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少年法の壁  作者: リンダ


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あとがき

あとがき


 この物語を書きながら、何度も考え続けたことがあります。


 人は、なぜ止まれなかったのか。


 そして、

 なぜ「自分はそこまで悪くない」と思ってしまうのか。


 この作品に登場する加害者たちの多くは、

 最初から怪物として描かれているわけではありません。


 空気に流された者。

 笑ってしまった者。

 見て見ぬふりをした者。

 止められたかもしれないのに、止めなかった者。


 つまり、どこにでもいる“普通の人間”です。


 だからこそ、この物語は重いのだと思います。


 いじめや暴力は、

 特別な悪人だけで成立するものではありません。


 誰かの沈黙。

 誰かの笑い。

 誰かの「面倒だから関わりたくない」。


 その積み重ねが、一人の人生を壊していく。


 そして恐ろしいのは、

 壊された側は、その記憶を何十年経っても抱え続けることです。


 理人も、美羽も、光も、

 決して“全部忘れて幸せになった”わけではありません。


 許していない。

 忘れていない。


 それでも、自分の人生を守るために前へ進んだ。


 この物語で描きたかった希望は、そこにあります。


 「傷つかなかった人」ではなく、

 「傷ついても、大切なものを守ろうとした人」の強さです。


 一方で、加害者側もまた、

 過去を抱えながら生き続けます。


 後悔しても、戻らない。

 謝りたくても、会うことすら許されない。

 “ごめんなさい”で消えるほど、軽い傷ではなかった。


 それは残酷です。


 ですが、この作品は、

 “加害者にもつらい過去があったから仕方ない”

 という物語ではありません。


 つらい環境にいたことと、

 誰かを傷つけていいことは、別だからです。


 同時に、

 「だから加害者は一生人間扱いされなくていい」

 とだけ言い切れるほど、単純でもありません。


 だから、この作品は答えを断定しませんでした。


 読者それぞれに、“宿題”を残しています。


 もし、自分があの教室にいたら。


 笑っただろうか。

 黙っただろうか。

 止められただろうか。


 そして今、

 目の前で誰かが傷つけられている時、

 本当に止まれるだろうか。


 理人が最後まで伝え続けた言葉があります。


 「力は、人を傷つけるために使うものじゃない。

  自分と、自分の大切な人を守るために使うものだ」


 ボクシングの力だけではありません。


 言葉も。

 立場も。

 空気も。

 沈黙も。


 人を守るために使うことができる。


 この物語が、

 誰かを傷つける側に回らないための、

 ほんの小さな“立ち止まるきっかけ”になれば幸いです。


 そしてもし、

 今まさに苦しんでいる誰かがいるなら。


 あなたが壊れていい理由には、絶対にならない。


 あなたの人生は、

 誰かの悪意のために消えていいものではない。


 そのことだけは、

 最後に強く残して、この物語を閉じたいと思います。


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