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29.心配する第三王女様について

 「ヴァン様、活性期の魔物の討伐に参加するのですか!?」

 さてさて、ヴァンから活性期の魔物の討伐に参加する話を聞いたナディアはそれはもう酷く驚いている様子であった。

 ディグから活性期の魔物の討伐に参加をするように告げられた翌日、ヴァンはナディアと共にのんびりとお茶をしていた。

 その中でぽろっと「そういえば、活性期の魔物の討伐に俺も参加するようにって師匠に言われました」と何気ない話のようにヴァンがこぼしたのである。それを聞いたナディアの心情はというと以下の通りである。

 (ヴァン様は私よりたった二つだけ年上で、今年十二歳になったばかりなのに。それにディグ様の弟子となってまだ三か月しか経っていない。ヴァン様が色々と普通とは違う事は理解しているけれども、それでも、ヴァン様を見ていると不安になってしまいますわ)

 そう、ただ不安であり、心配していた。

 ヴァンの実力を聞き知っている。フロノスと模擬戦をするさまもみた。だけれども、それでも、目の前のヴァンを見て、どうしても心配になる。

 ナディアの目の前にいるヴァンは、ただのどこにでもいるような少年にしか見えない。三か月もたつのにいまだにナディアになれずに、緊張している年上の可愛い少年でしかない。

 「は、はい。師匠に言われました」

 「活性期の魔物は狂暴だと聞きますわ。大丈夫ですの?」

 「えっと、たぶん。師匠には、召喚獣も連れていくように言われてて、なんとかなると思います」

 ヴァンはナディアの言葉にそう答える。

 「召喚獣たちも連れていけるのですか。ならまだ安心ですわ…」

 ヴァンの言葉を聞いてナディアはふぅと息を吐く。安心したような表情を浮かべるのは、それだけナディアがヴァンのことをそれなりに気に入っているからとしか言いようがない。

 『主、俺行きたい』

 『俺様が行くぜぇ』

 『主様、俺も行きたいです』

 現在ナディアの傍にいたのは、《ファイヤーバード》のフィアと《クレイジーカメレオン》のレイと《ブリザードタイガー》のザードである。

 その三匹がそれぞれ「自分が行きたい」などと主張する。心なしかその瞳は期待に満ちて光っているように思えた。

 どうやら三匹とも暴れたくて仕方がないらしい。

 「お前ら煩い」

 ヴァンは折角ナディアと話しているのを召喚獣たちに邪魔されるのが気に食わないらしい。そんな風に声をあげて、キッと召喚獣たちを睨みつける。

 (ふふ、ヴァン様は私には緊張して仕方がない様子なのに、召喚獣たちを相手に話しかける時は年相応で、私の前だけああだって思うとやっぱり可愛いですわ)

 ナディアはヴァンと召喚獣たちの様子を見ながらも内心ニマニマしていた。

 ヴァンたちを見ながら穏やかな気持ちになりながらも、やっぱり心配がわいてくるものだ。

 (でも召喚獣たちを連れて行くとしても万が一という場合がありますわ)

 そう思いながらもヴァンへと話しかける。

 「ヴァン様は魔物を討伐したことはあるのですか?」

 「普通の、魔物なら」

 「まぁ、そうなんですの?」

 「…はい」

 普通の魔物も討伐したことがないのではないかと危惧していたナディアはヴァンの言葉に少し安心しているようだ。

 『主はナディア様を守れるようにーって、魔物相手に魔法の練習してたんだぜ!』

 『俺様が召喚された場所は魔物が溢れる森だったしな!』

 『主様は活性期の魔物でも問題ないと思います』

 フィア、レイ、ザートが口を開く。

 それぞれ全く自分の主が活性期の魔物たちと戦うことに対して心配などしていないらしい。

 「……お前らっ、ナディア様の前で余計なこというな!」

 ヴァンは本人の前で「守るために練習した」などといった事を暴露されて恥ずかしいのか、慌てて叫んでいる。そんな叫ぶヴァンを見て三匹の召喚獣たちはそれはもう楽しそうである。

 そしてヴァンは口をふさぐのが遅い。既にナディアにはしっかり召喚獣たちの発言を聞かれてしまっている。

 「ヴァン様、私を守るために練習していたんですわね」

 「…そ、それはその。はい、そ、そうです」

 「ふふ、ありがとうございます。ヴァン様」

 「い、いや、お礼はいらないです。俺が、勝手にやっていたこと、だし」

 ナディアが満面の笑みを浮かべてくるわけだから、やっぱりヴァンは挙動不審である。

 「でもありがとうございますって言わせてください。ヴァン様。いつもありがとうございます。ヴァン様の召喚獣たちのおかげで私は安心して頑張れますわ」

 そんな風に言われて、ヴァンはやっぱり撃沈している。顔を赤くして伏せている。ナディアの笑顔にやられているらしい。

 そんなヴァンの様子にナディアも召喚獣たちも楽しそうだ。しかしそんな周りの様子にヴァンはナディアの笑顔でいっぱいいっぱいで気づいていない。

 「ヴァン様」

 「う、えぃ、はぃ」

 ナディアの笑顔にやられてぼーっとしていたヴァンは話しかけられて、変な返事をしてしまう。

 その様子にまたナディアは内心微笑む。

 「あまり無理をしないようにしてくださいね。私ヴァン様が怪我をしたら悲しいですわ」

 「…はい。俺、頑張ります」

 ナディアの言葉にヴァンは力強く返事を返すのであった。





 ―――心配する第三王女様について

 (ヴァンがいくら異常だとしっていても目の前の少年を前に心配せずにいられないナディアであった)




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