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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第九章 外交と、波乱の幕開け
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185.デートでどこに行くかについて

「ねぇ、ヴァン。……私、今度、国外に外交に行くわ」

 ナディアはヴァンとお茶会をしている中で思い立ったように言葉を発した。

 ヴァンはナディアと思いが結ばれてからというものの、ナディアの側にヴァンはいたがっている。ナディアへの独占欲を隠すこともせずに、あらわにしている。

 そんなヴァンはナディアから外交に行くことを聞いて固まった。

「外交?」

「そうなの。私も貴族としての位をもらうでしょう。だから、このカインズ王国の貴族としてやっていくためにも私という存在の価値を高めたいの。ヴァンの婚約者として相応しくありたいの。だから……あのヴァンは私を信じて、この国で待っていてほしいの」

「……俺は、いけないの?」

「ええ。ヴァンはカインズ王国に残って、この国を守っていてほしいの」

「……この国を?」

「ええ。そう。私はこの国が大事だからこの国を守っていてほしいの。ヴァンが私の事を大事にしてくれているのは理解しているわ。私の側に居たいと願っていてくれていることも。でも……、私はヴァンと一緒に生きていくためにも、私たち二人のためにも……私は私の価値を高めたいの。私は、ヴァンが守ってくれるのは嬉しいけれど、守られるだけは嫌なの」

 ナディアはヴァンに納得してもらえるように、そんな風に告げた。

 ナディアは守ってもらうだけでは嫌だった。自分が守られるだけの人間だと思われたくなかった。――魔法師として、召喚獣として、才能にあふれているヴァンに守られるのに相応しくないと思われたくなかった。

 そんな意地があるからナディアは、ヴァンに告げる。

 ナディアは守られるだけで満足するようなお姫様ではなかった。ただおとなしく守られる事が嫌だと思っていた。だから——自分の決めた事を、自分の足で踏み出そうと思った。

 そんな決意の言葉をヴァンへと告げる。

「……ナディアは、一人で行きたいんだね」

「ええ」

「それは俺を嫌いとかではなくて、未来のために」

「ええ、そうよ。ヴァンの事を嫌いになるはずないわ。それに、ヴァンは逃がしてくれないでしょう? ふふ、まぁ、逃げる気もないけれど」

「……うん。なら、俺はナディアの意志に従う。俺は難しい事分からないけれど、それでも俺はナディアがそういうならそうだって思うから。でも召喚獣たちは絶対につけるよ」

「ええ。……ヴァン、外交に出かけたらしばらく会えないわ。だから、この前話していたデートに行きましょう。外交に行く前に、ヴァンと沢山仲良くしたいわ」

 ヴァンはナディアが外交に行くという話を聞いて、少し落ち込んだ表情を浮かべたが、ナディアの愛らしい提案に嬉しそうな顔をした。

「うんっ」

「それで、初めてのデートだし、王都内をデート出来ないかなと思ったわ。でも、それだとお忍びにならないかしら?」

「ナディアが王都でデートがいいっていうのならば阻害の魔法かけるからどうにでもなるよ」

「あら、流石ヴァンだわ。なら、王都でデートしましょう。いつにするか決めたらお父様に許可をもらいに行くわ。私、ヴァンの実家にいってみたいわ」

 ちなみに婚約を正式に結んだナディアとヴァンだが、ナディアはヴァンの両親に挨拶はしていない。ヴァンが自分で両親にさらっと報告したぐらいだ。ちなみに報告を聞いてへたり込んだ両親は召喚獣たちが介抱していた。ヴァンはさっさと王宮に戻った。

「俺の実家?」

「ええ。あとはヴァンがどんなふうに生きてきたか知りたいと思ったわ。それと、デートスポットとされる場所もあるみたいだから、折角だからそこも……ヴァンと行ってみたいわ」

 ナディアはヴァンがどれだけ生きてきたか知りたいと思った。ヴァンへの思いを自覚したからこそ、ヴァンの事が大切だと思うからこそ——ヴァンの事を知りたいと思った。

 何処に行きたいか考えた時に、一番にその想いが沸いてきたのだ。

「うん」

「私ね、ヴァンが私の事を沢山知ってくれている事は嬉しいのだけど、私もヴァンの事、もっと知りたいの。ヴァンの事を、一番知っているのが私である方が嬉しいの」

「ナディア……」

「もちろん……召喚獣たちからヴァンの事を聞くことは出来るけど、私は出来たらヴァン自身から、ヴァンの事を教えて欲しい。そして、ヴァンと一緒に居るからこそわかる事を知っていきたいの」

「……うん。なら、俺の実家とか、色々案内する。俺も、ナディアに俺の事を知ってほしい」

「ふふ、なら、そうしましょう。ヴァンとのデート、楽しみだわ」

「うん、俺も」

 ヴァンはナディアの提案に嬉しそうに笑った。

 ヴァンはナディアの言葉が嬉しかった。ナディアが自分の側にいてくれること、ナディアが自分を知りたいと思っていてくれていること、そのすべてがヴァンにとって幸福だった。



 ―――デートでどこに行くかについて

 (第三王女と少年は会話を交わす。外交のこと、そして何処にデートに向かうのこと)



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