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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第十章 そして、その少年の名は——。

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206.侵入するヴァンについて 2

12/24 三話目

 ヴァンは魔法を行使して、警備の兵士達に悟られないようにトージ公爵家の屋敷の塀を飛び越えた。その後をフィアも共についていく。

 魔力を周りに廻らせて、人の気配を気にかけながら進んでいく。

(まずはナディアを助ける事)

 ヴァンの頭の中にあるのはそれだけだった。そのため、師匠である『火炎の魔法師』ディグ・マラナラが暴行されていることに気づいていたが、それよりもナディアを助ける事を優先して動き出した。

 まずは、ナディアのいる元へ向かう事。それを第一に考えているヴァンの足取りは軽い。こんな敵地のど真ん中に居ながら、ヴァンは自分の身がどうかなったらなどという心配はしていなかった。頭の中はナディアを助ける事しかない。ただ、ナディアに会いたい、ナディアの無事を確認したいと、それ以外考えていなかった。

 ヴァンとフィアは、特に障害もなく進んでいく。

 魔法が使えないようにする、そして召喚獣達を強制送還させる、何かしらの力をトージ公爵家が行使しているのもあって、侵入者に対する警戒心が低かったのもヴァン達がいとも簡単に進んでいけた理由だろう。

「この先だな」

『いやー、思ったより簡単にナディア様を助けられそうで良かったぜ』

 フィアは安堵していた。

 自分達のミスでナディアの居場所が分からなくなっていたのだ。正直、強制送還された時には、フィアは死を覚悟していたのだが、ナディアがこの場に居るのならば大丈夫だろうと喜んでいた。

(これで主に叱られなくて済むかもしれない。さっさとナディア様を助けなければ)

 そんな風に考えながらヴァンの後を追いかけている時、ふとヴァンが驚いた声をあげた。

「……ナディアの気配が消えた」

『え?』

 もうすぐナディアに会えると、笑みを零していたヴァンが無表情になってつぶやいた言葉にフィアも固まる。

「……待て、さっきの魔力の渦ってもしかして!!」

 そして、フィアが問い返す前に、ヴァンは潜入中にも関わらず、叫んで、走り出した。

 そんな動きをすれば、警備の者達に悟られてしまうのは当然の話である。慌ただしく走り出したヴァンに気づいて咎めようとするものはヴァンの魔法やフィアによって簡単に命を狩られた。

 命を失う寸前に、「待て、魔法が使えている?」「まっ――」などと疑問の声をあげていたが、それを気にするヴァンではない。

 ヴァンとフィアは、何者だとやってきた連中の全ての命を狩りつくし、ナディアの気配の確かに存在していた場所の扉を開けた。


 魔力が渦巻いている。

 それは、どこかに繋がっている。

 そしてナディアの姿はない。


 

 トージ公爵家の子息であるサマ・トージの姿が見える。渦の中に別の男が入っていくところだった。

「なっ」

「ナディアは何処」

 冷たいヴァンの声が響く。その言葉を聞いたと同時に、サマ・トージは何かの指示を出し、その瞬間、その魔力の渦が徐々に小さくなっていく、

 ヴァンはその魔力の渦の先に繋がる場所に、ナディアが向かわされたのではないかと頭を働かせた。そのため、そのまま、その小さくなっていく魔力の渦の中へと突入しようとするも、間に合わない。それが閉じる方が早かった。

「お、お前は誰だ。何故、ここに……」

「ナディア、何処にやったの」

 ヴァンは慌てふためき、声をあげるサマ・トージに対し、冷たい声をあげた。突然、その場に現れたヴァンにその場にいた者達は襲い掛かる。それを魔法や長剣で対処していくヴァン。

「な、何故、此処で魔法が使える? ……それより、貴様、そうか、ナディア・カインズの婚約者の平民か!!」

「ナディアは何処」

 そう告げたヴァンはその場に居たサマ・トージ以外の者達の命を蹴散らし、その長剣をサマ・トージの首元に既に当てていた。

「ひっ。も、もう遅い! ナディア・カインズはシザス帝国に送られた」

「ふぅん」

 冷たい声と同時に、長剣の力が強くなる。

「待て、私の事を殺す気か!私は——」

「どうでもいい」

 何かを言おうとしたサマ・トージは一瞬で首を切られた。首と胴体が切断されたサマ・トージの事をヴァンは一切見ていない。

「シザス帝国ね」

 ヴァンはそう呟いて、魔法を使えなくする事や召喚獣達を強制送還させていた魔法具を切り捨てる。それで、その効能は消えた。

『主、どうする?』

「師匠に言ってくる」

 ヴァンはフィアの問いかけにそう言って、ディグ・マラナラの元へ向かった。

 向かったのは、ディグ・マラナラが暴行されていた場である。

「師匠」

 ヴァンが辿り着いた時には、魔法が使えるようになった事に気づいたディグの手によって、暴行していた者達がこと切れた後だった。

「やっぱり、ヴァンか」

 拘束を外したディグは、傷だらけだ。魔法が使えるようになるまでの間、多くの暴行を受けたのだろう。でも、そんなディグにかけるヴァンの言葉は、何処までもぶれない。

「師匠。俺、ナディアを助けてくる」

「何処に?」

「シザス帝国。ナディア取り返してくるから。あと憂さ晴らしに此処ぶち壊しとく」

「は?」

 ディグがどういう事か問いかける前に、ナディアがこの場に居ないことに怒り狂っているヴァンは自分やディグに被害がいかないようにした上でトージ公爵家の屋敷を一瞬で破壊させるのだった。



 ―――侵入するヴァンについて 2

 (ナディアはその場にあった魔力の渦によって帝国へと送られた)



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