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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第三章 王族たちとの交流

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51.第一王女様の興味について

 さて、ヴァンたちにおいていかれたフェールはといえば、驚くほどに放心し、驚愕に心を染めていたものである。

 そして驚きに固まっていたフェールだが、一旦、自分の部屋へと戻ることにしたようだ。

 何とも言えない表情のまま、戻って行った。

 高級そうな赤いソファに座り込み、考えるように難しい顔をしている。

 その表情は不服そうな顔をしている。美しい顔立ちであるため、そんな表情をしていても、見ている者を魅了するようなそんな美がそこにはあった。

 フェールの周りにいる侍女たちは、そんなフェールの表情に眉をひそめる。彼女たちにとってフェールは絶対の主であり、その主を不快な表情にさせているものに良い感情はわかない。

 「フェール様、あの無礼な平民に制裁を」

 「ええ、そうですわ。あの平民はダメですわ」

 「先ほどは放心してしまいましたが、次に会った時には許しませんわ」

 ヴァンに対して殺意さえも覚えているような様子の侍女たちである。

 「………うふふふふふ」

 そんな侍女たちに対して、フェールからかえってきたのは不気味な笑みである。その姿は、傍目に見て怖い。

 「フェール様?」

 「どうなさりましたか?」

 「そうですわ。無礼ですわ。どうしようもないほど、無礼で、おろかで、でもだからこそ面白い」

 問いかけられて、フェールは顔を上げる。

 ヴァンの事を面白いとフェールは、口にする。そして、先ほど会った無礼で、興味深いディグの弟子の事を、ヴァンの事を考える。

 (私が第一王女であっても、この私に彼は一切の関心を抱いていなかった。この私に……)

 自分という存在に、関心がない存在というのはフェールにとって経験がないことであった。

 フェールは、この大国の第一王女。その美しさからも社交界でも有名な美しい少女である。

 (――この私に向かって)

 プライドの高いフェールは、改めて先ほどの出来事を思い起こして何とも言えない怒りが支配した。

 (この私が目の前にいるというのに、私の事をまるで興味がない様子だった。目の前にいるこの私ではなく、彼はナディアの事ばかり口にしていた)

 ナディア様、ナディア様と馬鹿みたいに、ナディアの名を連呼していた。まるでそれ以外どうでもいいというほどに。

 (この私よりも、ナディアに価値があるという風で……)

 その事を実感して、フェールの表情は硬くなる。

 元々フェールはナディアの美しさに敵対心を持っていた姉姫である。そんなフェールが、自身よりもナディアを優先されれば良い感情を抱くわけもなく、ただただ不快そうである。

 「ヴァンに、制裁はしないわ。あれは、面白いもの。それにマラナラ様の弟子に手を出すのは後々面倒なことになるもの」

 面白いから、ヴァンには何もしない。

 第一王女という身分にいようが、ディグ・マラナラというこの国の最強の魔法師を敵に回すべきではない。第一、第一王女であるフェールと、最強の魔法師であるディグはどちらが国のために貢献しているかといえばディグの方である。

 ディグ相手に最悪事を起こせば、フェールであろうと只ではすまない。

 「うふふふ、そうだわ、いいことを思いついたわ」

 うふふふふ、と扇子で口元を隠し、優雅に笑う。

 「彼はナディアに深い関心を持っているようですわ。噂通りナディアに魅了されているっていうのは本当なのかもしれませんわ」

 笑ったまま、続ける。

 「でも、だからって私には関係ありませんわ。ナディアのものだろうと、私がこうして面白いと思っているのですもの」

 不敵に笑う。何処までも自信に満ちた笑みで。力強い瞳で、迷いもなく口にする。

 「私に興味を持たせてさしあげましょう。―――この私に興味がないなどと、そんなの許せませんもの。それに、ナディアから彼を取れば、ナディアはどんな反応をするのか、楽しみですわ」

 宣言をする。まるで決定事項だとでもいう風に。

 いや、ただしく、フェールの認識としてみればヴァンの関心をこちらに向ける事は決定事項であったし、フェールが本気で興味を持たせにかかれば、いくらディグ・マラナラの弟子とはいえただの平民であった少年が落ちないはずがないというそういう認識をしていた。

 欲しいものは今までずっと手に入れてきた。

 望んだものは相手から転がり込んでくるようにそう誘導してきた。

 フェール・カインズは、そんな女王気質な少女であり、彼女が本気で行動を起こして手に入らなかったものなど今まで何もなかった。

 だからこそ、フェールは慢心していたといえる。

 自分が欲すればヴァンは簡単に転がり込んでくるだろうと――そんな慢心を。

 「それは素晴らしい考えですわ」

 「第一王女であるフェール様を差し置いて、ディグ・マラナラ様のお弟子様と仲良くしているなどと……」

 「フェール様をないがしろにするなど許せません」

 口々に口にする侍女たちの言葉に、フェールは笑みを浮かべた。自分の欲望が、満たされる事を信じて。



 ―――第一王女様の興味について

 (フェールはヴァンに興味を持つ。プライドを刺激され、その関心を引くことを思う)



 

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