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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

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89.距離を縮めた二人について

 「ヴァン」

 「なに?」

 「ふふ、呼んでみただけですわ」

 さて、ナディアの誕生日パーティーが終わり、ナディアとヴァンの仲はますます縮まったといえるだろう。

 二人でのんびりとお茶をしながら、ほほ笑みあっている。

 ナディアはヴァンの名を呼び捨てにするようになってからは、そのことがうれしいのか呼ぶ必要のない場面でもヴァンの名をうれしそうに呼んでいる。そして呼び捨てにされたヴァンはナディアがうれしそうにほほ笑んでいるのを見て幸せそうな顔をしている。

 誕生日パーティーが終わってから、ナディア様と呼ぶたびに、敬語で話しかけるたびに、直されたのもあってヴァンはナディアにため口がつかえるようになっていた。

 「そっか。じゃあナディア」

 「なんですの?」

 「……俺も、呼んでみただけ」

 ヴァンもナディアの名前を呼び捨てに出来る事が嬉しいのか、そんなことを言っている。

 ヴァンはそして、ナディアの首から下げられているものを見る。それはヴァンがナディアにあげた誕生日プレゼントだ。あの日からずっとナディアはそれを身に着けている。

 「ヴァン、どうしたの?」

 「俺があげたもの、つけててくれて嬉しいなぁって」

 「ヴァンが私のために作ったものですもの。つけないはずがありませんわ」

 ヴァンが幸せそうに笑うのを見て、ナディアも笑う。

 ナディアにとって、ヴァンが一生懸命作ってくれたものを身に着けるのは当然であった。優れた魔法具であることよりも、ヴァンが自分のために作ってくれたというのが一番重要である。

 「ヴァンの誕生日はいつなの?」

 「俺の誕生日は、ちょうど一ヵ月後」

 「そうなの? なら、楽しみにしていてくださいね」

 「プレゼントくれるの?」

 「ええ、もちろん」

 ヴァンはナディアの言葉に、笑顔をさらに深くする。ヴァンにとってみて、今の状況も、ナディアがプレゼントをくれるということもまさに夢のようなことである。

 こんなこと昔は想像も出来なかった。ディグに見つかり、そして王宮に来るようになって、こうしてナディアと笑いあえる。それだけでヴァンは幸せだった。

 ちなみに、誰も本人に知らせていないので、水面下でほぼ確定事項になっているナディアとヴァンの結婚についてはヴァンは想像もしていない。そもそも王族貴族の婚姻は早くて十三歳とかであるが、平民の結婚だともっと遅いため、ヴァンの常識の中では結婚なんてまだまだ先の話である。

 ナディアはナディアで、ヴァンが自分の言葉ひとつで幸せそうに笑うのが嬉しくてたまらない。フロノスから聞いた話では、ヴァンはナディアの前以外ではこんな風に笑わないという。そういう事実を知ると、益々ヴァンのことがかわいいなぁとナディアは思ってしまう。

 そもそも初対面の段階から、自分をいつも守ってくれる召喚獣たちの主として好感度は元々高かったのだが、益々それは高くなっている。

 『主、幸せそうだな!』

 『あれだね、バカップルってやつじゃないの、これ』

 『主様あるじさまとナディア様が仲睦まじい様子には、わたくし、嬉しく思いますわ』

 ヴァンとナディアはすっかり二人の世界に入ってしまっているが、この場には当たり前のようにヴァンの召喚獣たちが控えている。

 《ファイヤーバード》のフィア、《アイスバット》のスイ、《ナインテイルフォックス》のキノノである。

 三匹の召喚獣たちは、ヴァンとナディアの邪魔にならないように小型化した状態でこそこそと話し込んでいる。

 『主がこんなにナディア様と仲良くなれて、ナディア様を見守ってきた俺としては嬉しいぜ!』

 『フィアはナディアのそばにすっごくいたもんな』

 感慨深そうにつぶやくフィアに、スイが口を開く。ちなみにスイは契約主であるヴァンのことも呼び捨てなので、ナディアのことも呼び捨てにしているらしい。

 フィアはヴァンが契約したはじめての召喚獣であり、ずっとナディアのそばにいた存在だ。だからこそ余計に眼の前の光景が嬉しいらしい。

 『主様はナディア様以外の女性には興味がないですから、ナディア様が主様の思いを受け止めてくれそうでわたくしも大変安心しておりますわ』

 二番目にヴァンと契約を果たしたキノノもフィアと同じ思いのようだ。

 『それはいえてるな。主はナディア様以外に興味ないからなー』

 『でもヴァンもナディアも告白はしていないんだろー? てか、これで恋人でもないとか僕信じられないんだけど』

 『面白くてよろしいではないですか。わたくし、是非とも主様がナディア様にお心を伝えるその場に居合わせたいものですわ』

 三匹とも面白そうにヴァンとナディアを見ながら会話をしている。驚くべきことだが、これだけ召喚獣たちがしゃべっているというのに二人は二人の世界に入り込んでいてこちらを気にしていない。

 『それは俺も見たい』

 『フィアはいつもナディアの警護係みたいなもんだから見れるだろう。僕も見たい』

 『わたくしもみたいですわ。これは、ナディア様の警護係争奪戦にでもなりそうですわねぇ』

 召喚獣たちは、距離の縮まった二人を前にとても楽しそうである。




 ----距離を縮めた二人について

 (距離を縮めた二人は二人の世界に入り、それを召喚獣たちは面白そうに見つめている)




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