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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第七章 王都で起こる出来事

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153.第三王女様からの頼みについて

「ヴァン!!」

 その日は、ヴァンとフロノスが王都内で人が消えている問題を聞いて数日たったある日のことだった。

 カインズ王国の第三王女であるナディア・カインズが慌てた様子でヴァンの元を訪れた。その顔色は青く、その表情を見た瞬間ヴァンはナディアと共にその場に入ってきた自らの召喚獣たちを一瞬睨みつけた。

 《ファイヤーバード》のフィア、《ブラックキャット》のクラ、《ファンシーモモンガ》のモモは体をびくと震わせた。ヴァンはナディアが青ざめていることに、ちゃんと守っていなかったのかという思いを込めて一瞬睨んだのであった。相変わらず自分の召喚獣に厳しい、というかナディア以外には厳しいヴァンである。

『主、睨まないでくれよ! ナディア様は大丈夫だよ!』

「じゃあなんでナディアは――」

「ヴァン、フィアの言うとおりなのです。私は大丈夫なの。ただ―――」

 ナディアは悲しそうな顔をしたまま、続ける。

「イクノが……行方不明になったのですわ」

「イクノって、ナディアの友人になった?」

「ええ……」

 ナディアはそういって目を伏せる。

 ナディアが悲しそうな表情をしているのは、友人であるイクノ・オーランが行方不明になったからである。ナディアも王都内の噂に気を配っていたのもあって、行方不明者が多数現れている事を知っている。それでいて未だに行方不明になったものたちが見つかっていないことも把握していた。

 だからこそ、不安で、ナディアはヴァンの元までやってきた。

「ヴァン……ヴァンも、その問題を片づけるために動いていると聞きました」

「うん」

「私の……私の、友人を助けてくれないかしら。お願い、ヴァン……私はイクノに何かあったらと思うと……」

 ナディアはそういって、その赤い瞳に雫をためて、今にも泣きだしそうだ。王女として、基本的に感情を顕にしないように教育を受けている。だから本当に心を許しているものの前でしか王侯貴族は表情を崩さない。

 ナディアがこれだけ取り乱した様子をヴァンの前で見せているというのは、それだけヴァンに対して心を許しているという証なのである。

「ナディア、泣かないで」

 ヴァンはハンカチでナディアの涙をぬぐう。泣かないでとそんな風にやさしい声を発して。

「ナディアの友達は俺が絶対に助けるから。だから安心して。俺がナディアを泣かせる存在なんて全て排除するから」

「ヴァン……」

 ヴァンはナディアに対して何処までも優しい声を発している。このようなヴァンはやはりナディアの前でしか見れないとその場にいる召喚獣たちは思ってならない。そもそもヴァンは基本的に他人に対して興味がなさすぎるので、人にこんなにやさしくすることはまずない。

(ナディアが泣いている。友人が誘拐されたからって。ナディアが泣いているの、俺嫌だ。ナディアを泣かせる奴は許さない。ナディアには笑っててほしい。誘拐事件、解決させなきゃ。ナディアが笑えるように。それにしてもナディアの事を泣かせるなんて誘拐犯絶対許さない)

 ヴァン、ナディアがナディアがとしか心の中でナディアのことしか考えていなかった。ナディアに対して安心させるように笑いながらも、ヴァンは心の中で誘拐犯に対して殺意を覚えていた。

 ヴァンにとってナディアが第一なので、ナディアを泣かせる存在は許せないのである。


 ナディアはヴァンに慰められて、自分の部屋へと戻って行った。


 その後ろ姿を見送ってから、ヴァンは召喚獣たちを何匹か召喚させて、すぐに命令をする。

「ナディアの友人の場所を探し出せ」

 ナディアに向けていた声とは正反対の冷たい声だ。本当はヴァン自身も飛び出していきたかったのだが、それはディグにきちんと告げてからすべきだろうと学んでいたのでその場でヴァンは飛び出していかなかった。

 ヴァンが明らかに怒っている様子を目の当たりにしてヴァンと契約をしている召喚獣たちは寧ろ誘拐犯たちの方へと同情していた。

『つーか、本当主ってナディア様が泣いていただけでこれだから、ナディア様自身が大変な目にあったら本当どうなるんだろうか……』

 と、フィアが思わずつぶやいてしまうほどに、ヴァンはナディアが悲しんでいて、泣いていたという事実だけで心を荒ぶらせていたのだった。

 その後、ヴァンは師であるディグの元へと向かって、ナディアの友人がさらわれたことを告げる。そして召喚獣たちを放ったことも告げた。自分もナディアの友人を探すとヴァンがいえば、「一人で行くのもなにか起こると大変だから明日フロノスを連れて一緒に行って来い」と言われた。そのため、ヴァン自身は翌日に王都内を見て回ることになったのである。



 ――――第三王女様からの頼みについて

 (少年の愛しい王女様は、友人がさらわれてしまったと涙を流す。その涙を見た少年が動かないわけもなく、少年は怒りを胸に動き出す)



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