第2話 厄の予感
時間は進み、昼食の時間になった。
チャイムが鳴ると、僕はバッグから弁当を取り出す。
取り出していると足音が近づいてくる。
昼食の時間で友達がめちゃ少ない僕に近づいてくるのは大抵1人だ。
『冥途!隣失礼すんぜ!』
蓮太郎だ。
蓮太郎は大抵僕と一緒にいる。
そして僕たちは弁当を食べ始めた。
3限目が体育だったのでお腹が空いていた、やはり運動後に食べるご飯は格別に美味しい。
『冥途、お前今日暇?暇ならゲーセン行かね?』
『ゲーセン…?まぁいいけど……あ、でも今日おじいちゃんの手伝いしなきゃ……』
『お前のじいちゃん…?また神社の掃除か?』
『そうだね……最近おじいちゃん腰痛めたらしいから……』
『お前の家系って昔からある霊能力者、いわゆる霊媒師?の家系なんだろ?』
『うん、前にもちょっとだけ話したけど、平安時代から続いてる…らしい、僕の家はちょっと複雑でね…
全員が霊能力を持っているのに対し、僕は……霊視はできるんだけど霊能力を持ってない。
僕たち黒鉄家は大きい組織と繋がってるらしくて、特に霊能力を持たない俺は組織の情報漏洩禁止、組織の人間じゃないという理由で、おじいちゃんがいる神社に預けられることになったんだ。
ちなみにおじいちゃんもその組織の人間なんだってさ』
『……そうか、なんかさらっとすごい事言ってるな……とにかくしばらく遊べない感じか?』
『…うん、そうなっちゃうかも……明日も手伝いしなくちゃいけないし…』
『あ、なら俺も神社の掃除手伝ってやるよ!そしたら早く終わって遊べるだろ?』
蓮太郎は掃除すると提案し始めた。
『え?いや悪いよ……関係ないんだし無理しなくて
も…』
『いいっていいって!俺も1人で過ごすのはしんどいしさ、なら2人で楽しく掃除した方がよくね?おじいさんにも挨拶したいしさ!これで決定な、学校終わったらお前ん家行こうぜ!』
はぁ……どこまで蓮太郎は人が良いのだろうか。
こんな変わり者の僕と友達になってくれたり、僕だけじゃない、他人の為に本気になってくれるところ。
僕は霊能力には恵まれなかったけど…
周りの人に恵まれたな。
蓮太郎と僕は一緒に神社の掃除をすることになった。
学校が終わり、放課後になる。
『よし!じゃあお前ん家行くか!そういやーお前のおじいさんって視えるんだっけ?』
『あ……うん、霊感はすごい強い方だって……確か神様からご加護をもらってる…?みたいなのは聞いたけど、あまり祀ってる神様の詳細とかは知らないんだよね、スマホとかで調べても実は一致してないらしいんだ。』
『へぇー………あ!もしかして俺もそのご加護をもらえば視えるようになるかな!?』
蓮太郎は目を光らせて言った。
『あはは……どんだけ幽霊を視たいのさ……』
そうして僕と蓮太郎は神社に着いた。
『着いた、おじいちゃん大丈夫かな?』
そう言うと隣の茂みがゴソゴソと音を立てた。
2人は驚く。
『うぉ!?なんだなんだイノシシか!?』
『えぇ!?いや東京だしそんなことは……』
僕らが焦っていると茂みから人が出てきた。
『ん…?おぉ冥途帰ってきてたんか!それに蓮太郎君も一緒か!遊びにきたのk______』
おじいちゃんが言い終えようとすると腰を抑え座り込んだ。
『おじいちゃん…!痛めてるんだから無理しないでよ…!掃除はしておくから…!!』
『冥途のじいさん!俺も手伝うから安心してくれ!
すぐに終わらせます!』
『お前達若者にそんなことをさせる訳には……遊んで来なさ……!?』
おじいちゃんが立とうとするとまた腰を抑え痛み出した。
『おじいちゃん…!休んで!僕がやっておくから…!
蓮太郎もやっぱり悪いよ……』
『良いって良いって!』
『悪いなぁ……じゃあ任せてもいいか?その代わり茶菓子をたくさん持ってきてやるからな……拝殿の近くの掃除をお願いしてもいいかい?』
『まかせてくださいよぉ!!』
蓮太郎が喜んで承諾する。
僕と蓮太郎は拝殿へと行き荷物を置く。
箒を取り出し、掃除を始めた。
『よし!俺はこっち側をやるから冥途はあっちをやってくれ!』
『うん』
僕たちは掃除を始める、僕は集中して箒をはくが……
蓮太郎は早くも集中力が切れた。
約3分という短い時間で……
『冥途ー、なんか話しながらやろうぜ、先生の愚痴でも言い合うか?』
『いやぁ……神様がいるところでの愚痴は……ちょっとダメなような……』
『あ、確かに……罰当たりになっちまうもんなー…』
『おい冥途、蓮太郎君、茶菓子持ってきたぞ!たくさんお食べ!』
そうしているとおじいちゃんが茶菓子を持ってきてくれた。
『マジすか!じゃあ遠慮なく頂きますっす!』
蓮太郎は一目散に食いついた。
まぁ……こうやって3人で話すのも悪くない、そう思い掃除は後回しにした。
『うま!この茶菓子美味いっすね!』
『そこら辺で買ってきたもんだ、味に大差はないよ』
『いやでも本当に美味いんすよ!他の全然違う!これが神のご加護ってやつっすか!?』
『神のご加護……それとは違うね…神様が美味しくでもしてくれたのかな?』
おじいちゃんが笑って言う。
神様が茶菓子なんかにご加護をしないだろ……とは思ったが、雰囲気を壊したくないのでその気持ちは心にしまっておく事にした。
『あ、おじいさん、ふと思ったんすけど……ここってなんの神様祀ってるんすか?冥途も知らないみたいで…』
『確かに……最後に聞いたのは小さい頃で…大きくなったら教えてくれるっておじいちゃん言ってたよね。』
するとおじいちゃんは少し考え込んだ。
『……僕ら…黒鉄家が祀る神様…は…まぁ……長寿の神様…?とでも言おうか。』
『長寿の神様?長生きするって事っすか?』
蓮太郎が尋ねる。
『そうだねー…大体そんなものかな、詳細はちょっと言えないことになっててね、ネットでは健康でいられるとかは書いてあるが……』
『なんか複雑っすね……』
それはそうだった、っていうかそもそもその会話を複雑ってズバッと言える蓮太郎も中々だが…
神社にあるという事とあり、僕らの会話は自然と霊などの話へと変わって行った。
『え!?おじいさん霊倒した事あるんすか!!?』
『まぁ……ね、昔色々あってさ。』
『冥途も出来るのか!?なんかはぁ!!とか言ったりして!』
『僕には…霊能力がないから……』
『あー…そうだったな…おじいさん、なんで冥途には霊能力がないんすか?黒鉄家って全員霊能力を持ってるんすよね…?』
ちょっと本人の前でそれ話すのは……
蓮太郎は少しこういうところもあるが…悪気はないんだろう……
『うーん、僕にも分からないなぁ、黒鉄家は6歳を迎える前に大体霊能力が発現するんだけどね……遅くても10歳までには……』
そう言い終えるとしばらく沈黙が走る。
いくら蓮太郎でも少しなんて言えばいいのかわからなくなってるみたいだ。
『…まぁ冥途は、霊視があるからそれに特化しているのかもしれないね、実際霊感は強いっちゃ強いほうだよ。』
おじいちゃんがフォローしてくれた。
でも実際僕には本当に霊能力がない。
どうしたものか……
僕にはとある目標がある、それを成し遂げる為には霊能力が必須なのだ。
『……なぁ、なんで冥途はそんなに霊能力に執着してるんだ?確かに周りがあるからとはいえ……執着が本当にすごいって言うか……』
蓮太郎が疑問に思いそう言うとおじいちゃんはまた困った顔をする。
僕も困ってしまった、僕がこれほどまでに霊能力にこだわるのには理由がある。
だが色々あり他の人へ言うのは基本的にしていない。
『……なんかすまん、聞いちゃ悪かったな…』
蓮太郎が申し訳なさそうに謝る。
『あぁ!大丈夫だよ!そんなに気にしてないから!』
僕がしょんぼりする蓮太郎に安心させようとしていたその時だった______
《プルル……プルル……プルル…》
突然おじいちゃんの電話が鳴り出した。
『誰だろうか…?』
おじいちゃんがスマホを見て驚く。
『2人ともここにいてくれ、ちょっと電話をしてくる』
おじいちゃんは隣の部屋へと移動した。
移動する際……心なしかおじいちゃんは少し険しいような顔をしていた。
何かあったのだろうか?
蓮太郎と僕は不思議と…ちょっとした不安を感じた。
神社での不穏な空気はあまり良くない事が起きる……
あるあるだ。
よく聞くと隣の部屋からはおじいちゃんの声が聞こえてくる。
『……え?本当ですか……はい……はい……わかりました。私の方で準備をしておきます……はい……失礼します……』
おじいちゃんは電話を終える、部屋から出てきたおじいちゃんは少し青ざめていた。
『……2人ともよく聞いてくれ、最近おかしいことはなかったか…?』
おじいちゃんの声からは緊張が感じられた。
蓮太郎と僕もその表情に少し息が詰まった。
『えっと……特に……ないっす…』
『僕も…』
おじいちゃんはそれを聞いて少し安心したようだった。
『……今、"境"から電話があってね……ちょっとした事件が発生したらしい……この近くで…』
『……蓮太郎君、君はもう帰りなさい……冥途も今日は部屋にずっといるんだ、いいね?』
おじいちゃんは緊張を浮かべそう言った。
蓮太郎は不思議がっていたが……僕には大体想像がついた。
『え……?あ…はい…わかりました…』
『あ、待て蓮太郎君…君にはこれを渡しておこう…』
そうするとおじいちゃんは小さいお守りを取り出した。
『厄除けのお守り……持っておきなさい、もし変なことが起きても…それが守ってくれるよ』
おじいちゃんはそう言って蓮太郎に渡した。
厄除けという言葉を聞いて少し蓮太郎も驚いていた。
『……あ、ありがとうございます…』
『…最後に、2人に言っておかなきゃいけない事がある…』
言っておかなきゃいけない事…?
『……夜、絶対に君たちの学校には近づいてはいけないよ。何があっても…絶対に。』
その言葉聞いた途端、僕の背筋が凍った。
寒気がしたんだ。
ほんと一瞬……一瞬だった。
『……すまないが僕は準備をしなきゃいけない。
2人とも掃除をしてくれてありがとうね、次遊びに来た時はまた茶菓子を用意しておこう。』
あんな笑顔だったおじいちゃんから笑顔が消える。
それに学校に近づくな…何かきっとあったんだ…
『お邪魔したな……今日はここらで………あと、後でメールする…、いくらなんでもおじいちゃん怪しすぎるだろ、きっと霊関係で何かあったんだぜきっと!!』
少し蓮太郎は興奮しているような……感じをした。
でもおそらく蓮太郎の言う通りだろう。
それに学校……学校で霊関係の事が起きた……?
それに"境"って……
『あ、ずっといるのもあれだな、じゃあ今日はありがとよ!また明日学校でな!』
『うん、今日はありがとう』
僕は蓮太郎を見送った後、社務所へと向かう。
※社務所……神主などが暮らす生活スペースのこと
(…おじいちゃん準備とか言ってたけど……何するんだろ?霊能力を持たない人間だから組織……"境"に関しての情報は教えてくれないんだよな…)
霊能力がない……それだからという理由で真実を知る事ができなかった。
おじいちゃんはきっと意地悪で言わないとかそういうのじゃないんだろう。
きっと古くから伝わる決まりなんだ……
(……霊能力があれば、真実を知ることも出来たし…
なにより………"あの日あんな事には…")
すると次の瞬間……温かいような…ぬくもり…?
よく言えないが急に心が温まってきた。
安心するような……心地よい風が吹いてくる。
(……急にあったかく……なんだろう、変な感じ……?)
そう思っていると………
『…あら?そこのキミどうしたの?』
背後から声がした。
振り返るとそこには白い和装をした若いお姉さんが立っていた。
『…え?いやまぁ……ちょっと考え事……です』
女性はふふっと笑った後、僕にこう言った。
『キミ……視える側の人間でしょう?』
視える側の人間、そう言い放たれる。
それを聞いた時僕は、目の前の女性が普通の人間ではない、こちら側の人間だと気づいた。




