運搬屋と護衛
「今後フェーンをお主の護衛に付ける。
旅に出るときもそうじゃが、出来る限り寝食も共にして欲しい」
魔王のお願いにフェーンは「はーい。任せてください」と元気に返事をした。
「ちょっと待ってください」
それを異議を申し立てたのはヤマトだった。
「なんじゃ?フェーンでは不満か?」
「いえ、不満ってわけじゃないですが……」
いくら獣人族とは言え、女性が常に一緒にいるというのは、中々に緊張してしまう。
魔王もヤマトの心を読んだのか、それに対して言う。
「慣れろ」
「投げやりじゃないですか!?」
あれほど知識の深い魔王様なのだから、もっと色々アドバイスとかあってもいいんじゃないだろうか………。
「実際問題、お主を最も安全に護衛出来るのがフェーンというのも理由じゃ。
獣人族の動体視力や危機察知能力は、他の者にはマネできぬ。
特にフェーンはそのあたりを重点的にワシが教え込んだ。
フェーンがついていれば滅多なことではお主は死なぬ」
フェーンは「褒められた!!」と嬉しそうな顔を見せていた。
確かに危機察知能力などはわからないが、彼女と一度相対した身からすると、彼女に守られるならまず安全だろうと思える。
だから旅の最中一緒に行動するのには不満はない。
「ですが何も寝食を一緒にすることはないですよね?」
うん、そこが問題。主に眠る方。
「生物は食べる時と眠る時、特に後者は最も油断しており、対処が難しい。
フェーンなら食べ物に毒が入っているかわかるし、眠る時も異常があればすぐに起き上がりお主を守れる」
「あと子作りも捗るかもしれませんしね」
魔王を抱えていたセレスは嬉しそうに言う。
そう言えばサキュバスだった、この人は。
「まぁ、そっちの方は………ワシらが無理強いすることではないにせよ、
安全面に関しては絶対じゃ。
ワシらはお主を失うわけにはいかず、
ワシが敵ならばお主を真っ先に殺そうと思う」
「そこまで言うなら………」
特に彼女に不満があるわけではない。
むしろ男としては恥ずかしいが嬉しいことだ。
何よりヤマトの身の安全は、ヤマトの夢と魔王軍の悲願に繋がる。
それを自身の羞恥心で揺るがすことはあってはならない。
「わかりました。よろしくお願いします」
そう言ってフェーンに握手を求める。
フェーンも嬉しそうにその手を握る。
その手は温かく、肉球はとても気持ちよかった。
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