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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第二章 片鱗を見せる

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31.魔物との戦いについて 下

 ヴァンたちが魔物を討伐するために訪れているのは、王都の周辺地域である。人の住まう地域の周辺の魔物を討伐することで、人々への被害を抑えるためだ。

 もちろん、そういう対策が行われているのは王都だけではない。しかし王都のすぐ隣には、普段から魔物の溢れるブラエイトの森などが存在する。そういう所から活性期の魔物は溢れるのである。

 活性期の魔物たちにおける被害とは、毎回少なからず出るものである。

 活性期の魔物は、黒い靄のようなものを噴出しており、一発で活性化しているのかどうかわかるようになっている。

 「燃えろ!」

 理性のない魔物を前に、ヴァンはただ一言で魔法を完成させる。それと同時に目の前に存在する魔物に炎が向かっていく。体毛に火が乗り移り、もがき苦しむ魔物。

 『主様、しっかり一撃で殺してください』

 「……加減の仕方がわからないんだよ! 他まで燃やしたら師匠に怒られる!」

 ザートの文句に対して、ヴァンはそんな風に言い放つ。

 一撃で命を奪うことは出来ないわけではない。しかし、ヴァンはまだ加減の仕方をきちんと理解しているわけではなかった。

 ザートに跨りながらも、目につく魔物を狩っていくヴァン。その隣で翼で羽ばたいているクスラカンは、小型化したままだが、口から炎を吐いたりしながら魔物の命を奪っている。

 「……なんで、はじめて活性期の魔物を相手にしているというのにあんなに余裕なんでしょうか。普通もっとてこずりませんか」

 「……あいつに普通を求めても仕方ないから、あきらめたほうがいいぞ」

 「それは知ってますけど、現に私は活性期の魔物を相手にするのに手間取っているのにヴァンが余裕そうで複雑です」

 そんなことを言っているが、フロノスもなんだかんだで活性期の魔物を相手にしながらもディグと話す余裕はあるらしい。

 結局の所、フロノスもヴァンも『火炎の魔法師』と呼ばれる王国最強の魔法師、ディグ・マナラナの弟子になり得るだけの才能を持ち合わせているというそういう話なのだ。

 正直な話を言えば、ディグ、フロノス、ヴァンが三人そろって魔物の討伐をするだなんてオーバーキルもいい所なのだが、フロノスとヴァンは活性期の魔物を相手にするのがはじめてだということで、念のためディグと一緒に行動しているのである。


 三人による魔物討伐は続けられる。


 『ご主人! 横見て!』

 「うおっ」

 クスラカンに声をかけられて、ヴァンはとびかかってくる魔物に気づいたらしい。慌てたように体をそらす。

 ヴァンにとびかかろうとしてきたその犬に似た獣は、地面へと足をつけると再度とびかかってくる。それと同時にヴァンを乗せているザートも動く。

 『主様、油断しすぎです。魔物を相手にするときは注意をしてくださいといっているでしょう』

 『ザートは堅いなぁ。まぁ、ご主人は油断しなきゃこんな魔物なんかに負けないんだから油断しちゃだめだぜー』

 周りに対する警戒心を怠っていたヴァンは召喚獣二匹にそんな風に咎める言葉をかけられる。

 「……そうだな。危ない危ない。もっと気をつけなきゃ」

 『そうだぞー、気をつけなきゃだぞー。ご主人!』

 クスラカンはヴァンの目の前でパタパタと羽ばたきながらも、そんな声を上げる。

 「よしっ」

 ヴァンは気合いを入れるように自分の頬を一度たたいて、そしていう。

 「これからは油断しない。ナディア様を守れるようになるためにはこんな魔物たちに手こずるわけにはいかない」

 ナディア様のために。

 すべてはナディア様を守るために。

 ヴァンの言葉は全てナディア様に関連した言葉ばかりで、それを聞いていたザートとクスラカンは面白そうに笑っている。

 それからのヴァンの動きは目を見張るものであった。

 そのすぐ近くでは、フロノスが活性期の魔物相手に奮闘している。

 「はっ!」

 手に持つ長剣で、一閃。

 魔力の込められたそれは、本来の長剣よりも切れ味が何倍もあるものだ。その一閃で、魔物の体を叩き斬る。

 前から向かってくる魔物を、横からとびかかってくる魔物を、全てをたった一振りで切断していく。

 時折魔法も行使するが、フロノスは現在長剣による攻撃で活性期の魔物たちの命を奪っている。

 (……ヴァンに勝ち続けるためには、どちらかというとこっちを磨くべき)

 そう、そういう気持ちがあるからこそ剣技を磨いているのも一つの理由だ。魔法よりも武器による攻撃で攻めた方がヴァンに勝つことが出来る。それをこの三か月で自覚したのである。

 目の前に越えられない天才という壁が居ようとも、向上心を失わないだけの心をフロノスは持ち合わせていた。

 そして、活性期の魔物を相手にするのがはじめてだとは思えないほどの働きを見せる二人の弟子を横目に、その師匠はというと、

 「まじ、俺こいつらと一緒に居る必要ねーよな」

 とそんな言葉を発しながらも、念のためにフロノスとヴァンの様子を見つめていた。

 二人とも通常状態の魔物しか討伐したことがないからという理由で、師として二人の様子を見ているわけだがディグには全くもってその必要性がわからなかった。確かに一人で活性期の魔物を討伐させるのは危険かもしれないが、別に俺ここに居る必要なくね? というのがディグの正直な感想である。

 危険度の低い魔物が活性化しているものを相手にしているからもあるだろうが、フロノスもヴァンも危機に陥る心配は今の所なさそうである。

 (……次に討伐するときは、こいつら別の奴らと一緒に行かせるか)

 ディグは活性期の魔物たちを相手にしながらも、そんなことを考えるのであった。

 そんなこんなしているうちに、活性期の魔物を相手にするはじめての日は終わった。





 ―――魔物との戦いについて 下

 (『火炎の魔法師』の弟子であるだけあり、二人とも余裕そうであった)




 

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