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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

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90.英雄への話について

 その日、ディグ・マラナラはカインズ王国の国王であるシードル・カインズに呼びだされていた。面倒だなと思いながらも、執務室へと向かう。

 ノックをし、入室の許可をもらったので中へと足を踏み入れる。

 そこには、王であるシードル・カインズ、第一王子であるレイアード・カインズがいた。

 「呼び出して何の用でしょうか?」

 「シザス帝国との国境付近で、多くの魔物が見られているらしい。それも、見たことのないものまでだ」

 ディグの言葉に、シードルが切り出した。

 カインズ王国は、ジオランス大陸の南西部に存在する。南は豊かな海が広がっている。そしてカインズ王国に隣接する国は、三つある。それのひとつが先ほどシードルの口にしたシザス帝国である、カインズ王国の北に位置するこの帝国は、隣国とはいえ、カインズ王国とはがらりと異なる。

 シザス帝国は面積だけで言うならば、カインズ王国とあまり変わらないが、自然豊かなカインズ王国と異なり、砂漠の面積が大きい国だ。シードルの代では戦争が起こってはいないが、前王時代ではカインズ王国の地を狙ってきていたというのだから警戒は怠れない。

 カインズ王国の西に存在するトゥルイヤ王国とは五年前まで戦争を行っていたものの、今は同盟関係である。ちなみに、ディグが武勇を立てた戦争は、トゥルイヤ王国との戦争においてである。

 また、東のダーウン連合国家に関しては、昔からの同盟が長く続いており、互いの国民の行き来も多い。

 「見たことない魔物ねぇ」

 ディグはそうつぶやき、思考する。

 (召喚獣が世に現れて、史実によれば7百年ぐらいだろうか。そして異界から魔物があぶれて、この地が危険になってそれなりに魔物の研究は進んでいる。でも、異界はいまだに未知の地であるとしかいいようがない。召喚獣たちに異界の様子を聞くことが出来ても、人間が異界に行くことは出来ない。見たことがない魔物なんて実際はたくさんいるだろう)

 魔物の研究は確かに進んでいるし、魔物の図鑑も出来ている。しかしだ。それがすべてであるという保障はどこにもない。異界は未知の地でしかない。すんでいる召喚獣たちだって異界をすべて知れているわけでもない。この世界について、人がすべてを知らないように、召喚獣だって全知全能なわけはない。

 「一般人も含めて被害が出ていると言う話だ。シザス帝国との国境付近に現れたというのも気になる」

 「俺が行って、退治と調査をしてこいってことですかね」

 「そうだ。頼めるか?」

 「いいでしょう。王宮での暮らしも退屈していたところですし……。で、シザス帝国との国境っていうとポリス砦でしょうか」

 「ああ、そうだ」

 シザス帝国との国境には戦に備えた砦が存在している。それがディグの口にしたポリス砦である。

 「キリマはディグを好いているからな、怪我なぞするなよ」

 「はいはい。わかりましたよ。レイアード様」

 横から口出してきたレイアードの言葉に、ディグは適当に答える。

 そしてポリス砦に行くことに対して思案する。弟子二人をおいていくか、連れて行くか。おいていったとすればほかの王宮魔法師たちに任せることになるだろうが、連れて行くのもよい経験になるだろうとディグは考える。

 フロノスもヴァンも、実力はある。が、経験は足りない。特にヴァンは才能だけがあるが、いろいろ足りない状況である。

 (ナディア様としばらく離れなきゃってなると、あいつ嫌がるかもしれないけど。まぁ、それでも連れて行ったほうがいいだろうな。王宮においていて何かに巻き込まれる恐れもあるし)

 ヴァンは社交界デビューしたものの、貴族たちのことをまだよくわかっていないだろう。そしてあしらい方もまだわかっていないだろう。目を離した隙に、どこかの派閥にでも取り込まれていたなどといったことは、ありえないと思うが、そういう危険性もある。

 「シードル様、フロノスとヴァンも連れて行きますね」

 「そうか。そなたがそうしたいならそうするがよい。……ナディアがさびしがることは気がかりだが」

 「でもヴァンにはもっと経験が必要ですから。あいつの場合、ナディア様のためになるといえば、嫌がらないでしょうし」

 「……ヴァンの召喚獣がナディアを守っているのだろう? そのあたりは離れていても大丈夫なのだろうか?」

 「大丈夫だと思いますけど。ヴァンは何匹も一斉召喚したままにいつもしてますし。それにあの誕生日プレゼントがありますからね」

 シードルの心配に、ディグが答える。普通、ずっと召喚獣を顕現させ続けるのは魔力が足りない。が、ヴァンは普通にやっているので契約主と距離が離れていようが問題ないだろうと結論付ける。あと、この前の誕生日にヴァンがあげた誕生日プレゼント---過剰防衛であろう魔法具も身につけているわけで。召喚獣とその魔法具がある中でナディアを傷つけるなどまず出来ないだろう。

 「ディグもヴァンもいなくなるのか。なら、私は妹たちを思いっきりかわいがりーーー」

 シードルとディグの会話を聞いて、なんだかにやけているレイアード。そんなレイアードは放置されたまま、シードルとディグの会話は進んでいった。




 ------英雄への話について

 (そんなわけで、ディグ・マラナラは砦に行くことになるのでした)



 

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