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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

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115.不審な人影と召喚獣たちの報告について 2

 「不審な人物?」

 「うん。俺から逃げていった。それで捕まえられなかったんだけど、これって、あの変な魔物と関係あると思う?」

 ヴァンは今ディグとその召喚獣である《ファイヤードラゴン》のラライの目の前に居る。

 魔力を探知してディグを見つけてすぐにこの場にやってきたのだ。

 「関係はあるだろ。砦の人間なら逃げないだろうし。だが、ヴァンと召喚獣が逃がしたっていうのがな」

 「急に消えたんだよ。俺も逃がすつもりなかったんだけど」

 「……召喚獣たちがそう簡単に逃すとは思えないんだが、それでも逃がしたとなると、何かしら抜け道でもあるのかもな」

 「抜け道?」

 「ああ。その逃げた奴が何者かはわからないけれど、召喚獣たちから逃げるなんてまず普通なら無理だろうから」

 「追いかけた先は花畑だったけど」

 「花畑ねぇ……、一回そこ行くか」

 「一応ニアトンとエレに捜索はさせているよ」

 「それって、どの召喚獣だ?」

 「《グリーンモンキー》と《ブルーマウス》」

 ディグは弟子であるヴァンの召喚獣が多すぎて、全員を把握するまで至っていないようである。それも仕方がない話であろう。二十匹も契約している召喚獣がいれば誰が誰か聞いている方は結構わからないものである。


 それからヴァンはラライとディグと共に召喚獣二匹が居る場所へと戻った。





 『ヴァン様申し訳ないですわ。あのものを見つける事が出来なかったのです。折角ヴァン様が私の力を欲して喚んでくださったというのに、なんという話なのでしょうか。私はもう凹んでしまいますの』

 『がははっ。ニアトンは凹みすぎだぜ。別に今回おいらたちが失敗したとしても次回頑張ればいいって話よ』

 花畑へと戻ったら、凹んだニアトンと特に気にした様子のないエレにヴァンたちは迎えられた。

 結局人一人消えたというのに、何処にいったのかわからなかったようだ。

 「まぁ、俺らで一回探すか。ラライもな」

 『承知』

 ディグが声をかければ、動きやすさを重視してか小型化したラライが花畑の中へと飛び込んでいった。

 「じゃあ俺らもまた探索な」

 『了解しましたわ』

 『了解だぜ』

 そんなわけで二人と三匹でまた探索が始まった。とはいっても障害物も何もない花畑での探索で、すぐに終わる。結局どこに消えたのかはわからなかった。

 「折角不審な人見つけたのに捕まえられないとか! 俺早くナディアの元帰りたいのに!」

 「いや、少なくともこれで人為的な可能性の方が高まったから十分な進歩だろ」

 「でも師匠、俺ナディアにずっとあえてない!!」

 「そうだな。でも将来的にナディア様と離れる事もあるのだから今のうちに慣れていた方がいいぞ」

 ナディアに会いたいと嘆くヴァンにディグは軽くそう言ってのける。

 (……それにしても人影か。国境付近って考えるとやっぱりシザス帝国がかかわっていると考えるのが濃厚か。それだと国際問題だし、ややこしいな)

 面倒な事だからこそ、それが解決できるようにと『火炎の魔法師』であるディグ・マラナラをこうしてこの場にやったのだろう。それは十分ディグ自身にもわかるが、他国もかかわっているような厄介ごとは面倒だとディグは思う。

 解決するのも面倒であるし、最悪の場合は解決しない可能性も考えなければならない。

 (まぁでも、ヴァンとヴァンの召喚獣たちも居るし、俺だけで来ているよりは断然楽か。フロノスもようやく召喚獣を持ったし、契約したばかりで上手く出来ないかもしれないが俺の弟子だしそれなりに動けはするだろうし)

 この場に居るのが英雄である『火炎の魔法師』ではなければ、異形の魔物の時点で救援要請をしていたかもしれないが、ディグは国際問題だろうが解決できないとは思っていなかった。

 そもそも、解決するべく任された仕事で「できません」とはなるべく言いたくもなかった。

 (異形の魔物とシザス帝国がつながっていると考えて、あの異形の魔物をどうやって生み出しているのか。シザス帝国がかかわっている証拠がつかめれば抗議する事も可能だし、原因を取り除くだけではなく証拠を集められるのが一番良いんだが)

 異形の魔物とシザス帝国がかかわっているとしたら、それはあの異形のおぞましい魔物をシザス帝国が生み出せるという事に他ならない。それを生み出せないようになるべく破壊し尽すべきだ。ただし証拠も必要である。

 (めんどくせぇな。そもそも何処でどんなふうにそれを生み出しているかわかればまた別なのだが)

 ディグは無言でただそんなことを考える。

 ヴァン達は、砦へ一旦戻ることにして向かっていた。

 そうしていれば、『湖の方で報告があるってー』と言いながら《ブラックキャット》のクラが駆け寄ってきた。

 「湖の方に何かあったの?」

 『んー、らしい』

 そんな報告をされたので、ヴァンたちは湖の方に向かうことになったのだった。






 ―――不審な人影と召喚獣たちの報告について 2

 (不審な人影には逃げられたけれど、湖の方で何かを見つけたようです)




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