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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第二章 片鱗を見せる

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36.パーティーに参加する第三王女様と魔物退治に参加するガラス職人の息子について

 「ナディア様、とっても綺麗ですわ!」

 「流石、私たちのナディア様ですわね」

 ナディアは、侍女たちに囲まれてそのような賛美を受けていた。今日はパーティー当日。久しぶりにパーティーにナディアが参加するということで、気合いを入れた侍女たちの手によって美しく着飾られたナディアはそれはもう美しかった。

 黄金にきらめく美しい髪は、いつもよりもより一層輝いているようにさえ見える。赤いドレスは、よくナディアに似合っていた。

 「ありがとう、嬉しい」

 褒められたことが嬉しかったのか、ナディアはそんな風に笑った。

 心を許している侍女たちにだからこそ見せる柔らかな笑みにチエ含む侍女たちは嬉しそうに笑っている。

 そして、そんな着飾ったナディアに声をかけるものがいた。

 『おうおう、王女様は流石綺麗だな。俺様が守るに値するぜ!』

 声のしたほうへとナディアが視線を向ければ、そこにはヴァンから差し出された一匹の召喚獣が居る。見た目はカメレオンだが、色が奇抜である。紫色の体に、オレンジの模様が浮かんでいる。小型化したその召喚獣は、《クレイジーカメレオン》のレイ。

 ナディアがヴァンから護衛に使ってと差し出された召喚獣である。

 『おい、てめぇ! ナディア様になんて口をきいているんだ! 主の思い人だぞ!』

 『ぐえっ』

 この場にヴァンがいないからとナディアに対して何とも無礼な態度をしていたレイは、その場にいた《ファイヤーバード》のフィアに嘴で攻撃をされ、うめき声をあげた。何とも哀れである。調子に乗るからこうなるのであった。

 『お、俺様に何をしやが―――』

 『ふふふ! 主様あるじさまと契約をしたばかりの青二才が、何を偉そうにしているのかしら。ぶち殺すわよ。調子に乗っていると』

 『ひっ』

 フィアに対して吠えようとしたレイは、その場にいたもう一匹の召喚獣から殺気をあげられて悲鳴を上げた。

 そこにいるのは、一匹の狐である。小型化しているものの、その狐は一目みて普通ではないとわかるだろう。それには、九つの尾が生えていた。黄色の体毛を持つ彼女は、レイに殺気を向けていた。

 彼女は、《ナインテイルフォックス》のキノノという。フィアのすぐ後にヴァンと契約をした召喚獣で、ヴァンとの付き合いも長い。

 『そこまでにしろよ、キノノ! ナディア様の前だぞ』

 『わかっているわよ、フィア。そもそもこいつが調子にのっているのがいけないわ』

 パーティーの控室の中で、三匹の召喚獣たちが会話をしている。それだけで常識的に考えればおかしなことだが、ナディアも侍女たちもヴァンがディグの弟子になってからはいつものように召喚獣たちが周りに居るため、特に気にした様子はない。

 その三匹は、ヴァンの命令の元ナディアを守るためにその場にいた。《クレイジーカメレオン》は同化の力を持ち、そしてそれは他者にも及ぼすことが出来る。故に、レイさえいれば他の召喚獣たちも隠れながらナディアを守ることが出来るのだ。

 『申し訳ありません、ナディア様。こいつはまだ主様と契約したばかりなのですの。でも安心してくださいませ。わたくしたちは主様の命の元、ナディア様の事を全力を持って守らせていただきますので』

 『ナディア様! 何かあったら絶対に守るから!』

 『………俺様も、頑張ります』

 上からキノノ、フィア、レイの言葉である。レイはあまりにも口が過ぎると他の二人にどんな目にあわされるかわかったものではないと思ったのか、そんな口のきき方である。

 「守ってくださりありがとうございます」

 ナディアは召喚獣たちのやり取りに少し笑って、そう答えるのであった。

 そしてパーティーはすぐに幕を開ける。







 同時刻、二十匹もの召喚獣の主であるヴァンはといえば、活性期の魔物の討伐に参加するためにブラエイトの森に来ていた。

 ともに居るのは、王宮魔法師の弟子であるクアン・ルージーとギンガラン・トルトである。ヴァンに突っかかってきていた二人だが、ヴァンと接するうちにヴァンの異常さをひしひしと感じてきたらしく、そういう態度は少しずつなりを潜めている。

 なぜ彼らと共にいるかといえば、ただたんにこの三人で行動するようにと上から指示が来たからである。彼らは活性期の魔物とも戦えるだけの実力を保持しているとはいえ、王宮魔法師の弟子という身分しかない。そんな者たちを一人一人で行動させるのは危険が伴うかもしれないという可能性を考慮してのことである。

 「ヴァン、準備はできているのか」

 そう問いかけたのは、銀色の髪を持つクアンである。

 ヴァンの恰好は一言でいえば軽装であった。本当にこれから活性期の魔物を退治しにいくのかと疑いたくなるレベルである。

 「いや、まだです。ちょっと呼びます」

 「呼ぶ?」

 ヴァンの言葉になんのことかわからないといった様子でギンガランが問いかける。しかし返事は帰ってこない。返事の代わりに、召喚がなされた。

 「こい、《スカイウルフ》ルフ」

 そのたった一言と共に、地面に魔法陣が現れ《スカイウルフ》が現れる。

 「こい、《ルーンベア》リリー」

 もう一度それを告げれば、今度は《ルーンベア》が召喚される。

 一瞬で現れた召喚獣たち。クアンとギンガランは目を剥いている。なんとなく少しずつかかわりだしてヴァンの異常性は理解しだしていたらしいが、あんな一言で召喚獣を召喚するなどと非常識にもほどがあった。

 『ご主人様、お呼び?』

 『主人、我に何用か』

 召喚された二体の召喚獣は、ヴァンの方をまっすぐ見ている。

 空色の体毛を持つ《スカイウルフ》は期待したように目を輝かせている。そして、小型化していてもヴァンの身長ほどの大きさを持つ三日月の紋章を持つ茶色の熊、《ルーンベア》は滅多に自分を呼ばない契約者の呼びかけに問いを発していた。

 「これから活性期の魔物を狩るから、手伝え」

 ヴァンはクアンとギンガランが二匹の召喚獣たちの出現に驚いていることなど一切気づきもせずにそんな命令を下すのであった。

 そして、ヴァンは活性期の魔物を狩るために動き出す。




 ――パーティーに参加する第三王女様と魔物退治に参加するガラス職人の息子について

 (第三王女様はパーティーへ、ガラス職人の息子は魔物退治へ。それぞれ動き出すのでした)



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