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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第三章 王族たちとの交流
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45.国王陛下から見たヴァンについて

 ディグの弟子であるヴァンに対する問い合わせは多くなされている。

 それで一番大変なのは、師であるディグだと思うかもしれないが、一番問い合わせされているのは国王陛下である。

 シードル・カインズは、数多くの貴族たちから『ディグ・マナラナの弟子に会いたい』という要望の手紙を受け取っていた。戦力であるヴァンを自分側に取り込みたいという思惑もあるだろうし、彼らはヴァンに興味津々なのであった。

 「―――それで、シードル様、これは全て《火炎の魔法師》の弟子に対するものですが」

 「……機会を設けてそのうちパーティーに出席させるから待てとそういう返事を出しておけ」

 宰相であるウーラン・カンダスの言葉に、シードルはそう答える。

 カインズ王国の宰相であるウーランの年は、50手前ほどである。シードルよりも年上であり、シードルの事を幼い頃から知っている。白髪に、黄色い目で、宰相位にはシードルが即位した時よりついている。

 彼がヴァンを見たのは、国王陛下との顔合わせの時のみである。ウーラン自身も、ヴァンという存在に関心を持っていた。

 「それにしても、ナディア様に好意を持っているが故に、あれだけの強さを手に入れた少年だなんて凄いですね」

 「………そうだな」

 ウーランはヴァンと交流がないにせよ、宰相としての信頼を得ているため、そういう情報をシードルから聞き知っていた。

 情報としてのヴァンは知っているが、実際のヴァンの事をウーランはよく知らない。

 「召喚獣を大量に従えており、魔法の腕もあの歳で相当のものだという話ですから、シードル様、使い方を誤ってはいけませんよ。この国につなぎとめる事をするべきです」

 「それは、わかっておる。だから……、ディグにもナディアと結婚させたらどうかと言われた」

 「それはナディア様にはいったのでしょう?」

 「ああ。………ナディアは乗り気だった」

 ウーランの言葉に返事を返しながらもシードルはその美しい顔を複雑そうにゆがめた。

 父親としてまだ十歳であるナディアが、結婚に乗り気で、ヴァンの事を好いているらしいことは正直複雑なのである。

 国王としてみてみれば、ヴァンはどうしようもないほどの戦力であり、この国につなぎとめておくべき存在だとはわかっている。―――他国にやるわけにはいかないほどに、強大な力を持ち合わせているということも。

 「シードル様は、それが気に食わないのですな」

 ウーランは困った方だとでもいう風に苦笑を浮かべている。

 そして、続けた。

 「それで、彼自身はどういう人柄なのですか。シードル様の目から見て」

 情報は入ってくる。だけど、ヴァンの人柄というものをウーランはよく知らなかった。戦力として他国にやるべきにはいかない。――けれども、性格に難がありだというのならば、どうにかする必要があった。

 「俺も報告に聞いたヴァンの人柄しか、詳しくは知らないが、無自覚でずれているらしい。そしてあれだけの戦力を持っておきながら、野心も見られない。そもそもディグの弟子になったのは、ナディアを隣で守れるようになりたいかららしいぞ。ディグは嘘はつかないだろうし、本当にそうらしい」

 シードルは自分で口にしながらもなんとも変わった奴だと、ヴァンの事を思う。

 (ディグ以上に才能があると、ディグはいっていた。それだけの才能を持ちながらも慢心せず、野心も特に持たず、自分の異常性を理解していない。本当に考えれば考えるほど、変わった奴だ。悪い奴ではないのはわかるが、しかし可愛いナディアをやれるかといえば……ぐぬぬ)

 娘が大好きで仕方がないシードルは残念思考であった。

 というか、息子であり王太子であるレイアードの残念なシスコン思考は明らかにこの父親あってのものであろう。

 「そうですか。今は野心がないにせよ、いずれそういうものを持つかもしれません。そういう場合を考えて今後次第ですが、動向は探っておくべきかもしれませんね」

 「……そうだな。ただ、ディグが気に入っているぐらいだ。そういう可能性は低いとは思うが。天才というものは総じて、普通ではない思考をしている。ディグもそうだ。あいつもやろうと思えば国を取ることだって出来るだろう。アレが、敵に回ったのなら、どうしようもない。でもあいつは『王なんて面倒なものなりたくもない』とそんなことを言っているぐらいだ。多分、ヴァンも似たようなものであろう」

 天才とは、普通ではない思考をしているものが多い。

 成り上がろうという思考などきっとない。変わっている者も多いだろう。

 ディグ・マナラナは、英雄として国民たちから慕われている。好かれている。その人気は王族に並ぶほどだ。

 そんなディグが例えば国を取ろうとしたとして、それはうまくいくだろう。ディグに憧れている魔法師たちだって多い。それだけ影響力のある英雄なのだ。ディグ・マナラナという男は。

 しかし王は面倒でなりたくないと、ディグは野心を否定する。そういう男だとシードルは知っている。

 「そうですか。なら、ひとまず問題はありませんね。今後どうなるかはわかりませんが」

 「そうだな……。ナディアと結婚をさせるかどうか、とかは今後次第だ。現状ではそれが最善でも、俺自身としてはまだ納得は出来ぬ」

 「……子供とはいずれ親元を離れるものですよ。ナディア様は乗り気なのでしょう?」

 「そうだが、ナディアはまだ10歳でっ!!」

 シードルはナディアにはまだはやいとそんな風にしばらくの間ウーランに語るのであった。





 ―――国王陛下からみたヴァンについて

 (ディグ・マナラナの弟子であるから、問題はない。しかしまだはやいから、ナディアと結婚させるかどうかは検討中である)





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