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自由に生きようと転生したら、史上4人目の賢者様でした!?〜女神様、今の時代に魔法はチートだったようです〜【web版】  作者: 酒本アズサ


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第274話 船待ち(2日目)

「頼んだからね!? カリスト大司教と顔を合わすのが気不味くなる様な事は絶対言わないでよ!?」



「うふふ、大丈夫よ、可愛いと思える事しか言わないから」



「絶対ね!」



「ええ。………正座でお説教レベルの事はもう殆ど話し終わってるし(ポソ)」



 ビビアナの返事を聞いて安心した私は、朝食の時間なので食堂へ向かうべくドアを開けた。

 ただ、ビビアナの器が大きい分「可愛い」で収まるのがどの辺までなのか少々心配ではあるが。



 朝食を済ませて私とホセとエリアス、そしてエクトルの4人は再び市場に来ていた。

 朝から来ている今回の目的はバナナの生産者と接触する事、その為バナナを運び入れる馬車が来るのを待っているのだ。

 ちなみに昨夜の内に気温調節の付与をした魔石を私とエンリケ用の外套にも縫い付けたのでかなり怪しい一団になってると思う、幸いエクトルが居るので高貴な人達のお忍びに見えなくも無いが。



「確かバナナはこの辺の店にあったよね…」



 昨日の記憶を頼りに辺りを見回すと、バナナを馬車から下ろして積み上げている人が居た。

 馬車から半分下ろすと、市場の反対側へと馬車がむかったので慌てて追いかける。

 作業が終わるまで邪魔しちゃいけないと思って少し離れていたのが災いした。



 残りの半分を取引き先で下ろしている間に無事追いつき、馬車が空になった時点で口髭を蓄えたおじさんの肩をガシリと掴んだ。



「おじさん、ちょっとお話ししたいんだけど、いいかな?」



 ニッコリ微笑む私の背後にはこの暑いのに外套を身に付けている2人と、聖騎士の鎧を着ているのが1人。

 固まってしまったおじさんが再起動するまで数秒かかったがとりあえず話は聞いて貰える事になった。



 話を聞くとバナナ農園はここから1時間程馬車で移動したところにあるらしい。

 しかしそのバナナ農園も何年かしたら廃業する事になるかもしれないと言う。

 どうやらジワジワと砂漠が広がっていて、50年前には村から見える丘を越えないと見る事が無かった砂が、風に吹かれて丘の上に降り積もる様になって来ているという。



 このままでは種無しバナナという素敵な提案が頓挫(とんざ)してしまう、この市場で唯一見つけた生産者がこのおじさんなのだ。

 ここから馬車で1時間の場所まで砂漠化が押し寄せて来てるなら、現状を把握しているであろう領主も焦ってるはず。



「よし! 領主のところに行って砂漠化を食い止める方法を教えに行こう!」



「ハァ!? お前本当にそんな事知ってんのか!?」



 ホセが完全に疑いの眼差しを向けて来たが、ボッチ期間にテレビとお友達だった私は知っているのだ。

 私はおじさんに砂漠化を止められたら出来るだけ種が小さい物を栽培して、跡継ぎにも種のない突然変異が出て来たら最終的に新芽で株分けして増やす様にすると約束させ、領主の元へ向かう事にした。



 そして聞き込みした結果、幸い領主館は町の中にあったので突撃訪問を決行。

 当然ながら見た目でめちゃくちゃ怪しまれつつも、エクトルの聖騎士の鎧のお陰で衛兵を呼ばれる事も無く賢者だと信じて貰えた。

 黒髪黒目はこっちの大陸だと居ない事も無い、という程度には居るらしく私達だけだと魔法見せないと信じて貰えなかったかもしれない。



「賢者アイル様が砂漠化を食い止める叡智を授けてくださると言っておられるのだ、領主様と面会を求める!」



「しょ、少々お待ち下さい!」



 エクトルがビシッと決めると、領主館の門番は慌てて報告に向かった。



「エクトル…、あんまり仰々しくする必要はないからね? 叡智だなんて…そんな…」



「ぷぷっ、だけどアイルも自分で言った事あるじゃないか。ほら、タリファスの侯爵家兄妹の時に」



 エクトルの物言いにちょっと恥ずかしくなった私が控えめにしてもらおうと思ったら、エリアスが笑い出した。



「あれは…っ、ああ言わないと耳を傾けて貰えないと思ったから…」



「エクトルも同じさ、あんまり下手に出ると軽くみられちゃうからね。ちょっとくらい偉そうにするのも大事だよ」



「うう…、がんばる。その代わり笑わないでよ?」



 ここは女優になりきるしか無いのか…、覚悟を決めていたら門番が執事らしき人を伴って戻って来た。

 思わず執事の代表的な名前、セバスチャンと呼びたくなる白髪の似合う褐色の肌のロマンスグレーが優雅に腰を折った。



「お初にお目にかかります賢者様、わたくしは当家の家令を務めておりますフラビオと申します」



「急に押しかけてごめんなさい、先程砂漠化が進んでいる事を聞いて居ても立ってもいられなくて…。4人目の賢者と呼ばれているアイルよ」



「わたくし共の領地の為にわざわざお越し頂き感謝致します、主人が是非にと申しておりますので、どうぞ中へお入り下さい」



 私達は応接室らしき部屋に通され、部屋の中には既に領主が待っていた。

 50歳より少し若く見える褐色の肌のおじ様、家令のフラビオと並ぶととても絵になる。

 挨拶を交わしている間にお茶が準備され、早速本題に入る。



「砂漠化を阻止するには地中深く根を張る木が必要なのですが、心当たりはありますか? 私が知ってるのはユーカリという毒を持つ木なのですが…ここにあるかはわからないので」



「ええ、いくつか思い当たる木があります。しかし砂漠に植えても根付く前に枯れてしまうでしょう」



「ええ、そこで必要なのは水を蓄える素材なんです」



「水を蓄える…ですか?」



 私が見たのは紙オムツの中に入ってる吸水ポリマーを地中に埋めて、ある程度根が伸びるまでそこから水を吸収してもらうというものだった。

 根が地下水まで到達すれば後は勝手に成長するし、そうなると根が吸い上げる水のお陰で周りに草が生え始めて緑化が進むのだ。



「ええ、もしそういうものが無いのなら代用できそうな物を持っているので差し上げましょう」



「そんなモン持ってたか?」



「私には布くらいしか思い付きませんね、是非とも譲って頂きたい」



 ホセが首を傾げ、領主も眉尻を下げている。

 試してないけどイケると思う、分厚(ぶあつ)過ぎて食べづらそうだからいらなかったんだよね。

 捨てるのも大変そうだったからここで貰ってもらえば楽だし一石二鳥だ。



「ふふふ、それはね…イカ、じゃない、海の魔物の皮よ!」



「「「「「ッ!?」」」」」


 

 その場の全員が何言ってんだコイツ、と言わんばかりの顔をしたが、テーブルの上のカップを避けてまな板を出し、1番小さく切れている足の1部を取り出すと包丁を使い分厚い皮を剥ぎ取った。

 その皮は当然水分を含んでブヨブヨしている、普通サイズのイカではあり得ない3㎝くらいの厚みなのだ。



「今この皮が含んでいるのは海水でしょうけど、1度天日でカラカラに乾燥させてから真水で洗って浸(つ)けておけば使えそうでしょ? まだまだたくさん持ってるし広範囲に使えると思うの」



「確かに生のイカと乾燥したイカって全然違うもんね、この皮なら使えると思う」



 私が手にした皮を指でつついているエリアスも納得した様だ。

 そしてこの案が受け入れられ、この後領主館の料理人達と一緒にイカの皮剥ぎをしまくった。

 自分でやらなきゃと思ってた作業を手伝って貰えたし、我ながら良い思い付きだったと思う。



「お前…食う事以外にもちゃんと賢者らしい知識持ってたんだな…」



 帰り道でポツリと呟かれたホセの言葉は納得出来ないけどね!

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