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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第七章 王都で起こる出来事

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161.突入について 3

 スエンがとらえられている者達を助けている間、ヴァンはキノノ、フロノス、ミィレイアと共に好き勝手にしていた。施設の中が慌ただしい中で、ヴァンは相変わらずぶれることなくさっさと始末したり、とらえたりしてしまっている。

 一切躊躇いのない手際にフロノスは何とも言えない気持ちになる。ヴァンは目的のためには一切躊躇うことがない。ただ自分が思うままに動いている。その心はナディアのことしか考えていない。

 施設の者達は、慌てふためいて降伏するものが多かったが、中にはヴァンに向かってくる者たちもいた。その中の一人が一つのことを言い放った。

「おい、化け物!」

 何かを呼ぶ声。化け物と、その施設のものは告げる。その”化け物”と呼ばれる存在がいればヴァンたちがいても脅威ではないという口ぶり。その言葉を聞いてフロノスは顔をこわばらせているが、ヴァンは相変わらずその”化け物”のことを気にしている様子はない。

 ”化け物”という言葉を聞いて、ヴァンにとらえられて魔法で連行されている男たちもこれで助かるといわんばかりの様子である。

 そして”化け物”と呼ばれたモノが姿を現す。

 それは、一人の少女と形容するのが一番しっくりくるような見た目をしている。だけど、普通とは異なっている。

 フロノスは、”化け物”というからには以前あの水中施設の時に見たような色々な魔物の混ざり合った存在なのかと思っていた。見るからに化け物としか形容の出来ない存在だと。だけど—―――違った。

 白い髪の少女。だけど普通の人間とは異なる。耳が生えている。―――人間の物ではない耳が。しかも、左右が異なる。フロノスたちから見て、右耳は犬の耳、左耳は熊の耳。片目は人間のそれとはことなる歪な形をしている。どこか爬虫類を思わせるような目だ。そして手には水かきがついていて、尻尾のようなものが床にまでのびている。その尾は、爬虫類のものだろうか鱗がびっしりとついている。そして何も靴を履いていない足は、毛でおおわれていて、鋭い爪が見える。

 色々なものが混ざった異形の化け物ではなく、様々な要素が混ざった人の少女。

「おい、化け物! こいつらを始末しろ!」

「始末、する」

 たどたどしい言葉で、少女は返事を返す。その存在は男の命令を聞くことにためらいがないようだ。

 その少女は跳躍した。ヴァンの元へととびかかってくる。すぐ近くにいるフロノスは動けない。フロノスが反応さえもできないスピードだった。だけど、ヴァンは動いた。

 瞬時に魔法を構築し、その障壁によって少女は跳ね返される。少女は不思議そうな顔をしている。今までとびかかった際に相手が生きていることがなかったのだろう。生きているということに不思議を感じているようである。

「いき、てる?」

「いいから、やれ!!」

 ヴァンがまだ生きている、という事実に施設の男が叫ぶ。その叫び声に少女ははっとなって、またヴァンへととびかかった。

主様あるじさま、わたくしがやりますわ』

 だけど、今度はヴァンにさえたどり着けない。狐の姿をしたキノノが間に入る。召喚獣であるキノノと、異形の姿を持つ少女が向かい合う。その戦いはヴァンが想像していたよりも、互角だった。いや、寧ろ、キノノが押されているようにも見えた。

「んー?」

 少女はキノノが倒れないのを見るとまた不思議そうな顔をして、次の瞬間姿が消えた。キノノが驚いて止まる。その次の瞬間、キノノが吹き飛ぶ。

 吹き飛んで壁にぶつかるキノノ。その後、ヴァンも吹き飛ばされそうになる。が、魔法を使ってとどまる。

(いないのに、いるってことか。レイと一緒か。《クレイジーカメレオン》と同じような能力。でもどうにかなるだろう)

 魔力を体の周りにまとわせる。そして魔力で少女が居る場所を探って、すぐさま場所を特定すると即座に動く。

 向かってきた少女を風の魔法を使って跳ね飛ばす。姿が見えなかった少女がその衝撃により姿を現す。少女は、不思議そうな顔をしている。どうして攻撃が通じないのだろう、どうして目の前でまだ生きているのだろうという表情。そんな不思議な表情をしている少女にヴァンは追撃をする。

 現れたのは水の球。それを次々と少女へとぶつけていく。少女は次々に迫りくる魔法に建物を壊しながらもなるべく避けようとする。だけど全てが避けられるわけがない。いくつもの魔法があたる。だけど普通ならばそれで倒れるはずなのに、少女は倒れることはない。

「ふぅん」

 中々倒れないのを見てヴァンは、次の行動を起こす。召喚獣を呼び起こす。《イエロードラゴン》のクスラカンと《スカイウルフ》のルフだ。

 突然呼び出された二匹に、ヴァンは少女への追撃を命令するのだった。



 ――――突入について 3

 (突入した先にいたのは、不思議な姿をした少女だった)


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