表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第十章 そして、その少年の名は——。
242/272

217.VSシザス帝国について 10

12/31 八話目

『主様、この者が主様が所望の主犯であろう、この国の王です』

『ヴァン様、こちらは、ナディア様を妻にしようなどと企んでいた不埒なものです。小生は、この者は潰していいと思います』

 そう言いながら、帝王を探していたヴァンの元へやってきたのは、《サンダースネーク》のスエンと《アクアスネーク》のキルンである。双方とも、口にそれぞれ男を咥えていた。

 そして、ヴァンの目の前で落とされる。

 召喚獣達にこんな所まで連れてこられた二人は怯えていた。

「ナディアを?」

 ヴァンはナディアを妻にしようと考えていたなどという言葉に反応した。

『この国の皇太子で、ナディア様を奥さんにしようと、下劣な事を考えていたようですわ。このような者は必要ありませんわ』

 近くに居た《ナインテイルフォックス》のキノノもそんな風に告げて、冷たい目をグラスに向けている。

「なななな、貴様、俺を誰だと思っている!! こ、この俺にこんな真似をしていいと思っているのか!!」

「お前なんか知らん。お前も、ナディアを攫う事に同意したのか?」

「同意も何も、その女は俺のものにする予定なのだ!! 貴様、それほどの力を持っているのならば、わ、我が国に仕えぬか?」

 怯えながらも、グラスは頭を働かせて、そんな事を言う。

 目の前の存在を恐ろしいと思うが、それでも、自分は皇太子であるというプライドを持ち合わせている。目の前の存在さえ仲間に出来たのならば——と期待を抱いていたのだ。

「そうだ。我が国ならば、貴様の望む物を幾らでも与えよう」

「女でも金でも、何でもだ。その力があれば———」

「煩い」

 帝王も便乗して言葉を口にするが、ヴァンの煩いという言葉によって遮られる。

「お前達が誰であるかとか、どうでもいい。お前達が偉かろうがどうでもいい。……俺はお前達を生かさない。お前達はナディアを攫う事に同意したのだろう? そんな存在を許すはずがない」

 冷たい声でそう言い放ったヴァンは口を開く。

「燃えろ」

 一言だ。

 たった一言で、帝王と皇太子は炎に包まれた。

 それも、一瞬で燃え尽きない炎だ。

 ヴァンはナディアを攫う事を企てた存在だからという理由で、彼らをじわじわと殺すことに決めた。

 一瞬でその命を奪う事は可能だったが、それよりも、もっと苦しませて殺す事にしたのだ。それでいて、魔法でその炎から逃れられないようにする。

「な、余を誰だと——」

「熱い熱い熱い、だ、誰か——」

 悲鳴を上げる二人を、ヴァンは冷たい目で見ている。そして、興味をなくしたように、召喚獣達を見る。

「後は、こいつらに同意してナディアを攫う事に同意した奴を殺しつくす」

『主様、主様が何者か、きちんと誰かに告げていた方がいいと思うのです』

「それに、何の意味が?」

『ちゃんと主様がこれを成したという事を知らしめたほうが、これから先、ナディア様に手を出すものは居ないと思うのです』

「そうか」

 ヴァンはスエンの言葉に淡々と答えて、それもそうかと頷く。

 ちなみに、その後ろで全てを聞いて見ていたビィタリアは、恐ろしくて震えていた。

 ヴァンはあまりにも簡単に人の命を奪い、これだけの破壊行為を成せるだけの力を持ち合わせている。その事実を、目の前で見せられたビィタリアは、

(と、トゥルイヤ王国に帰ったら、絶対に、カインズ王国を敵に回さないようにお父様に言わなきゃ。こ、こんなの、敵に回したら、死ぬ。皆死んじゃうわ!!)

 と怯えながらも決意するのだった。

 ビィタリアはそれからも、ヴァンに魔法で引っ張られながらも全てを目撃していた。ナディアは視界や耳をふさがれているというのに、安心しきった様子でヴァンにお姫様抱っこされている。

 ビィタリアは何も見ずに聞かずにすむナディアが、心の底から羨ましくなった。

 それから、ヴァンは次々と、ナディアを攫う計画に加担した連中の命を奪っていく。その間にも、ヴァンと共に行動していない召喚獣達は、宮殿の破壊を続けていた。

 宮殿で働いていた者達は宮殿の外に出て怯えた様子でへたり込んでいたり、どうにかこの場から逃げようとしていたりと様々である。

 ヴァンはナディアを攫う事に加担した者達の事を殺しつくすと、魔法で宙に浮いたまま、自分の声を周りに伝える魔法を行使する。

「俺はヴァン。ナディア・カインズの婚約者。今回は、ナディアにお前たちが手を出したから、こうした。次にやったら、全員殺す。今回は関係なさそうな奴は殺さなかったけど、全員殺す。だから、ナディアに手を出すな」

 と、スエンの助言に従い、そう言い放った。

 今回、ヴァンは手加減したのだ。破壊し尽してはいるが、殺しつくしてはいない。

 ヴァンが本気を出せば、もっと殺しつくすことさえも可能だったのだ。

 そして、宣言を言い放ったヴァンは満足したのか、そのまま「帰るぞ」と召喚獣達に告げ、帰っていった。



 残された、生き残った者達の中の、皇族の一人は即座に、

「カ、カインズ王国に使者を出すわ。そして、あれを怒らせた事を詫びなければ……」

 と命令を下すのだった。

 ちなみに、この皇族は末端で、ナディアの誘拐には一切関わっていなかった。



 ―――VSシザス帝国について 10

 (破壊の限りを尽くして、関係した者達を殺しつくして少年は去って行った)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ