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42.ガラス職人の息子第三王女様とに対する評価について

 さて、ヴァンがドラゴンを討伐してから既に数日が経過していた。

 あの後、「ドラゴンが出た」というクアンたちからの知らせにより、パーティーに参加していたディグとフロノスはパーティーを途中退席し、ヴァンの元へ向かったわけである。

 そしてそこで目にした光景は、少し怪我をして気絶しているヴァンとその召喚獣の《スカイウルフ》のルフと、えぐれて焦げた地面だった。

 かろうじて残っていたドラゴンの角(ほとんど焦げている)を見て、ヴァンが《レッドドラゴン》を退治した事を知り、とりあえずディグとフロノスはヴァンとその召喚獣を王宮へと連れて帰り、回復魔法師に見せて怪我をなおしてもらった。

 それから国王であるシードル・カインズにそのことを報告した。パーティーの最中に知らされたということもあり、それに参加していた者たちはドラゴンの襲来を知っており、シードルの口から不安を口にする貴族たちに向かって《火炎の魔法師》の弟子がドラゴンを討伐したことが伝えられた。

 そのこともあり、《火炎の魔法師》ディグ・マラナラの新しい弟子に《竜殺し(ドラゴンキラー)》の称号がつけられることとなる。ちなみに、その称号はディグも持っている。

 そんなこともあったわけで、ヴァンはそれはもう現在注目されていた。

 つい先日までただの平民であったはずの少年が、ドラゴンを討伐するほどの力を持ち合わせているというのもあって、貴族たちも益々ヴァンに対する興味をよせているようだ。最も現状、ヴァンはそういう貴族たちの相手を上手く出来ないだろうし、全てディグが対処しているが。

 (とはいってもこのままはいけないし、ヴァンにもっと色々教えなきゃだな。全く、こんなすぐにドラゴン退治するとかまでは想像してなかったしな)

 王宮内を歩きながらもディグはそんなことを考える。向かっている場所は国王の元である。

 国王の私室に顔をだし、顔パスでその部屋へと入る。

 「シードル様、何の用ですかって、どうせヴァンの事でしょうけど」

 「ああ、そうだ。お前の弟子は本当にお前の言った通り規格外だったな」

 「そうですね。こんなにはやくドラゴンを討伐するまでは想像さえもしていなかったので流石に俺も驚きました」

 「本当に平民だったのかとか、お前の弟子にあわせてほしいなど問い合わせが殺到しているが」

 「……ある程度礼儀作法を叩き込んだらあいつも、貴族たちの出席するパーティーに参加させるのでちょっと待ってください」

 まだ三か月である。ディグの弟子になってたったそれだけの時間しか経過していないのだ。

 だからこそまだ貴族たちの前に出れるだけの作法を身に着けていない。ディグとしてはこんなにはやく何かやらかすとは思っておらず、のんびりと作法を少しずつ教えていたので今回のドラゴン退治は本当に予想外なことであり、まだ作法をヴァンは覚えていないのである。

 それを覚えさせるにはまだ時間がかかるのだ。

 「わかった。なるべくはやく叩き込んでくれ」

 「はいはい、了解しました。そういえば、ナディア様はあの年で礼儀作法完璧でしたね。俺は驚きました」

 「……ナディアは嘆かわしい事にお前の弟子のために、相応しくありたいと一生懸命勉強しているからな。元々ナディアは出来は悪くない。その結果が実ったということだろう」

 ディグの少しふざけた態度と、ナディアが男のために必死だという事に対して父親として複雑な気持ちを抱いているらしく、国王は少し表情をゆがめてそう告げた。

 「十二歳でドラゴンを殺すような奴ですからね。やっぱりあいつは結婚っていう形でもいいからこの国にとどめさせて、他国に絶対やるべきではないです」

 「それも、そうだな」

 「ナディア様もそれには賛成しているっぽいですよね」

 「……ああ。ヴァンの事を可愛いといっていた」

 「ぷははっ、あいつを可愛いって言ってるんですか。ナディア様。それは面白い」

 相変わらずディグの態度は王に対する態度ではない。ディグにとってナディアがヴァンの事を可愛いなどといっていることが面白くて仕方がないらしい。まぁ、ヴァンの事を可愛いなどというのはナディアぐらいなのだから、そういう意味でも面白いと感じているのだろう。

 「やばいですね。ナディア様とあいつの事話したら楽しそうだ」

 「…そうか」

 「シードル様は複雑そうな顔してますね。ま、ヴァンのために必死になって色々身に着けているにしろ、社交界でのナディア様の評価は高くなっているんでしょう? この前のパーティーが評価されて。それなら父親として素直に喜んでいいと思いますけど」

 「いや、しかし、お前の弟子のためというのが…」

 「子供離れしないと嫌われますよ、ナディア様に。それに誰のためならいいんですか、その言い方」

 「お、俺のためとか」

 「はははっ、『お父様のために頑張ります』ってやってもらいたかったんですか、シードル様。面白いですね、それ」

 ディグは娘大好きな陛下に向かってこの態度である。

 ディグの言うとおり、この前のパーティーでの態度からナディアは評価されている。

 それに加えて、

 「ナディア様はこの前のパーティーで『守ってくれる存在が居る』なんて口にしたから側妃様たちもおとなしくなってますし、あの言葉を聞いた貴族たちはどういうことなんだ? とナディア様に関心を持ってますね。良い意味でも悪い意味でも目立ったというべきか。ま、なんかあったらヴァンの召喚獣がどうにかするでしょうし、シードル様は何も心配しなくてよいと思いますが」

 守ってくれる存在がいるなどと口にしたため、関心を持たれている。良い意味でも悪い意味でも。ただし何かナディアに起こるならヴァンが全力を持ってどうにかするので問題がないとディグは思っていた。

 「それは、確かにそうだが……」

 「娘が男のためにって必死だからってすねないでくださいよ。仮にもシードル様は国王陛下ですからね、そんな情けない姿見せないでほしいです」

 「うぐぐ」

 ディグに情けない姿を見せるな、と言われてシードルは顔をゆがめてそんな声をあげるのであった。





 ―――ガラス職人の息子と第三王女様の評価について

 (ガラス職人の息子は《竜殺し(ドラゴンキラー)》として、第三王女様は完璧な礼儀作法であったこととして、評価が上がっている。そして彼らは片鱗を見せるのである)




これで第二章終了です。

ここまで好き勝手好きなように書いているので読者様に楽しんでいただけているのかなと思いながらも、これからもこの作品は作者が書きたいように書いていきます。

この後、登場人物紹介をのせて、番外編を数話乗せて、第三章に突入します。




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