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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第二章 片鱗を見せる

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25.第三王女様の学びについて 下

 ナディアは第三王女として必要な教養についても、今まで以上に学びだしている。

 どうせ国王の決めた相手の元へと嫁ぐだけである、と今までパーティーにもあまり参加してこなかった。でもこれからは積極的に参加をして、人脈を広げていこうとそんな風にナディアは考えていた。

 というわけで、ダンスや話術、作法の勉強にも今まで以上に力を入れていた。

 動きや表情一つ一つが評価されるのが、王族貴族社会である。ナディアはまだ十歳であるが、子供であるからと大目に見てもらえる期間はわずかしか残されていない。

 「ナディア様、角度が違います。礼を取る角度はこうです」

 「その持ち方ではいけません。このように持った方が優雅に見えるでしょう」

 「こういう風に言われた際は、優雅にほほ笑み、隙を作らないようにしましょう」

 「ダンスのステップはそうではありません、こうです」

 国王陛下である父親に頼んで、わざわざ厳しい先生を三の宮に呼んでいたナディアは、厳しく指示を出されていた。

 王族貴族社会において、他の者たちに付け入る隙を与えないほどに完璧さを求められる。ナディアは完璧であることを望んだ。

 持ち方や仕草といった一つ一つを注意され、それを頭に留めながら注意して直していく。何度も何度も注意してそれをやるように心掛けていれば、いつかそれを自然に行えるようになるだろうと、そんな風に思っているからだ。

 もちろん、そんな様子を召喚獣たちはこっそりと隠れながら見守っている。もし、誰かがナディアを害そうとするのならばすぐに飛び出そうと見守っている。

 この場にいる召喚獣は四匹。

 《ファイヤーバード》のフィアと《ブラックスコーピオン》のカレン、《ホワイトドック》のワート、《ブルーマウス》のエレである。

 ナディアに教育を施している講師には知る術もないことであるのだが、四匹の召喚獣は講師が何かナディアに危害を加えることがないかと一心に見守っている。何かやらかしたとしても殺さないようにヴァンから命令されているため、ここが血の海になることはないが、命令さえなければ何かやらかす奴は即座に殺されていたことだろう。

 「こうでしょうか?」

 「ええ、そうですわ。ナディア様は大変筋がよろしいですわ」

 勉強熱心で覚えも良いナディアにその講師はそれはもう嬉しそうに笑みをこぼした。

 時間の許す限り学びの時間を作った。

 無理をしているわけではない。読書をしたり、そういう趣味の時間ももちろん作っている。けれど、それ以外の時間の大体を勉強に費やす。学び、そして自分を磨く。

 一通りの学びを終え、講師たちが帰るとナディア付きの侍女たちがナディアを椅子に座らせる。そして紅茶を注ぎ、それを差し出す。

 「ふぅ」

 紅茶を口に含みながらナディアは一息をつく。

 色々と詰め込んでいるのもあって、疲れがたまっていたのだろう。

 「ナディア様、大丈夫でしょうか」

 そうやって声をかけるのは、幼い頃よりナディア付きの侍女をしているチエであった。チエは元々ナディアの母親とも仲が良かったらしく、それもあってナディアの事を大切にしている。

 「ええ、大丈夫よ。心配させてごめんね、チエ」

 「ナディア様がこれほどまでに頑張るのはあの、ディグ様の弟子の方のせいなのでしょう?」

 「ええ。ヴァン様の”せい”ではなく、ヴァン様の”ため”によ。私はヴァン様に守られるに相応しい王女になりたいと望んだの」

 チエはヴァンのせいでナディアがこれほどまでに頑張っているということに、なんだか思う所があるようであった。

 しかしナディアがどこまでも晴れ晴れとした顔で、ヴァンの事を語るために苦言を言うことが出来ないようだ。

 「本当にあの方が、召喚獣を大量に従えている魔法師なのでしょうか」

 「ええ、それは本当よ。それに今も私の周りにはヴァン様が遣わした召喚獣たちがいるもの」

 そういいながらナディアがちらりとある方向に視線を向けた。そこからは小さな青いネズミが現れた。

 《ブルーマウス》のエレである。

 『おいらたちのご主人様はヴァンだぜ! ご主人様は見た目は平凡だけど中身は色々とおかしいんだぜ!』

 そして会話を聞いていたらしいエレは、出てきたと思えば勢いよくそんなことを言った。

 「ほら、チエ。召喚獣もいっているじゃない」

 「……そう、ですわね。でもやっぱり自分の目で見ないとどうしても信用できません」

 チエはそんなことを言う。まぁ、無理もない話である。ヴァンは見た目だけを言うならば平凡であるし、ナディアの前では緊張して仕方がないからか、ただのウブな少年と化している。

 そんな姿しか、ナディア付きの侍女であるチエは見たことがないのだ。

 例えば、ディグとの人知れずな攻防や魔法棟で絡まれた時の事を見ていればそんなことを言わなかっただろうが、現状人づてに聞く実力しかわからない状態であった。

 だからこそ、チエにはヴァンが守るに相応しい王女になりたいというナディアの言葉を受け入れられない。本当にあの平民が、ディグやナディアにそこまで言わせる実力を持っているのかとそもそも疑ってしまっている。

 『なら、見に行くのはどうー?』

 そういったのは、草むらから現れた小型化している真っ白な犬である。ナディアを見ながらぶんぶんと尻尾を振っているが、ヴァンとナディア以外に触れられそうになると途端に牙を向く、そんな《ホワイトドック》のワートである。

 「見に行くというのは?」

 『主に内緒でこっそり見ればいい! 最近主はフロノスと模擬戦しているからなー』

 今度は上空から真っ赤な羽をもつ小鳥が現れた。《ファイヤーバード》のフィアだ。

 『それが良いですわ。ご主人様はナディア様に見られていると自覚すると緊張して力を発揮できるかわかったものではありませんから』

 そして最後に気づけば《ブラックスコーピオン》のカレンもそういって現れる。

 そういうわけで、ヴァンの様子を見に行くことになった。




 ―――第三王女様の学びについて 下

 (第三王女様の侍女は、ガラス職人の息子の実力を疑っている)




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