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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

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116.不審な人影と召喚獣たちの報告について 3

 『ヴァン様、水の中、怪しい建物ある』

 『おー、ヴァン! 久しぶりに呼び出してもらえて俺様はご機嫌だぜ!!』

 『小生、この建物は怪しいと思うのであります』

 さて、湖でヴァンたちを迎えたのはヴァンの三体の召喚獣たちである。一匹は水の中から喋り、残り二匹は水面から顔を出している。

 「水の中に建物?」

 『うん。奥の方にある。怪しい』

 ヴァンが問いかければ、水の中から声が響く。それは、《ブルーフィッシュ》のギアナである。この召喚獣がヴァンが森の中で呼び出して、えら呼吸しか出来ないため危うくその場で殺してしまう所だった存在である。巨大な湖の中にすっぽり体を埋めている。この湖が気に入っているらしい。

 『出入りする入り口もあるし、絶対怪しいぜ!!』

 嬉しそうに声を上げるのは、《グリーンタートル》のリトアルだ。甲羅から首まで全てにかけて葉っぱ色をしている亀である。

 『小生、こうして久しぶりに主の力になれて嬉しいのであります』

 そう口にするのは、《アクアスネーク》という主に水中に生息する蛇の、キルンである。

 あまり呼び出されない三匹は、久しぶりに呼び出されて、契約主の力になれてとても嬉しいようだ。

 「師匠、どう思う?」

 「……明らかになんか関係あるだろう。しかし、湖の中か……」

 ディグは報告を聞いて考え込むような仕草をする。

 (……ヴァンが目撃した奴を逃がしたっていうのも、この湖の中みたいに想像が出来ない場所に逃げ道があったって事だろうし、そういうものを気づかれずに作れるって時点で厄介だし。めんどくせぇな)

 そんな風に考えながら、ディグは口を開く。

 「俺らで建物を偵察しに行くか」

 「すぐ行く?」

 「待て。一旦戻って準備をしてからがいいだろう。どういう施設であるかが分からないわけで、砦の連中にも報告をしてから動いた方がいい」

 ヴァンは見つけたものにすぐ飛び込もうとしていたが、それをディグは止める。得体のしれない異形の化け物と明らかにかかわりのある建物だ。そもそも湖の中にある時点で怪しい。

 長時間森の中を探索していたのもあって、このまま突入するより準備をしてからがいいだろうと考えたのだ。

 『わたくし、いつでも大丈夫ですわ』

 『おいらたちとご主人様なら余裕だぜ』

 「んー、師匠が戻るって言っているから一旦戻った方がいいだろ。ギアナ達はそのまま、その建物みはっといて。そして何かあったら後から教えて」

 やる気満々のニアトンとエレにヴァンはそういって、湖に居る三匹に声をかける。

 『うん。わかった』

 『俺様に任しとけ』

 『小生、承知しました』

 三匹がそれぞれ答える。


 そんな彼らの返答を聞いて、ヴァンとディグは召喚獣たちを連れて砦に戻った。




 『主様あるじさま!!』

 「……キノノ、何でここに? ナディアの事任せてたよな?」

 ヴァンたちが砦に戻った時、ナディアの警護を任せていた《ナインテイルフォックス》のキノノがそこにいたので、ヴァンは驚いた声を上げた。

 『ナディア様から誕生日プレゼントを持ってきたのですわの。当日に間に合ってよかったですわ。どうぞ』

 実はヴァンの誕生日は今日だったりする。キノノがラッピングされたプレゼントを渡せば、ヴァンは嬉しそうな顔をした。他の誰かからのプレゼントなら特に喜びもしないだろうが、ナディアからの誕生日プレゼントとなるとこの笑顔である。

 『主様あるじさまは嬉しそうで何よりですの。ではわたくしはナディア様の元へ戻りますので』

 「ああ。ナディアは大丈夫か?」

 『問題はございますが、わたくしたちがいますからどうにでもなりますわ。主様あるじさまはご安心して、勤めをこなしてくださいませ』

 「問題? 大丈夫なのか?」

 『ええ、ええ。ナディア様は一生懸命自分の手で問題を解決しようとなさっております。ナディア様も主様あるじさまのために頑張っておられます故、主様あるじさまも問題を片づけてくださいませ。ナディア様も主様あるじさまに早うお会いしたいとおっしゃっていましたの』

 「そっかぁ。俺も頑張る。頑張って片づける。ナディアにありがとうっていっといて」

 『しっかりとお伝えしますわ。では』

 キノノとヴァンはそんな会話を交わした。その後、キノノはナディアの元へと戻って行った。ちなみにこの会話は、砦の外での会話であり、聞いているものは多数いた。

 タンベルとユイマは、ヴァンが大量の召喚獣を呼び出したことにも仰天していたが、もちろんの事、この国の第三王女をナチュラルに呼び捨てにしていることにも驚いていた。それも随分親しそうな様子である。

 「……ディグ、あいつは第三王女様とどういう仲だ?」

 「友人以上恋人未満みたいな感じだな。見た感じ両想いだし」

 「王女様と、両想いですか……それは難儀な事ですね」

 上からタンベル、ディグ、ユイマの言葉だ。

 ユイマは王女様なんて政略結婚を親に決められそうな存在とそういう関係なことに何とも言えない表情だが、ディグは平然と言った。

 「いや? あいつはこの国に留めておくべきだから、ナディア様と結婚させる方がいいだろうって話で進んでるぞ。ヴァンはわかってないけどな」

 ディグがそんな爆弾発言をしたものだから、タンベルとユイマは固まった。

 そして、ヴァンはそんな会話が後方でされているのにも気づいておらず、キノノを見送った後、ナディアのために頑張ろうと気合いを入れるのであった。





 ―――不審な人影と召喚獣たちの報告について 3

 (水の中に存在する不審なもの。それは、どのように関係するのだろうか)




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