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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第十章 そして、その少年の名は——。
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204.公爵領へたどり着いたヴァンについて

 フロノス・マラナラ達がナディアの元へと駆け出していったヴァンの事を追いかけている頃——当のヴァンはといえば、召喚獣達に乗って即急にトージ公爵領へとたどり着いていた。

 ナディアがまだトージ公爵領に辿り着いているかどうかも把握出来ない状況であったが、一先ずそこに向かった。

 さて、トージ公爵領へと足を踏み入れたヴァンはといえば、無言である。

 共にトージ公爵領の中へと侵入した召喚獣達が恐ろしくなるぐらいの無言である。彼はただ、何も変わることなく、無表情のままそこへと足を踏み入れた。

 トージ公爵領ではトージ公爵家がトゥルイヤ王国から離脱するということもあり、領内の出入りは規制されていた。しかし、さらっと侵入してしまうのがヴァンであった。

 ヴァンは案外、冷静だった。

「情報集めて。ナディアが何処にいるか探す」

 そのままトージ公爵家の屋敷に突撃するかと思いきや、ヴァンは冷静に情報収集を召喚獣達に命じた。召喚獣達はその言葉に頷く。

 《ファイヤーバード》のフィアもその言葉に従って、飛び立とうとするが、ヴァンに引き留められる。

「フィアは俺と一緒」

『……お、おう。何をするんだ』

 フィアはナディア様を見失ってしまったというのに、これといって予想外にヴァンから叱られる事もなく、これから叱られるのだろうかとビビりきっていた。

 しかし、ヴァンはフィアの怯えたような態度に訝しそうな顔をする。

「フィアは、俺と一緒にその召喚獣が強制送還される何かについて調べるんだよ」

『おう、分かった!』

 何のために一匹残されたのか理解したフィアは安堵の表情を浮かべる。召喚獣からしてみてもヴァンという少年は怒らせれば恐ろしい少年であった。そもそも、自力で召喚獣を二十匹も従えている規格外の存在で、一対一でやりあってもフィアが勝てる確証も持てない相手である。ヴァンならば、やろうと思えば、強大な力を持ち合わせているフィアの命さえも奪う事が出来るだろう。

 だからこそ、フィアは失態を犯してしまった事でヴァンがどれだけ怒るかを考えて怯えを隠せなかった。今はナディアを助ける事で一杯になっているヴァンだが、ナディアを助けた後には思いっきり攻撃されるのではないかと今から恐ろしいフィアを含むナディアを見落としてしまった召喚獣達であった。

(……ナディア様を助けたらナディア様に主に怒らないように言ってもらおう)

 そう考えるフィアは、ヴァンが本気を出してナディアを助けられない未来など考えてもいなかった。



 さて、ヴァンはフィアを連れてトージ公爵領の中心部に向かう。


 トージ公爵家の領内では、まだトゥルイヤ王国を脱する事は広まっていないようだ。ただ、入退場の規制がされ、何かが起こっているという事は勘付いているようだが。トージ公爵家の私兵以外の姿も見える。彼らは恐らくシザス帝国の兵達だろう。ヴァンは魔法を行使して、存在感を薄めて、彼らの隣を動いていく。

 何処にでもいる顔立ちの、平凡そうなヴァンの事を彼らは気にも留めない。

 トージ公爵領の中心部は、トウジという名の街だ。その街へと入ろうとした瞬間、急にフィアの姿がその世界から喪失した。

 街中にひっそりと入って召喚獣を呼び出そうとするも、呼び出す事が出来ない。

(この街の中に召喚獣が入れないようにしている? ああ、でも、確かに変な術式が街を覆ってる。魔法は……)

 ヴァンはひっそりと魔法を行使しようとするも、中では魔法が使えなかった。

(魔法も使えないか。これが師匠がへまをしてしまった理由か)

 街中で魔法が使えず召喚獣達が呼び出せない事を把握しても、ヴァンは一切焦りを見せない。ただ、頭の中にあるのは、婚約者であるナディア・カインズを助ける事だけだ。他の事は一切考えていない。

 街の外に一度出て、もう一度フィアを呼び出す。

『主、これだ、これで俺は帰されたんだ!!』

「うん、見ればわかる」

『前の時は屋敷内で急になったのに、街全体に広がってる!』

「うん、じゃあ、解除するか、それとも解除せずに入るかどっちがいい?」

『解除せずに入れるならそっちの方がいいと思うぜ。いきなり解除されたらあっちに俺達が来た事が知られるだろうから』

「ふぅん」

 ヴァンは頷いて、まずは魔法を行使してみる。街の外ではもちろん行使出来る。それで、何を試してみるかといえば、魔法を行使した状態でその覆っている術式の内部へと入ることだった。

 内部に入れば、構築されていた魔法が喪失されるのかと思いきや、魔法の効能は継続したままだった。

(やっぱり。中では魔法を使えないけど、外で使った状態で入っても継続される。なら、多分この覆っている何かは内部で魔法を構築しようとするのを邪魔するってものか。なら、やりやすい。あとは———)

 ヴァンは外で使った魔法が内部でも継続されている事を把握すると、その覆っている術式の解読を始めた。

 ヴァンはそれから十分も経たずに、

「フィア、内部に入っても強制送還されないようにするから中入るぞ」

 と、たった十分しかかからずに異界へ召喚獣達が強制送還されないように対処方法を生み出したのか、フィアに軽く声をかけたのだった。



 ――公爵領へたどり着いたヴァンについて

 (少年は公爵領へとたどり着く。そして召喚獣達を強制送還した何かを解読するのだった)




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