第299話 衝撃の事実発覚
昨日も次から次へと案内される患者をどんどん治していった、途中で前日に治癒した狐獣人が現れて従者にして欲しいと懇願されたが、そんな人を受け入れていたら際限が無いからとお断りした。
決して多くの人が出入りするからと護衛代わりに来ていたホセの視線が突き刺さっていたからだなんていう理由では無い。
中には欠損してた人も居て治った事に感動して仕えたいとか言ってくる人もいたから本当に無理だし。
それに獣人王国のビルデオが待ってるもんね!!
と、まぁ忙しい2日間を過ごした私と仲間達は今は船の上に居る。
カリスト大司教が教皇に上手く言ってくれたらしく、引き留められる事も無く帰路につけた。
たぶん切り札として女神様に言われたこの世界を「楽しんで」という言葉を伝えたのも大きいのだろう。
教会本部に籠の鳥状態だったら全然楽しくないもんね。
帰り際にひとつだけ頼まれた事はしたけど、それも簡単な事だ。
ウルスカのマザーに簡易通信魔道具を届けて欲しいとの事、ウルスカにいる時に置いてきちゃうと道中教会本部と連絡が取れなくなるから置いて来れなかったそうだ。
ついでに無事に帰っているか、ウルスカに到着するまで時々連絡くれると嬉しい…と。
なので国境を越える度に連絡する約束をしたら凄く喜んでくれたが、その時の教皇がカリスト大司教にジト目を向けていたのは気のせいだろうか。
もしかして事前に報告無しで決めた事だったりして。
帰りは下流に向かっているという事もあって半分くらいの日程で行きに船に乗った町に到着した、ゆったりしている様に見えてそれなりの流れがあったもんね。
河に落ちた猫獣人の女の子助けた時も結構な勢いで流されたから焦ったし。
行きと違い広く感じる馬車でアンヘルの住む村を目指す、明日には色々知る事が出来るせいかホセがちょっとピリピリしている。
皆もそれを感じ取っているからいつもより口数が少なくなっているが、敢えて空気を読まない人が1人。
「それにしても明日楽しみだねぇ、ホセの伯父さんってやっぱり似てるの?」
「………最初見た時は親父がいたらこんな感じかなと思うくらいにはな」
「子供達はホセの従兄弟って事になるのか、血縁者が見つかったってどんな気持ち? 嬉しい?」
「わかんねぇ、オレにとっちゃビビアナの方がよっぽど身内としての意識が強いからな」
遠慮の無いエリアスの質問にホセは途方に暮れた様な顔で呟いた。
「ホセ、今は私達も家族でしょ?」
「…ッ! ああ、そうだな」
私の言葉に一瞬驚いた様な顔をしたが、柔らかく微笑んでクシャクシャと私の頭を撫でた。
ヌゥ、やはりまだ咄嗟には「家族=ビビアナ」だけらしい。
途中の村で1泊してアンヘル達の村へと向かう、御者はホセがすると自分から言ったので任せた、きっとドキドキしてるから落ち着きたいんだろうなぁ。
昼過ぎになって馬車が停車した、話し声が聞こえて再び動き出したので村に入ったのだろう。
ホセがお昼ご飯をいつもの半分くらいしか食べなかったので緊張っぷりが窺える。
『待っていたよ、家の裏庭に木があるから馬を繋いでおくといい』
馬車の外からホセの伯父…ベルトランの声が聞こえた、少し移動して停車したので私達は全員馬車を降りた。
馬車から馬を外して水桶と飼葉を側に置いて木に繋ぐ。
「ホセ、俺達に聞かれたくないなら村で時間を潰しておくが…」
リカルドがホセに言ったが、ホセは首を振った。
「いや、一緒に聞いて欲しい。なんせ《《家族》》だからな」
ホセはニヤリと笑って私を見た、私達のそんな遣り取りをベルトランは微笑ましげにながめていた。
家に入ると他の家族は出掛けているらしい、込み入った話なので子供達には下手に知られたくないそうだ。
ベルトランがお茶を淹れようとしたので私がストレージから出して並べた。
全員はソファに座れなかったので当事者のベルトランとホセ、リーダーのリカルド、一緒に育ったビビアナがリビングのソファ、私とエリアスとエンリケはダイニングテーブルの席に着いた。
ベルトランはお茶喉を潤すと、意を決した様に口を開いた。
「改めて…私の名前はベルトラン・デ・チャルトリスキ、チャルトリスキ伯爵家の次男だ。そしてホセは妹のチャルトリスキ伯爵家長女であるベアトリス唯一の子供だ、そして…ビルデオ国王陛下の第一子でもある」
「「「「「「……………」」」」」」
部屋の中が静まり返った、全員そうだろうけど、聞いた言葉を頭が理解するのを拒否している感じがする。
私達が無言なのを続きを待っていると判断したのか、ベルトランは話を続ける。
「ベアトリスと今の陛下は学生時代からの恋人だった、しかし王には獅子獣人をという派閥のゴリ押しで公爵家から王妃が選ばれてベアトリスは側室という事に落ち着いたが…、問題は先にベアトリスが懐妊した事だ。王女であれば問題は無かったが、産まれたのは知っての通り王子だった…」
「正妃側に命を狙われるのは明らか…というところか?」
リカルドの言葉にベルトランは頷いた。
「ああ、実際1週間も経たず2人共命を狙われて何度も寝室が血に染まったよ、私は当時志願してベアトリスの護衛をしていたからベアトリスと相談して2人を逃がす事に決めたんだ。この村の近くで追手を引きつけて何とかベアトリスとホセを逃がしたが、追手を引き込んだ先の崖から落ちてしまって3年前まで記憶を無くしていたんだ。それでその時助けてくれた人がこの村の…妻の父親だ」
「ホセとホセのお母さんを探さなかったの?」
ビビアナが少し咎める様な声で聞いた。
「勿論記憶が戻ってすぐ探したとも、落ち合う約束をした町を中心にね。しかし姿どころか痕跡も見つけられず仕舞いだったよ、一体何処にいたんだ?」
「パルテナ王国の…ウルスカという町の孤児院だ」
動揺していると思ったのに、驚く程に冷静な声でホセが答えた。
「パルテナ…、そういえば4人目の賢者はセゴニアだかパルテナに居ると言っていたな。そんな遠くまで…、産後の身体で…かなり無理をしたんだろう、ベアトリスはホセがこんな立派に育った事を喜んでいるだろうな」
ベルトランは片手で目を覆って俯いた、小さく肩が震えているから泣いている様だ。
「ホセが王子様か、ぷぷっ、王子様ってガラじゃないよね」
「ふぐっ、ちょっとエリアスやめてよ、今シリアスな話をしてるんだからさ。…俺もちょっと思ったけど」
「私の国に『氏より育ち』って言葉があるけど本当だよね、正にホセはそれを体現してると言えるよ、ぷふぅっ」
「てめぇら! こっちは真面目な話をしてるんだぞ!?」
ダイニングテーブル組がヒソヒソと話していたらホセが立ち上がって怒鳴った。
「ククッ、ホセには楽しい《《家族》》が居てくれてるみたいで安心したよ」
少し赤い目をしたベルトランがさっきとは違う意味で肩を震わせた。




