや教師と生徒だろうか?


「それで本題じゃ、今回の旅は基本的にこのフェーンをお主の護衛に付ける」

「俺の護衛ですか?」


 魔王は旅の段取りを話し始めた。

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