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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第三章 王族たちとの交流

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46.ヴァンに興味を持つ者たちについて 上

 さて、カインズ王国の国王陛下の子供である王子殿下と王女殿下は計五人存在している。

 一番上が王太子であるレイアード・カインズ。

 次が第二王子であるライナス・カインズ。

 その次が長女である第一王女、フェール・カインズ。

 次女である第二王女、キリマ・カインズ。

 最後がヴァンの思い人でもあるナディア・カインズである。

 さて、長女であるフェール・カインズは、シードル・カインズの側妃であるアンの娘である。

 「―――マラナラ様の弟子という方、気になりますわ」

 扇子で自分の口元を隠しながら、少女はそんな言葉を告げる。

 母親譲りの水色の髪と、父親譲りの金の瞳を持つ美しい少女―――現在十四歳である第一王女、フェール・カインズである。少女から女性へと変わろうとしているそんな時期の彼女からは、少女としての可憐さと女性としての妖艶さの両方を感じ取ることが出来る。三の宮で限られた数の侍女たちとひっそりと暮らしているナディアとは違い、フェールのまわりにはそれはもうたくさんの侍女たちが存在していた。

 フェールの母親であるアンの実家はこの国でも有数の権力を持つ侯爵家である。実家の後ろ盾もある彼女は、王宮内でそれはもう好待遇を受けていた。

 「《竜殺し(ドラゴンキラー)》の少年ですか……にわかに信じられませんが」

 「あのマラナラ様の弟子で、お父様が承認していることですもの。おそらく真実でしょう」

 フェールは、微笑みを浮かべたままそう告げる。

 ディグ・マラナラという英雄の事も、自分の父親である国王であるシードル・カインズの事も少なからず知っているフェールは、そう結論付ける。

 そもそもあの、ディグ・マラナラが実力のないものを弟子にするというのは考え難いものである。

 「まだ私よりも年下という話ではないですか、とても興味がありますわ」

 フェールは、そうも告げた。

 事実、フェールは王宮内で噂が持ちきりであるヴァンの事に心の底から関心を持っていた。

 「確か、妹姫であるナディア様と親しいという話でしたが」

 ナディアの話を侍女たちにされた途端、フェールは少し目を吊り上げる。その顔が不機嫌そうに歪んだことからも彼女がナディアの事をよく思っていないことがよくわかることであろう。

 とはいっても、フェールは母親であるアンのように「あの女の娘なんていなくなればいい」と思うほどにナディアを憎んでいるわけでもなく、執拗に妹に嫌がらせを繰り返す母親の事を冷めた目で見ている節もあった。しかし特に母親を止める気もないのは、腹違いの妹であるナディアにそこまでする必要性がないからだ。

 さて、何故フェールがナディアの話題を出されて不機嫌かといえば、

 「あの子、益々美しくなって。忌々しいわ。この国で一番美しいのは私に決まっているのに」

 と、そんなしょうもない理由である。

 フェールは第一王女であり、プライドの高い性格をしている。幼い頃からもてはやされて生きてきたフェールである。

 美しいと、かわいらしいとそういう言葉を幼い頃から何度も繰り返されてきたフェールは自分の顔が整っていることぐらい理解していた。その美しさを誇りにもち、国で一番美しくなるだろうとまで言われた時はそれはもう喜んだ。

 しかしだ。ナディアはそんなフェールが認めるほどの美しさを幼いながらに保持しているのである。妹なのだから、姉妹そろって美しいということで誇らしく思えば良いじゃないかと思えるかもしれないが、ナディアとフェールは対して今までかかわりがなく、そういう思いはわかないのである。

 「フェール様の方が美しいですわ」

 「ええ。私たちのフェール様以上に美しい方はいらっしゃいませんわ」

 機嫌を悪くしたフェールに、周りの侍女たちはそういって機嫌を直してもらおうとする。

 「大体、第三王女だっていうのに第一王女であるこの私よりも先にマラナラ様と親しくしているなんて生意気だわ」

 そして、フェールという第一王女の性格は王族らしいものであり、その姿はさながら女王様のようであった。

 正直ヴァンはナディアのために強くなり、ディグの弟子になる事を決意したわけで、ヴァンがナディアに会いたいがためにあっているわけである。ナディアが生意気だといわれる要因は正直ない。

 が、フェールはそんな事情など流石に知らない。

 ヴァンの事は突然現れたディグ・マラナラの弟子であり、優秀な魔法師であるということしか知らない。

 フェールの目から見て、十二歳にして《竜殺し(ドラゴンキラー)》の称号を持ち合わせている英雄の弟子と、ただの第三王女であるナディアとではつり合いが取れていないと思っていた。

 ナディアは第三王女とはいえ、今まで社交界にもほとんど出席しないような少女であったのだ。王族とはいえ、第一王女であるフェールに比べて圧倒的に影響力は少ないといえた。

 「ふふ、会いにいきましょうか。私が会いたいっていうなら、断ることもないでしょう」

 それがまるで決定事項とでもいうように、フェールは笑った。





 ―――ヴァンに興味を持つ者たちについて 上

 (第一王女フェール・カインズは、美しい女王気質な王女様)




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