表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第六章 《雷鳴の騎士》とその弟子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/272

131.『火炎の魔法師』と『雷鳴の騎士』の弟子同士の模擬戦について 1

 「今からお前にはこのディグの弟子と模擬戦をしてもらう」

 ザウドック・ミッドアイラスは師である『雷鳴の騎士』ルクシオウス・ミッドアイスラの言葉に、驚いたような顔をする。それでいて少しだけ不安そうな顔をする。

 「何を不安そうな顔をしてやがる。お前は、俺の弟子だろう? もっと堂々としていろ」

 「いや、だってよ。ルクシオウス。あいつの噂すげーじゃんか……」

 「はぁ、噂が幾ら凄かろうと、本当にあの弟子がそれだけやったとしてもだ。それでもこれは模擬戦だ。殺し合いでもないんだから強い敵と戦えるっていうことを良い経験だと思えばいいだろ」

 ルクシオウスは少しだけビビっている様子の自分の弟子に対してそう告げた。

 「び、びびってなんかないし」

 「びびっているだろうが……ま、ディグの奴はあの弟子によっぽど自信があるらしい。ヴァンは召喚獣を持っているらしいが、お前との模擬戦には使わせないだとよ。そこまで、言われてんだ。お前は、ヴァンに召喚獣を使わせることを目指せ」

 ルクシオウスは、ディグの言葉を思い出しながらザウドックへとそう告げた。

 ルクシオウスからしてみれば、自分の弟子のことを過小評価されていると感じてならなかった。同年代であるのならば、引けを取らないはずだと思っている。

 それは、一般的に見てみれば正しい感覚である。

 『火炎の魔法師』の弟子と、『雷鳴の騎士』の弟子。

 互いに英雄の弟子であり、対等であると言える存在同士だからこそなおさらその差は少ないはずだ。

 ……と、そう思っていても仕方がないことなのだ。

 尤も現実的に考えてみれば、ヴァンはディグ・マラナラにしてみてもありえないと言わしめる存在である。そんな存在と、英雄の弟子であるだけの少年を比べてみると対等とは言えないだろう。

 

 さて、そうして『火炎の魔法師』と『雷鳴の騎士』の弟子の模擬戦は幕を開ける。




 「絶対に召喚獣を使わせてやるからな!」

 「俺、師匠によっぽどじゃないと召喚獣呼ばないように言われているし」

 やる気に満ちたザウドックに対し、ヴァンのやる気はそれほど高くなかった。

 というのも、

 (ナディアに会いたい)

 などという思いが占めていたからだ。

 ヴァンは本当にぶれない性格をしていて、こういう時でもナディアのことしか考えていなかった。

 そして、早く終わらせたいとさえ考えていた。

 ヴァンはまだ、ザウドックに興味をそれほどもてていなかった。この模擬戦に関しても、それほどの関心はない。

 「くそっ、余裕そうで超ムカつく。その余裕そうな顔くずしてやる!」

 ザウドックはそういうと、腰に下げていた剣の柄に手をかけた。抜かれたものには、剣先がなかった。ただの、柄。

 それにはヴァンも驚いて、不思議そうな顔をザウドックに向ける。

 フロノスは、その様子を師たちと共に見つめながら思考する。

 (『雷鳴の騎士』ルクシオウス・ミッドアイスラ。ディグ様のライバルとも言える、英雄。ヴァンは特に周りに興味もなく、『雷鳴の騎士』の名の意味するところを、把握はしていない)

 フロノスは、そう結論付ける。

 『雷鳴の騎士』。その名の意味することを、ヴァンは把握などしていない。

 (……ルクシオウス様が弟子と認め、ディグ様に会わせるような存在。ただの子供なわけがない)

 そう思考し、じっと、勝負の行く末を見つめるフロノスの前で、その現象は生まれた。何もなかった剣先がバチバチと震える。魔法を使えるものならば、そこに魔力が通っているのが一目でわかるだろう。柄だけだった使い物にならないものはそこにはない。雷属性の魔力の剣先を持つ、力を持つ剣が生まれていた。

 (――――剣に魔力を込めるではなく、魔力そのものを剣とする。それはすなわち魔法剣。ルクシオウス様とディグ様は確かにライバルとされている。だけど、二人には得意不得意がある。ルクシオウス様が用いるのはその剣技と、その剣技を生かすための魔法。ルクシオウス様の呼ばれる名が、『魔法師』ではなく、『騎士』であるのは、そういう戦い方をルクシオウス様がするからだ)

 思考する。

 視線の先で、フロノスにはヴァンが少しだけザウドックに興味を抱いたのが分かった。

 (同じ年ほどの、男の子がルクシオウス様の技術を受け継いでいる……。私も……、ディグ様の弟子として負けてなどいられないわ。もっと、もっと、強く———ならなきゃならない)

 フロノスは、弟弟子と、『雷鳴の騎士』の弟子を見ながら、そんな思考に陥っている。

 そんなフロノスの目の前で、『火炎の魔法師』の弟子と『雷鳴の騎士』の弟子がぶつかり合うのであった。






 ――――『火炎の魔法師』と『雷鳴の騎士』の弟子同士の模擬戦について 1

 (そうして『火炎の魔法師』と『雷鳴の騎士』の弟子は、模擬戦を開始するのであった)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ