表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第九章 外交と、波乱の幕開け
222/272

197.帰路について 1

12/15 四話目

「では、おもてなしありがとうございました」

 ナディアは優雅に頭を下げる。

 トゥルイヤ王国の王宮での滞在期間は無事に経過していった。

 何か問題が起こるのではないか、何か粗相を犯してしまうのではないかという不安がナディアにはあったが、何も起こる事はなく、上手く対処が出来たのでナディア自身としてはとても満足が行く結果で外交は終わった。

 あとは、カインズ王国の王宮へと帰るだけである。

 また帰りは馬車なので、時間はかかるがようやくカインズ王国へと帰れるのだ。

 そう思うと、ナディアはほっとしていた。

(ヴァンはどうしているかしら?私がいない間、どのように過ごしていたか聞かないと。私も、このトゥルイヤ王国でどんなふうに過ごしたかヴァンに沢山、話したいわ)

 ナディアは帰れると思った時、真っ先にヴァンの事を考えていた。

「婚約者の元へ行く予定のビィタリア王女も一緒に向かわせてくれないか」

 ただ、帰路はビィタリア王女も一緒に向かうことになった。というのも、カインズ王国への国境――ナディアが帰りに一休みする予定の街にビィタリア王女の婚約者である公爵家の領土があるのだ。今回ビィタリアが婚約者の元へ向かうことになっていた。カインズ王国の英雄である『火炎の魔法師』ディグ・マラナラが共に領土に向かう方が安全だろうという事になって一緒に向かうことになったのだ。

 そのことに関してはナディアは正直何とも言えない気持ちになっていた。

 というのも、ナディアがザウドックにフェールの様子を聞かれたりしている中にどんどん割り込んできたり、政略的な婚約ではないナディアとヴァンの事を何度も何度も政略的な婚約だといわせたいと色々と声をかけてきたりしていたからだ。

(ビィタリア様も大変なのはわかるけれども……でもいいわ。公爵領まではビィタリア様の気分を害さないようにうまくしましょう)

 ナディアはそんな風に思考する。

 王宮へ戻る事が出来れば、ヴァンに会えるのだからというその思考がナディアの心を高ぶらせていた。

 そしてナディア・カインズと、ビィタリア・トゥルイヤの二人の王族の二台の馬車が護衛たちと共に出発するのである。


 ナディアの馬車の中には相変わらずフィアが居た。



『ナディア様、この前のパーティーできていたドレス、主の前で着た事ないだろ?』

「ええ、そうね。外交用の新しいドレスだわ」

『主の前で着たらきっと喜ぶと思うぞ』

「そうかしら? でも、そのくらいで喜んでくれるなら、私は喜んで着るわ」

 《ファイヤーバード》のフィアとナディアは和やかな会話を交わしている。召喚獣たちと和やかな会話をしている時点で、色々と驚くべきことなのだが、ナディアにとってヴァンの召喚獣たちが傍に居るのはすっかり当たり前になってしまっている。

 特に《ファイヤーバード》のフィアは常にナディアの側に居るような存在なので、居ないほうがおかしいとさえ思ってしまう境地に達していた。

『絶対喜ぶだろう』

「ヴァンのやつ、ナディア様と婚約をしてからより一層ナディア様の着飾った姿とか見たいって言ってますからね」

 フィアの言葉に続いて、同じ馬車にいるディグも言う。

「ふふ、それは嬉しいですわ」

 ナディアはその言葉を聞いてヴァンが自分の着飾った姿を見て喜んでくれることが嬉しいと思う。好きな人が気にかけてくれるのならば、いくらでも綺麗になりたいと思うし、幾らでも着飾りたいとナディアは思った。

「そういえばあの第二王女の婚約者の領土だが、少し不穏な噂もあるらしいから気を付けた方がいいかもしれないですね」

「まぁ。そうなのですか?」

『俺達が守るからどんな場所でも大丈夫だろ』

 上からディグ、ナディア、フィアの発言である。

 ディグはビィタリアの婚約者の噂もトゥルイヤ王国の王宮に滞在中の間に調べていた。調べたとはいってもその婚約者の領土の噂を集めていただけだが。

 行きは別のルートを通ったのでその第二王女の婚約者の領土は通らなかったが、是非とも帰りはこちらに立ち寄ってほしいというお誘いがありそちらに顔を出すことになっていたのだ。

「とはいえ、流石に友好国家の王女相手に……それも俺もいる中で何かやらかすとは思えないけどな」

 そもそも、召喚獣たちが傍に居る状態でナディアに何かするのは不可能に近いのと、友好国家の王女相手に何かやらかすとは思えない。それも自国の王女の婚約者に納まっており、その不穏な噂自体がその公爵家を蹴落とそうと考えているものが流しているただの噂の可能性も高い。

『あれだったら、俺達が何匹か先に様子見に行こうか?』

「その方が助かるが……ナディア様の側を離れるのは大丈夫なのか? ヴァンに見守っているように言われているんだろう」

『大丈夫だろ。ナディア様を守るための行動だし』

 フィアが自信満々にそういったのもあって、ナディアの側に居る七匹の召喚獣のうち二匹が先に公爵領に向かうことになったのだった。




 ―――帰路について 1

 (第三王女は帰路につく。カインズ王国への道のりは長い)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ