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異界育ちの娘 4

「父上、今までどこに行っていたんだ」

「異界に落ちていたんだ。流石に異界からだと戻ってくるのに時間がかかった」

「異界!? 流石、父上。そんなところから戻って来れるなんてっ」

 ナガラードはアレキセイと違って、ヴァンやナディアの記憶がよく残っているので全く疑いもせずにヴァンの言葉に頷く。そして尊敬したようにキラキラした目を向ける。

 そんな普段見ない子供のような兄の姿にアレキセイは驚いていた。アレキセイの前では、ナガラードはいつも、兄としてあった。

 それは両親が行方不明であるため、兄として弟を守らなければという心があったからにほかならない。両親が戻ってきて、ほっと一息をついているナガラードは嬉しくて仕方がないのだ。

 それにナガラードにとってみれば、父親も母親もどうしようもないほど憧れている存在である。そんな存在を前に興奮しないわけはない。

「ナガラードお兄ちゃんは、お父さんの凄さが分かってるんだね」

「そりゃそうだよ。幼いながらに父上は凄かったからね。もちろん、母上もだけど。

 あれ、父上たちが異界にいたってことはディニーは異界で生まれたのか?」

「そうだよ」

「凄いな!! となると父上たちの凄い姿も結構見たのだろう? 是非、その時のことを教えてほしい」

「うん。いいよ」

 すっかりディニーとナガラードは仲良くなっていた。

 というのもディニーも散々、今までの暮らしで父親の異常さや母親の凄さを知っている。両親がいたからこそ、異界で生きてこられたというのもあり、ディニーにとって二人とも逆らってはいけない存在である。そしてディニーは二人の事を尊敬している。

 同じく両親を尊敬している仲間である長兄であるナガラードと気があわないわけがない。兄と妹が盛り上がっているのを見て少しだけ面白くないのはアレキセイである。

 両親に思う所はあったとはいえ、アレキセイは兄のことは尊敬しているので、折角久しぶりに会えた兄が妹に取られたようで不機嫌そうである。

「あら、アレキセイ。混ざりたいのなら貴方も二人の話に混ざってきたら?」

「か、母さん。混ざりたくなんかないし!!」

「あらあら、素直じゃないわね。じゃあ、私と一緒に話しましょう、ね?」

 優しくナディアにそんな風に微笑まれて、断れるわけがない。……しかも隣にいるヴァンが「断らないよね?」と視線を向けているし。

「アレキセイ、貴方はどんなふうに過ごしてきたのかしら」

「どんな、って普通に……」

「ナディア様、アレキセイってば、反抗期なんだよ!!」

 アレキセイは戸惑いながらも、答えようとする。その前にスノウがアレキセイの態度を言及してしまった。アレキセイは「馬鹿、何を言って――」とスノウを睨みつけてしまう。

「アレキセイ、スノウはお前にとっては叔母みたいなものだろう。そんな態度をしたら駄目だぞ」

「……う、わ、分かったよ」

 睨みつければ、父親に注意され、アレキセイはそれに素直に頷いてしまう。というのも、アレキセイは先ほどの一件で、ヴァンのことを怒らせてはいけないと身にしみているのだ。

 反抗期もヴァンの前では、姿を見せないものだ。

 そもそもヴァンは普通とは違った感覚を持っているので、反抗期などにもきっと予想外の行動にでるだろう。アレキセイはヴァンの思考が理解出来なくて恐れていた。

「スノウ、貴方も私たちがいない間、子供達を見てくれてありがとう」

「気にしなくていいよ。私、ヴァン兄とナディア様に沢山もらってるから。それを返してるだけだもん」

「スノウ、よくやった」

 ナディアの言葉にスノウは答え、ヴァンが続けて返した言葉のあとにスノウの頭を撫でれば、スノウはその異形の耳をぴくぴくとさせる。嬉しいのだろう。

 アレキセイは、子供のように無邪気に笑うスノウを見て、いつもと違うので不思議な気分になっている。

 アレキセイにとってはスノウは大人で、こんな風に誰かに甘えるのも見た事がなかったのだ。

 



 そんなこんな家族の交流を深めていると、ぐぅううとディニーのお腹が鳴った。





「お腹すいたのか? ディニー」

「ご飯を食べましょうか」

 ディニーのお腹が鳴ったのもあり、ご飯を食べることになった。公爵家に仕えている料理人たちの作った料理を、家族全員で食べる。

(お母さんとお父さん以外と一緒にご飯食べるの不思議。貴族というのも話は聞いていたけど、不思議。なんだかよく分からないなって慣れないなって思うけど、でもお兄ちゃんたちと会えて、新しい人達と会えるのは結構楽しい。こうして皆でご飯を食べるのも楽しい)

 異界でずっとそだってきたディニーは、両親以外の人間を話の中でしか知らなかった。貴族という身分についても両親から説明をされたものの、異界しか知らないディニーには不思議だった。こうしてご飯を皆で食べるという状況も何だか不思議で、夢見心地だ。

 それでもなれなくても、こうして皆でご飯を食べるのはディニーにとって楽しかった。




 ――異界育ちの娘 4

 (異界育ちの娘は兄と交流し、食事を取る)



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