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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
番外編 8

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サモナー公爵家の次男 2

 アレキセイにとって、スノウという存在はこのサモナー公爵家の象徴の一人である。

 父親であるヴァン・サモナーが面倒を見ることにして、この公爵家に住んでいる異形の少女。アレキセイよりも年上だというのに、その外見は昔から一切変わらないと聞く。

 その人ではない、普通ではないというものの象徴である少女。

 その少女に対して、アレキセイは幼い頃純粋な親しみを抱いていた。周りにスノウのような存在はスノウしかいなかったけれど、世の中にはきっとスノウのような存在がいるのだと思っていた。

 でも――大きくなるにつれ、アレキセイはスノウの存在が普通ではないことを知った。そして同時に、大きくなるにつれ、両親やこの公爵領に対して、複雑な気持ちを抱くようになっていた。

 ――そして、この公爵領の象徴であるスノウに対しても。

(スノウはおかしい。あんな存在はおかしい)

 などと拒否反応を見せながらも、昔から面倒を見てくれているスノウに酷い態度は取れないアレキセイなのであった。

 拒否反応はあるものの、情もあるので、なんだかんだ先ほどのようにぶっきらぼうな態度を取るぐらいである。無視もしない。スノウからしたら反抗期だと思われている。

 さて、そんな風に反抗期かーとほほえましい目で見られていることはアレキセイ自身は把握していない。まだ子供なので、とりあえずこの公爵領から飛び出て、両親より凄い存在になる! という野望を抱いて生活しているだけである。

 ヴァンのように初恋したからと召喚獣と契約して勝手に王女の傍に召喚獣をやったり、勝手に王城に侵入して王女を見守っていたり――という突拍子もない行動を起こさないので、召喚獣たちも好きにさせていた。

(まだ子供だからって許されないけど、大人になったら……絶対に)

 そんな風に考えているアレキセイは、色々とこじらせているとはいえ何だかんだ周りの言う事をちゃんと聞く少年であった。

 両親のことや、この特殊な公爵領のことで複雑な思いを抱えて、迷走している節はあるものの、悪い方向に道がそれているわけでもないのである。

 ただ、両親の記憶がはっきりあるナガラードからしてみれば、色々と弟が心配なのであった。

「……父さんや母さんなんか知るか、俺は」

『何をブツブツ言っているのですか。アレキセイ、スノウが夕飯だとお呼びですよ』

「うお! 急に入ってくるな!!」

『そう言われましても』

 気づけば夕飯の時間になっていたらしく、アレキセイの部屋の中に一匹の蛇がいた。黄色の鱗を持つ蛇がいる。それはヴァン・サモナーが契約をしている召喚獣の一匹である《サンダースネーク》のスエンである。

 ヴァンが行方不明になった当初、この世界に留まっていたため、そのままこの場にスエンはとどまっているのだ。

 小型化しているスエンを見て、アレキセイは嫌そうな顔をする。

 それを見ながらスエンはやれやれという気持ちである。

(主様の息子がこんな有り様とは、嘆かわしい。しかし、主様がいない今、その息子相手に小生が勝手に何かをするというのも……)

 スエンはため息交じりにそんなことを考えながら、夕飯を食べるために部屋を後にするアレキセイについていくのであった。

「アレキセイ、今日はどうだった?」

「普通」

「アレキセイ、ちゃんと噛んで食べる」

「うん」

 ……基本的に食事の時に話しかけているのはスノウである。アレキセイは簡単に返事をする程度であった。

 それが最近の平常運転である。

 スノウはヴァンの元に引き取られた当初、食事のマナーなどもきちんとできていなかったが、周りから教わり、今では所作は立派な淑女である。最も見た目が異形なので、はじめてスノウを見た人は所作よりもその外見に目が行くだろうが。

「……ごちそうさま」

「アレキセイ、また明日」

 アレキセイは食べ終わるとそのまま部屋へと戻ってしまう。

 スノウは「アレキセイとあんまりお話出来ない……」と少し落ち込んでいたが、まぁ、反抗期かなぁとのんびりした思考であった。

「スエン、どうやったらアレキセイ、お話してくれるかな?」

『そうですね。主様たちが帰ってきて、現実を見れば良いのではないかと』

「ヴァン兄は、頭おかしいもんね」

 異形の少女であるスノウにそう言われるぐらい、ヴァンという男はおかしい。そのことをスノウは、何年経っても、スノウはヴァンと出会った日のことを覚えている。

「はやく、帰ってこないかな。ヴァン兄」

 スノウはそう呟きながら、自分の部屋へと戻っていくのであった。




 さて、そんな風にスノウや召喚獣たちがヴァンが戻ってくることを確信した会話をしていることを知りもせずに、アレキセイはいつも通り過ごすのであった。

 ――両親が帰ってくるなんて、ありえない。

 そう考えているアレキセイが、両親と再会して、色々と心が折られるのはまた別の話である。



 ――サモナー公爵家の次男 2

 (サモナー家の次男は、両親が帰ってこないと思い込んでいる)




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