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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
番外編 4

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ヴァンの幼馴染の少女は嘆いている。

 「ヴァンが……どうして」

 一人の少女が、自室の中で嘆いている。その少女の名はビッカ。

 『火炎の魔法師』と呼ばれる英雄の弟子になった少年、ヴァンの幼馴染である少女。

 ヴァンとビッカは幼い頃からの付き合いである。ヴァンは中々人の輪に入ろうとしない少し変わった子供であった。

 そんなヴァンに構い、ヴァンと近所の子供たちをつないだのはビッカといえよう。ビッカはヴァンは自分が居ないと駄目な幼馴染の少年という認識であり、淡い気持ちを抱いていた。そもそも客観的に見てみて、ヴァンと親しい少女はビッカしかいなかった。ヴァンの両親にもヴァンをよろしく頼むといわれていて、いずれヴァンと自分は結婚するのだと思い込んでいた。

 ……まぁ、ヴァンとしてみてもナディアの事が好きで、ナディアの事を守っていたが、ディグに見つからなければナディアの前に姿を現す事もなかったわけで、その場合は普通にガラス職人を継いで、もしかしたらビッカと結婚とかも流されるままにあったかもしれないが。

 ビッカにとって、ヴァンが『火炎の魔法師』の弟子だとしても、ヴァンはヴァンである。

 噂で聞こえてくるヴァンはビッカの知らないヴァンであり、ビッカはヴァンが遠い存在になったという事を実感できずにいた。

 (お母さんもお父さんもヴァンと結婚するのかしらとニコニコ笑ってたのに、今は、ヴァンの事様付で呼んで、私が話しかけていい人じゃなくなったとかいって……。どうしてそんな。それに王宮はちかいのに、ヴァンは全然かえってこないし。王女様と仲良しだって噂聞こえてくるけど、ヴァンがそんな女の子のために動くなんて信じられないわ)

 ……実家にいた頃のヴァンしか知らないビッカからしてみれば、周りに興味を示さなかったヴァンが女の子のために動いているというのが信じられない話だった。だから第三王女が誇張しているのではないかなどといった不敬な事を考えてしまっていた。

 ヴァンがナディアの誕生日プレゼントを作るために実家に戻った際に、酷い扱いをされたというのにビッカからしてみればヴァンは自分の幼馴染で、自分はヴァンと一緒にずっと過ごすんだ! と思い込んでいた。

 (ヴァンも人前だから恥ずかしがっていただけかもしれないもの。二人であって話したら……。それに急に王宮魔法師の弟子になるなんて。召喚獣を連れていたけれど、それだって……どうして私に言ってくれなかったのかをちゃんと問い詰めなければ)

 幼馴染であるのなら、何でも教えてもらっていて当然とそうビッカは思っていた。ビッカは怒っているのだ。

 ヴァンが召喚獣と契約していることも、魔法を使えることも何も教えてもらっていないのだ。ヴァンの両親に言っていない事だって、自分にぐらい教えくれてもよかったのにとビッカは思って仕方がない。

 ヴァンにとってビッカはその他大勢の一人でしかなくても、ビッカにとってそうではないのだ。いや、そうと認めたくないだけなのかもしれない。

 (……ヴァンと話すためには、どうしたらいいんだろうか。二人で話すのならば、ヴァンだって素直に話してくれるはず。お母さんとお父さんはヴァンの傍に気安くよらないようにとか言うけど、私はヴァンと話したいし、ヴァンだって幼馴染の私が会いにいって喜ばないわけないだろうし……。それにこの前酷い態度されたのは、誰かにだまされているからかもしれないし。だって、ヴァンは割と流されやすいんだもの)

 ビッカは中途半端にヴァンを理解している少女である。

 ヴァンはあまり周りに興味を示さない。色々面倒だと思っている事に関しては周りに流されるままだったりもする。ただヴァンにとってナディア・カインズという王女様だけが特別で、ナディアの事に関してだけは妥協する事なんてありえない。

 ヴァンの優先順位なんて、ナディア、家族や尊敬できる人、……ビッカなどはその他大勢ぐらいの認識しかないのではないだろうか。おそらく師匠になっているディグや姉弟子のフロノス、あとはナディアを守る手助けをしてくれた王宮魔法師の弟子であるクアンやギルガラントよりも、ヴァンの中での順位は低いだろう。ビッカ的には自分の順位は上層部に位置するつもりである。だからこそ自分の言葉ならヴァンは動くはずだと思っていたりもする。

 (よし、王宮にいってみよう。幼馴染の私がヴァンの元へ行くのは悪い事ではないはずだわ。ヴァンは全然こちらにこないのだから、私の方から行かなければ仕方がないわ)

 さて、そんな決意をしたビッカであった。当たり前だが、王宮に平民が訪れたところでどうする事も出来ないわけだが、ビッカは自分ならばと思い込んでいるようだった。


 もちろん、王宮まで行った結果、「貴方の来訪は聞いていませんので通す事はできません」と軽くあしらわれてしまうのであった。





 ―――ヴァンの幼馴染の少女は嘆いている。

 (ビッカは、それでもヴァンへの接触をやめる気はない)




次回から、第六章【雷鳴の騎士とその弟子】になります。

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