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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第七章 王都で起こる出来事

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147.王都での噂について

 王都では常々様々な噂が流れている。

 その中には、もちろんヴァンの噂も多く流れている。

 『火炎の魔法師』ディグ・マラナラの弟子であるヴァンは、元々弟子になった当初から有名な存在だった。それから様々なことを起こしているのもあり、今でも王都ではヴァンのことが沢山噂されている。

 それとは別に、王都を騒がせている噂がある。

 それは、若い娘が姿を消している、ということ。

 一人、二人、三人―――……本当に少しずつ、姿をくらませている。確かにその事実が存在している。家出なのではないか、などといった意見もあるが、確かに若い娘が姿を消してしまっていることは事実だった。

 「五丁目のパン屋さんの娘さんが――」

 「まぁ、そうなの? 恐ろしいわ」

 「駆け落ちとかではなくて?」

 井戸端会議が、王都に住まう奥様側の間でされている。その井戸端会議の中には、ヴァンの母親の姿もあった。息子であるヴァンが英雄の弟子という立場になって、近所づきあいにも少なからず影響されていたが、ヴァンの母親はご近所さんたちとそれまでと変わらないように話せるように努力した結果仲良くしているのである。

 「うちは娘はいないから安心だけれども……不安だわ」

 「まさか、人さらいとか?」

 「それは恐ろしいわ。でも、ここは王都よ?」

 と、王都の奥様方が言うのも、王都というのは王宮に仕えている騎士団が警備を行っており、治安は国内でも最も良いとされている場所だ。そのような場所で人さらいなどが起こるのだろうか。

 確かに治安の悪い地域では、人さらいが起こることもある。しかし、ここは王都である。

 「まさか、警備の目を掻い潜って人さらいが横行しているとでもいうの? そんなことあったら――……」

 「そこのところ、ヴァン様から何か聞いてたりしない?」

 視線が、ヴァンの母親へと向く。

 このご近所の奥様方も、ヴァンが『火炎の魔法師』ディグ・マラナラの弟子になる前はヴァンのことを呼び捨てにしていたものだが、すっかり様付で呼ぶようになっていた。その事実にヴァンの母親は内心苦笑しながらも、答える。

 「ヴァンはあまり実家には帰ってこないもの。聞いてないの」

 ヴァンは実際に中々実家に足を踏み入れようとしない。ヴァンは両親のことを大切に思っていないわけではないが、それよりもナディアの隣に居たいと望んでいる。というより、基本的に言えばナディア以外に関心がないので、他はどうでもいいので実家にさえも足を踏み入れないのであった。代わりにヴァンの召喚獣たちが今もヴァンの母親の側にいるわけだが、皆気づいていない。

 (ヴァンの召喚獣に聞いたら何かわかるかもしれないけれど……)

 という、ヴァンの母親の内心は井戸端会議している奥様方には伝えられない言葉である。

 「確かに全然帰ってきてないね。ビッカちゃんが悲しんでいたわ」

 「ビッカちゃん、ヴァン様に会いたいっていって追い返されてたんでしょ?」

 また、ビッカのことはこのあたりでは知られている話であった。というのもビッカがヴァンが相手にしてくれないと嘆いていたのは、近所には知られてしまっている。

 「そうね……」

 ヴァンの母親は正直、王女様に好意を寄せていようが昔からの仲であるビッカにぐらいもう少し優しくすればいいのにと思ってしまう。だが、ビッカへの態度や王女様を好いているという事実を知っている身としてみれば、ヴァンがビッカに優しくはしないだろうと思ってしまう。どうでもいいとさえ思っているのかもしれない、と。

 (……王都で若い娘が狙われているというのが事件性があるものだとしたら、ビッカも危険かもしれない。それに王都にいる若い女性だと、貴族様方だって含まれる。正直人さらいとかではなく、ただの家出とかの方がいいのだけど)

 そんな風にヴァンの母親は思考する。身近で起こっている問題に事件性がなければいいと思うのは当然のことである。だからこそ、人さらいではなく、ただの家出であればどんなに良いかと思う。

 「―――そういえば、聞きました?」

 「ええ。それもきいたの。そうそう、凄い噂よね」

 そして、話題は別のものへと変わっていく。彼女たちの会話は、すぐに話が変わっていくものである。王都から姿を消している若い女性たちの話題から、別の好奇心を満たす話題へと変わっていく。

 そして彼女たちの頭から、若い女性が姿を消しているという情報は一旦なくなっていく。




 ―――しかし、その数日後に、また王都の中から人が一人消えた。



 ――――王都での噂について

 (王都では噂が流れている。人が消えていると。そしてそれが人さらいなのではないかと。そしてまた、王都から一人、姿を消していった)



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