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40.ドラゴンとの戦闘について 上

 それは、その場に現れたヴァンたちへと視線を向けた。ギロリッと黒い瞳に睨まれて、ヴァン以外の二人がひっと悲鳴の声を上げた。

 その、三メートル以上もある巨大なドラゴンの前にはドラゴンから逃げ惑っていた存在たちが居たが、彼らはドラゴンの興味がヴァンたちへと向けられたのを見て一目散に逃げて行ってしまった。

 《レッドドラゴン》は、ヴァンたちに目を付けたらしい。ヴァンたちを、この場にやってきた獲物を食わんとばかりに、近づいてくる。

 ヴァンは《スカイウルフ》に跨ったまま、

 (うえー、活性化したドラゴンってめんどくさい)

 などと、普通なら絶望を感じても仕方がない所でそんなことを考えていた。

 というのも、ヴァンは《イエロードラゴン》と契約を交わしており、正直な話を言うとクスラカンは目の前にいる《レッドドラゴン》よりも巨大であった。自分の契約している召喚獣より小さいドラゴンというのもあって、他の二人よりも絶望度は少なかったのだ。

 「ちょ、ど、どうすれば」

 「ド、ドラゴンとか」

 ヴァンは後ろからの声に後ろをちらりと見る。そうすれば、目の前の存在を見て、恐怖心からか動くことが出来なくなっている二人が目に映った。

 『アリ、ヤヤ、ご主人様の戦いの邪魔にならないようにそこの固まってる二人避難させてー!』

 『『了解』』

 このドラゴンをどうにかするにしても、後ろの二人どうしよう? などとヴァンが考えているうちにルフがさっさとクアンとギルガランの召喚獣たちに指示を出してしまった。

 そしてそれぞれの主を乗せて、二匹は一旦その場から消えた。

 《レッドドラゴン》は逃げる二人には意識も向けない。自分から逃げようともしない獲物が目の前にいるのだ、そちらにかぶりつこうとするのは当たり前だろう。

 (活性化したドラゴンなんかがうろちょろしてたらナディア様も危険になるかもだし、それにナディア様の隣でナディア様を守れるようになりたいから)

 ヴァンが目の前のドラゴンを倒そうなどと決意する理由などそれ以外ない。ヴァンの脳内は基本的にいつもナディア一色である。

 『ご主人、どうします?』

 『主人、戦うか』

 《スカイウルフ》のルフと、《ルーンベア》のリリーの問いかけに、ヴァンは答えた。

 「戦うよ。目の前の存在が、ナディア様の脅威になるかもしれないから」

 そういったヴァンの言葉が、戦いの合図だった。

 その言葉を聞いて、ルフはヴァンを乗せたままかける。このままこの場にとどまっていれば、主人ともども八つ裂きにされることは目に見えていたからだ。

 「リリー、もとに戻れ」

 ルフの上からヴァンはリリーに指示をだす。リリーの元の姿は大きすぎるため、小型化を命じていたからだ。

 ルフはまだドラゴンの視線の先にいたままだが、見るみるうちに巨大化していった。

 その大きさはドラゴンと対して変わらないほどだ。

 三メートル近くある、巨大な熊。獲物のうちの一匹が巨大化したことに対して、ドラゴンは驚きを見せた。しかし、ルフへとためらわずに爪を振り下ろす。その手を、リリーはつかむ。

 握力の圧倒的に強い《ルーンベア》の力でつかまれてしまっては、いくら《レッドドラゴン》であろうとも中々その手を振りほどくことなど出来ない。

 そうしているうちに、リリーは驚くべきことに自分と同じぐらいの重さがあるであろう《レッドドラゴン》を宙に浮かせ、投げた。

 木々へとぶつかり、地面へとたたきつけられる。

 ドオオンッと、地震でも起きたかのような衝撃が響く。音もすさまじいものだ。

 ヴァンはルフにのったまま、地面へとたたきつけられた《レッドドラゴン》の真上へと移動する。

 それを感知したドラゴンは、その口を大きく開いた。

 そして、その口から煉獄の炎を吐き出す。全力のブレスは浴びたものを塵と化すといわれる、そんなブレスがヴァンとルフへと襲い掛かった。

 普通なら、そこで一発で終わりだ。

 詠唱をする暇もなく、放たれたのだから。

 だが、ヴァンは普通ではない。

 咄嗟に一言で障壁をはり、それを自分に最低限食らわないようにした。ブレスが終わった後にも、ヴァンとルフは生きていた。

 ところどころ焦げがみられるのは、流石に全てを遮る事は出来なかったということだろう。

 ヴァンとルフはそのまま、倒れたドラゴンへと突撃していく。

 長剣でドラゴンに傷をつけようとするが、

 「硬いな! 普通の剣じゃ無理なのか!」

 それではドラゴンに傷一つつかない。ドラゴンの鱗というものは堅い。並の攻撃では、届きさえしないとされているのだ。

 ヴァンの使っている長剣は、ディグからもらったどこにでもあるような武器であるのもあって、ドラゴンの鱗に傷をつけることがかなわなかったのだ。

 最もディグもこのあたりで滅多にみないドラゴンに、しかも活性期のドラゴンにヴァンが遭遇するなどと想像していなかったが故にそういう武器を与えていなかったわけだが。

 『ご主人様、俺がやるよ。あと、ご主人様は魔法で攻撃して!』

 起き上がったドラゴンがこちらに仕掛けてくる攻撃を、ルフは器用によけながらもヴァンにそう告げるのであった。



 《レッドドラゴン》との戦いはまだはじまったばかりである。




 ―――ドラゴンとの戦闘について 上

(ガラス職人の息子とドラゴンの戦闘ははじまる)



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