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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第七章 王都で起こる出来事

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155.貴族から娘を薦められることについて

 ヴァンはその日、パーティーに参加していた。それは、ナディアの側にいるのに相応しくなるためにも含めて交流関係を一生懸命深めようとしている。ナディアの友人の捜索は相変わらず続けられているが、まだ手がかりは見つけられていない。

 ヴァンはそのことに対して早く見つけたいと思っているが、現状中々手がかりは見つかっていない。相手側に動きは今の所ない。

「……ヴァン、もう少し愛想をよくしたらどう?」

「んー、別に俺は普通の表情していると思うけど」

「ナディア様に向けるのの十分の一ぐらいでも愛想を向けたらいいのにと思っているだけよ」

 フロノスの言葉にヴァンは良くわからない、といった顔をする。それに対してフロノスはやれやれといった態度だ。ただ、ヴァンは圧倒的な才能があるので、そうやって自分勝手に生きていてもどうにでも出来る気もするが、少しでも愛想をよくしたほうが色々と動きやすいと思ってならないフロノスである。

(でもまぁ、ディグ様ヴァンがそういうのをやらない分、私がもっと貴族づき合いきちんとしておこうかな。私はディグ様やヴァンほど、才能なんてものはない。ヴァンっていう才能の塊を前に、自分が才能があるなんて思えない。―――だからこそ、私はディグ様の弟子であり、ヴァンの姉弟子であるのに相応しくあるように、頑張りたいもの)

 才能——そんなものはない、とフロノスは自分のことを称する。一般的に見れば、フロノスは才能を持ち合わせているけれども、圧倒的な才能を前に、自分の才能なんてちっぽけだと思ってならないのだ。

 だからこそ、ディグやヴァンがやらない分、自分がやろうと思っているのだ。要はフロノスは真面目なのである。ディグやヴァンが割と適当に考えているのに対し、フロノスは真面目に貴族達とも向き合うのである。

 さて、そんなわけでヴァンはパーティーで不機嫌そうな顔をしていた。今日はナディアも参加していないパーティーなので、ヴァンはやる気が全くなかった。この場にナディアがいれば、すぐに笑顔を見せるだろうが、今はナディアがいないのでヴァンは基本的に無関心な表情をしている。

 そんな不機嫌そうなヴァンの元にも人は寄ってくる。それはヴァンが、ディグ・マラナラの弟子という有望株であるからである。王がヴァンとナディアを結婚させようとしていることは少しずつ広まっているけれども、それでも自分の娘の方が——と考えているものは少なからずいる。王女であるとはいえ、今までひっそりと生きてきた第三王女であるナディア・カインズよりも、自分の娘の方が———と、そんな風に野心を持っているのである。

 だからこそ、ヴァンに向かって、娘を紹介するものが幾人かいる。

「これが私の娘である——」

「私の娘と是非仲良くしてくれたまえ」

「私の娘は———」

 そんな風に熱心に薦められているが、ヴァンは一切関心がないというか、話しかけられている中身をちゃんと聞いていないというのが正しいだろうか。適当に返事を交わしてばかりだ。ヴァンの脳内では、ナディアはどうしているかなとか、ナディアに会いたいとかそういう思いしか溢れていない。心あらずといったヴァンの様子に、隣に控えているフロノスは内心呆れていた。

 そしてヴァンがパーティーの場で不用心な一言などを言わないように監視しているわけだが、現状ヴァンは問題になるようは発言はしていないのでフロノスはほっとしていた。

「ヴァン様、私と仲良くしましょう!」

 相手にされていないというのに、未来の英雄ともいえるヴァンに気に入られたいと思っているのか、親に紹介された後に無理やりヴァンに近づこうとした少女もいた。しかし、手を伸ばせばすぐに避けられていた。

「ヴァン様、どうしてよけるのかしら?」

「触られたくないから」

 今の所、問題のある発言をしていないと安心していたフロノスであったが、その発言にあー…という気持ちになる。ばっさりと拒絶の意志を向けられた令嬢は固まっているし、その親は強張った顔をしている。

「さ、触られたくないって」

「あんまり人に触られるの好きではないので」

 そんな風にバッサリ言われて令嬢はショックを受けたような顔をして引っ込んでいった。社交界でもきちんと対処できるようになった方がナディアのためになるといわれたのもあって敬語はかろうじて使っているが、もう少しどうにかならないものかとフロノスは思った。

 結局何人もの貴族たちがヴァンとフロノスに接触してきたが、ヴァンは愛想が良いとは言えない態度を見せていたのだった。

 パーティーが終わった後に、フロノスは「ヴァンはもう少し色々学んだ方がいいわ」といわれるのだが、ヴァンは相変わらずいまいちわかっていない様子だった。



 ――――貴族から娘を薦められることについて

 (ガラス職人の息子は相変わらず第三王女以外には興味を示さない)




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