カインズ王国の王妃になる少女 3
グニー・ルクラはカインズ王国で過ごしている。
その日、グニーは第三王女であるナディア・カインズと『破壊神』ヴァンと会う事になっていた。
レイアード・カインズに連れられて二人の前に顔を出していた。
「グニー・ルクラと申します。ナディア様、ヴァン様、よろしくお願いします」
「ナディア・カインズですわ。よろしくお願いします」
「ヴァンです。よろしくお願いします」
グニーは目の前の二人を見る。
ナディア・カインズはとても美しい少女である。黄金の美しい髪に、赤い瞳を持つ少女。――ナディア・カインズはヴァンの名が広まると同時により一層有名になった王女である。
『破壊神の逆鱗』、『破壊神の姫』などと呼ばれるようになった少女。
(とても美しい少女。この少女が『破壊神の逆鱗』。彼女が攫われて『破壊神』と呼ばれる所業を行った)
同性でも、ナディアの事がとても美しいのがよく分かる。レイアードとよく似ている。
(そして、この方が『破壊神』。見た目は普通だわ。でも魔力が怖い。凄い魔力。この魔力があるのならば、『破壊神』と呼べるだけの事が出来るのは納得する。……興味が湧くわ。どのような魔法を彼は使えるのだろうか)
どのような魔法を使うのだろうか?何を出来るのだろうか?それに対して興味が湧いてならなかった。でも、急にそのことを聞くのもどうかと思い、グニーは聞けない。そうしていると、すぐ傍に召喚獣が居るのが見えた。
小型化しているが、確かに強い力を持っている召喚獣。
『ふぅん。これがナディア様の兄の嫁? 主ほどじゃないけれど不思議な魔力をしている』
『そうだな! 結構おいしそう』
真っ赤な羽を持つ鳥——《ファイヤーバード》のフィアと青い毛を持つネズミ——《ブルーマウス》のエレがグニーを見ながらそんな風に言った。
グニーは魔法国家の出だからというのもあるだろうが、召喚獣達にとって惹かれる魔力を持っていたらしい。
「そうなのか。グニー様はそんな魔力を持っているのかい?」
「はい。レイアードお兄様、そのようですね。ヴァンの召喚獣がそのように言っているので、正しいのでは?」
「そうなのですか……というか、魔力に美味しいとかあるのですか?」
グニーは不思議そうに問いかけた。
魔法国家の出であるグニーだが、召喚獣との契約というのはしていない。そもそも、ヴァンは簡単に沢山の召喚獣達と契約を結んでいるが、本来ならば、召喚獣との契約というのは命がかかるような危険なものなのだ。
ギルガラン達のように家で引き継がれている召喚獣ならともかく、自力で結ぶ召喚獣との契約はそれだけ大変な行為だ。それを一国の王女がしていないのは当然である。
「あるらしいです」
『あるぞ。主の魔力は凄い美味しい』
『そうそう、契約を結んでいるのはご主人様が凄く強いからっていうのもあるけど』
ヴァンの言葉に、フィアとエレが同意したように頷く。
(召喚獣達が美味しいと思う魔力。それを持っているからこそ、『破壊神』はそれだけの力を持った。そして、私もそういう魔力を持っている……正直、それが信じられない。でも、もし召喚獣を持てるというのならば、ちょっと興味がある)
魔法国家という魔力の事を多く学ぶことが出来る国出身だからこそ余計にそう思うのかもしれない。自分が召喚獣を持つなどと考えたことなどなかった。でもいざ、召喚獣を持てるかもしれないと聞くと、持ちたいと思ってしまった。
「まぁ……そうなのですか」
グニーは何だか嬉しい気持ちになった。……でも、召喚獣が欲しいという気持ちを告げていいものなのだろうかと疑問に思っている。王妃として、カインズ王国に迎えられるにも関わらず、そんな危険な真似を要望していいものかも分からない。
なので、一先ず、召喚獣に対する興味は心の内に留めておくことにした。
そういう事を告げて、完璧な王太子であるレイアードに嫌われたり、幻滅されたらと思うと口には出来ないとも考えていた。
そのため、初対面ではあたりさわりのない会話をして終わった。
ただ、機会があればもっと魔法や召喚獣について聞いてみようとグニーは思った。
グニーはカインズ王国での暮らしを楽しんでいた。ルクラ王国とはまた違った魅力が溢れている。
その事がグニーは楽しかった。それに結婚相手であるレイアードが優しくて、結婚式までの間、楽しく過ごせていた。
寧ろ、レイアードが完璧すぎて私でいいのだろうかとさえグニーは思ってしまっていた。
さて、そんなグニーだが、ある時、驚くべきものを見た。
それは……、
「はぁあ、私の妹たちは本当に可愛い。誰もお嫁にやりたくない」
「それは、兄貴が決める事ではないから。というかさ、ナディアは国内にいるだろうけど、フェールとキリマは下手したら国外に行くだろうけど、兄貴大丈夫か?」
「そ、そんな……」
「なんで、今知りました的な顔してんだよ。全く、奥さんにばれないようにしろよな?」
「まぁ、それはしっかりするさ」
「本当に頼むから。その残念な所見せたら絶対引かれるから。本当に仲良くなってからならともかくさ、いきなりそれ見せたら絶対引くから」
レイアードとライナスのそんな会話である。
いつもの完璧な王太子としてのレイアードはそこに居なくて、彼は表情豊かに妹の事を語っていた。そして、第二王子であるライナス・カインズも兄弟の会話だからか、口調が崩れている。
それを見て、聞いてしまって、慌ててグニーはその場から離れた。
頭の中では……、
(え、レイアード様よね? 何だか、いつもと違ったわ。レイアード様は妹様の事を話されていたけれど……)
と混乱していたのだった。
―――カインズ王国の王妃になる少女 3
(少女は召喚獣に興味を持つ。そして王太子と第二王子の会話を聞いた)




