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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第七章 王都で起こる出来事

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182/272

162.突入について 4

 《イエロードラゴン》のクスラカン、《スカイウルフ》のルフの二匹はヴァンに命令されるままに少女へと向かっていく。その少女はその突然現れた二匹の召喚獣に一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに対応をする。

 少女は、召喚獣やヴァンにとびかかられてもまだ倒れない。それは異常とも言えることだった。その少女は、召喚獣やヴァンとやり合うことが出来るだけの強さを持ち合わせているということ。ヴァン自身、中々倒れない敵というのにあまり遭遇したことがないのもあって驚いた顔をしている。

 だが、そのやばい少女を前に、ヴァンは慌てることは一切ない。ただ、目の前の少女を殺すことだけを考えている。クスラカンとルフに少女を追い詰めることを命令する。そして自身も少女へととびかかる。

 少女は何度も何度も、その攻撃をかわす。そのスピードは素早く、少しだけかすったぐらいでは少女はびくともしない。ならば、どうするか、と考えたところで攻撃するしか手はない。

(思いっきり魔法叩き込めばどうにかなるか?)

 ヴァンは魔法を叩き込むことだけを考えていた。どれだけ丈夫であろうとも、魔法を叩き込めばどうにかなるだろうと思っていた。そんなわけで、クスラカンとルフが追い詰めていっている間に、少女に魔法を叩き込むために神経を尖らせる。また吹き飛ばされていたキノノも立ち上がり参戦している。そんな中でヴァンは大きな炎の塊をその少女へと叩き込んだ。

 ―――驚くべきことにそれを叩き込んでも少女はまだ姿を保ったままであった。死んではいない。だけれども、その身は倒れ伏せた。

「まだ、死んでないか」

 そうつぶやいたヴァンは、倒れ伏して身動きもとれない少女のことを殺す気満々であった。これだけ強い力を持った危険な敵を殺すことにヴァンは躊躇いはなかった。

 だけど、それを止めたのはフロノスだった。

「ヴァン、待って」

「どうして止めるの、フロノス姉」

 フロノスはヴァンが少女とやりあっている間、男たちをとらえて少女について問い詰めていた。そして少女がどういう存在であるか知ったからこそ止めた。

「この子、魔物と人間の合成獣という話なの。幼い子供を合成した。そしていう事を聞かせるために枷をつけ、洗脳をした。そしてこの子を使って人さらいをしていたようだけど……この子、何も分からず利用され、合成獣にされているだけだわ。そんな存在を殺すのはどうかと思うの」

「でも、危険だよ、フロノス姉」

「危険なのはわかるわ。でも———殺すのはどうかと思うの。それにこんな自分自身には罪がない子を殺すのはナディア様も悲しむと思うわ」

「んー、そう?」

「そうよ、ナディア様は優しい王女様だもの。それにヴァンならこの子が暴走してもどうにでもできるでしょう?」

「まぁ、出来るといえば出来るけど……じゃあフロノス姉がそこまでいうなら殺すのはやめる。けど、本当に危険なら後で殺す」

「ええ、それでいいわ」

 話がまとまったところで、ヴァンは倒れ伏せて起き上がらない少女のことも魔法で拘束し、とらえている男たちも魔法で連れながらこの施設の重要資料などをフロノスと共に集めていく。

 それが終われば、施設の外に出て人質たちがスエンの手によって助け出されていることを確認するとその施設を魔法を使って粉々に破壊するのであった。人質になっていたものたちは、人質にされていた時よりもヴァンが建物を破壊する姿を見た時の方が恐ろしかったとか。


 さて、そういうわけで王宮騎士団や魔法師たちが駆けつけた時にはすべてが終わっていたのであった。




 それからヴァンとフロノスはディグに「何を勝手にやらかしているんだ」という注意を受けたものの、誘拐の犯人たちを割出し、即急に解決したことについては褒められていた。そして、あの少女であるが————、

「初めて、負けた。凄い」

 と目が覚めてすぐにヴァンのことをキラキラした目で見ていた。魔物と合成されているというのもあって、魔物としての本能も強いのだろう自分より強い存在ということでヴァンに従うことを決めたらしく想像よりもおとなしかった。念のため少女が勝手なことをしないような魔法具も作ったが、それも躊躇うことなく少女はつけた。

 そして少女には名前がなかった。

「……化け物、呼んでた」

 と少女はいっていたので、誰もが少女を化け物としか呼んでいなかったことがうかがえた。

 ヴァンとフロノスが名づけを頼まれていたのだが、

「面倒だからフロノス姉が決めて」

 といって放棄したので、フロノスが少女の名前を決めた。

「……じゃあ、貴方はスノウ」

「私、スノウ?」

「ええ。スノウよ」

 フロノスがそういえば、少女——スノウは自分に個体名が出来たのが嬉しいのか、笑みを零したのであった。




 ――――突入について 4

 (そうして魔物と人間の合成獣の少女は、ガラス職人の息子とその姉弟子の側にいることになった)




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