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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第一章 《英雄》の弟子になる
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4.王国最強の英雄について。

 このカインズ王国には、英雄と呼ばれる存在が居る。

 それは先の戦争で活躍した存在たちの事である。最も有名な英雄は『火炎の魔法師』ディグ・マラナラ。

 五年前の隣国との戦争において、十五歳にして武勇を立てた英雄だ。現在わずか二十歳にして、地位も財も全てもち合わせている存在。王国最強の魔法師。

 従える召喚獣も最強の名にふさわしく《シルバーウルフ》と《ファイアーバード》、《ファイアードラゴン》の三匹である。複数の、それも上位種の召喚獣と契約を結んでいるというだけで彼がどれだけの実力者なのかわかることだろう。

 そんな王国最強の英雄は、基本的に王国に仕えている自覚があるのかこいつと思えるほど自由で、人のいう事を聞かない存在である―――というのを知るのは王宮に仕えるものたちだけであった。

 「面白い事ねーかな」

 魔法師たちの研究棟の最上階、その場所の一室ディグ・マラナラの研究室。無造作に本が散乱しているその場所に、かの英雄は居た。

 キリッとした目に、美しい顔立ちをした赤髪の男。

 切るのが面倒だという理由から伸びた髪は、肩にかかっている。椅子に腰かけ、めんどくさそうにつぶやく姿はだらしなく、正直これが王国最強の魔法師で、王国最強の英雄であるだなんて信じたくなくなるほどであった。

 「ディグ様! 何をだらけているのですか!」

 咎めるような声を上げるのは、ディグの弟子であるフロノス・マラナラ。灰色の髪に、赤い目を持つまだ幼い少女だ。年は今年十三歳になったばかり。幼いころに魔力を暴走させ、親に捨てられたところをディグに拾われ、ディグの養子という事になっている少女だ。

 「何って、つまらないからに決まってんだろ。あーあ、なんかおこんねぇかな。また戦争でも――」

 「戦争が起こってほしいなんて冗談でもいうのはやめてください」

 「だったらもっと面白い事探して来いよ。つまんねーよ、退屈すぎるだろう」

 「……王宮魔法師の最高位に居る方がこんなのだなんてっ」

 「おい」

 つまんないと口にして足をぶらぶらさせる様子には、威厳が欠片もない。そんな師であり義父を見ながらも、フロノスは大きくため息を吐いた。

 こんな男だろうとも、一応王国魔法師の最高位についており、王国最強の英雄で魔法師である。

 王国内で彼に憧れているものは多い。実態を知らないものたちは、ディグに夢を見ており、幻想を抱いている。

 本物の彼を見て盛大に幻想と現実のギャップにショックを受けるものも多くいるほどである。

 「全く、こんなだらしない姿なるべく見せないようにしてくださいね!」

 「はいはい、わかったわかった」

 見るからに適当に返事を返している。フロノスがそれに対し、また声をあげようとした時、その部屋の中に一匹の獣が入ってきた。

 それはディグの召喚獣のうちの一匹、《シルバーウルフ》のシロである。

 本来の姿では色々と不便なため、ヴァンの召喚獣たちのように、小型化しているため正直子犬にしか見えない。しかし、それは実際は3メートルもの巨体を持つ大きな狼である。

 『主、面白いもの探しているの?』

 問いかける小さな獣は、まだ種族の中では子供である。

 「おう、シロ。俺は面白いものを探してるぜ? なんかあったか?」

 『面白いかはわからないけれど、ナディア様の周り、召喚獣一杯いるよ!』

 「ん?」

 言われた言葉にディグは一瞬首をかしげる。聞いていたフロノスもよくわからないといった顔だ。

 「ナディア様って第三王女のナディア様か?」

 『うん! 散歩してて三の宮にいったらなんか一杯いたよ!』

 シロは自信満々に言う。

 「ふぅん、召喚獣ね。ナディア様は召喚獣と契約はしていないはずだが。誰の召喚獣かわかるか、シロ」

 『わかんない!』

 「おー、そうか。まぁ、いい。誰のか分からないなら調べようじゃねぇか」

 わかんない、と断言するシロの頭を軽くなでて、ディグは笑う。それは先ほどまでの無気力な表情が嘘のように、生き生きしている。

 「……ディグ様、何をたくらんでいるのですか」

 「何も。しいていうなら誰の召喚獣か気になるだけだ。わざわざ王位継承権も高くもないナディア様の周りに貴重な召喚獣をおいている奴が誰かがな」

 そもそも召喚獣とは、本来一人一体契約が基本だ。三体と契約しているディグでさえも珍しいといわれるのに、ナディアの周りに一杯召喚獣が居るというのは不思議だ。

 誰が何のために、どういう意図で、ナディアの周りに召喚獣を置いているのかディグにはわからないが、どちらにせよ面白い事だと思った。

 そしてナディアの周りに一杯いるという召喚獣の主が誰かを王国最強の魔法師は、英雄は調べる事にする。最も、調べようとした当初の予想は、沢山の召喚獣がいるという点から複数の人間がそれぞれの召喚獣をナディアのもとにやっているというものであった。そうでなければありえない。沢山の召喚獣を従えている存在なんて王国でも数えられるだけしかいないのだから。その予想が外れていたと知るのは、少し先の話だ。



 ―――王国最強の英雄について。

 (王国最強の英雄は、興味本位でナディアの周りに居る召喚獣の主について調べる事にする)




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