表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第六章 《雷鳴の騎士》とその弟子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/272

143.第一王女様とザウドックについて 3

フェール・カインズは駆けていた。

 何が何だか分からないままに、駆けていた。

 (私を、好き? 『雷鳴の騎士』の弟子が? 私なんかを? え?)

 フェール、混乱中。

 混乱しているフェールは、「あ、フェールお姉様!!」と声を上げたキリマに捕まった。様子のおかしいフェールを見て、目をキラキラさせている。

 「キ、キリマ」

 「ふふふふ、フェールお姉様可愛いー。すごい戸惑っている! ねぇ、ザウドックに告白でもされちゃった? 愛の告白? きゃー!! いいな、いいな、私も、ディグ様に告白されたいよー」

 キリマ、人の恋話とかが大好きなので、凄く興奮していた。王女としてのつつしみなどは一切放り投げているキリマであった。普段はそんなキリマをとがめるフェールにはそんな余裕はなかった。

 「あ、貴方……し、知っていたの」

 「ええ、ええ知ってますとも。寧ろ、気づかないフェールお姉様が鈍感なんですもの」

 キリマ、にこにこしている。

 フェール、唖然としている。

 「ど、鈍感って……私は、そんな英雄の弟子に、好かれるほどの人間じゃないわよ……」

 「もうー、フェールお姉様ってばそんなこといって。それを決めるのはフェールお姉様じゃなくて、ザウドックなんだからねー。それにフェールお姉様はとっても綺麗だし。確かにフェールお姉様はあの件が起きるまでアレだったけれど、フェールお姉様は今は私の自慢のお姉様だし」

 キリマ、そんなことを言いながら珍しく戸惑った表情を浮かべているフェールを見る。

 キリマはにこにこしている。楽しくて仕方がなさそうに笑っている。フェールは、顔を赤くしている。

 「……私、そんな、自慢できるような、姉じゃないわ」

 「ううん。自慢出来るお姉様だわ。それにザウドックはフェールお姉様のこと本当に気にしているのよ? 見た瞬間にこう、あれは一目ぼれってやつじゃないの?」

 キリマ、顔を赤くしたフェールをじっと見つめて告げる。

 (ふふふ、フェールお姉様、本当に可愛い。ザウドックのことフェールお姉様も嫌いではないみたいだし、このまま、くっついたらいいのになぁ。でもあれ、フェールお姉様難しい顔している)

 キリマの言葉に、フェールは難しい顔をしていた。キリマとしてみれば、違う反応を期待していた。そのため、ちょっとびっくりしていた。

 「一目ぼれ……か」

 「ええ……た、多分。なんでフェールお姉様はそんなに難しい顔をしているの?」

 「………ちょっと、考えているだけよ」

 フェールは難しい顔をしたままだ。キリマにはフェールが何を考えているか分からない。英雄の弟子に好意を抱かれている、それを素直によろこべばいいとそんな風にキリマは考えてしまう。

 キリマは素直に人の言葉や、思いをそのまま受け取る。

 キリマは好きだといわれたら、そのまま受け止めている。難しいことは考えない。だけど、フェールは、第一王女であるフェール・カインズの頭はそんなに単純ではない。

 (……私を好いている。『雷鳴の騎士』の弟子が。でもそれは……。私は……。私は、カインズ王国の第一王女、フェール・カインズ。誇りある国の王女。そして私を好いてくれるのは、『雷鳴の騎士』の弟子。……多分、英雄になるのかもしれない、なら、私はどうこたえるべきなのか。私はどうするべきなのか)

 フェール・カインズは思考する。

 キリマが、戸惑った様子で見つめているのも、「フェールお姉様、どうしたの」と聞いているのも気にする余裕がないのか、答えない。

 (―――私は、どうしたいのか。どうするべきなのか)

 フェールは、何度も、何度もそのことを考えている。どうしたほうがいいのか、どうしたいのか。

 (……嬉しくない、わけじゃない。私は人に好かれるのは、正直嬉しい。こんな私でも好いてもらえることは嬉しい。……そう思う。だけど、私は———)

 嬉しいと感じているのは確かだ。

 誰かに好かれることが、嬉しくないはずがない。だけれども、フェールは、それを素直には受け入れない。彼女は、自分がどうしたいか、どう思っているか、それを思い至った。

 好いているといわれて、何と答えたら自分は納得するのかをちゃんと考えた。

 「―――キリマ」

 「ああ、フェールお姉様、ようやく私のこと無視やめてくれたのね!! 考えすぎちゃってたけど、どうするか決めたの? ねぇ、フェールお姉様」

 「……そうね。ちょっとザウドックの所にいってくるわ」

 「まぁ!!」

 「でも、キリマ、貴方が望むような展開にはきっとならないわよ」

 「え、それってどういう……」

 フェールが言った言葉に、キリマが目を見開く。だけど、それに対してフェールはただ笑うだけで答えず、そのまま、その場を後にするのであった。




 ――――第一王女様とザウドックについて 3

 (第一王女様は、第二王女様と会話を交わし、そしてある結論に至って、ザウドックの元へと向かった)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ