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冒険者を目指したのは月並の理由。幼少の頃の命の恩人である冒険者、射士に憧れて。
「…アル!」
その夢は初陣で儚くも砕け散る。
前衛の仲間を無視し、一目散に後衛の射士である俺へ迫り来るゴブリン。
焦り、闇雲に射た矢はゴブリンを掠めもせず、死を悟り、俺は一目散に逃げ出す。
木の根で躓いて縺れる足、射士の装備である矢筒を投げ捨て、身軽にする。
「何で…何で俺を狙って?」
尚も俺に固執して追って来るゴブリンを振り切るべく、俺は町まで逃げ続けるのであった。
◇◇◇
半日後、俺は教会に居た。チームリーダーのツェーザル、副リーダーのイケルも一緒で、養成学校のマルティナ教官も来てくれている。
「…珍しいです。」
「神父様、何が…?」
「アルブレヒト氏は『ギフテッド』です。ギフテッドは極めて稀な才能の事です。」
ツェーザルとマルティナはその告知に驚く。
神父は冴えぬ表情で俺を見る。
「…覚悟して聞くのです、アルブレヒト。」
暫しの静寂、ステンドグラスに差す夕日を背景にして神父は告げる。
「アルブレヒト氏のギフテッドは『囮』と呼ばれるもの。貴殿は、無条件にモンスターを惹付け、最優先の攻撃対象になります。」
「神父様、つまり俺は…。」
「射士は諦めるのです。」
神父はハッキリと告げ、俺は目の前が暗くなるのを覚えて椅子に座る。
「神父様!アルブレヒトは…。」
「マルティナ教官、中途半端に期待を抱かせ続けるのは却って酷です。」
マルティナが神父と口論する。
「ツェーザル……チーム全体を危険に晒して…。」
「でも…。」
「死ぬぞ。」
その横で聞こえるツェーザルとイケルの会話、声は潜めても内容は聞こえて来る。
俺は面を上げる事も出来ず、無意識に石タイルのヒビを目で追って時を過ごす。汗が垂れ、タイルに染みを作る。
「教会で申し上げられる事は以上です。心中、お察し致します。では。」
神父の足音は離れて行く。
「…アルブレヒト、お前をクビにする。」
「ツェーザル、今言わなくても…。」
「否、理解しているよ。」
俺はイケルとマルティナの会話に横槍を入れて、漸く面を上げる。心配するマルティナ教官、困り顔のツェーザル、怒りを滲ませるイケル…三者三様である。
「ツェーザル、イケル。チームに迷惑を掛けて申し訳無く思っている。皆にも宜しく伝えておいてくれ。」
イケルは俺の返事を聞く前に即座に踵を返す、ツェーザルは何か俺に言おうとする素振りは見せたが何も言わず、イケルを追って教会を出た。
「マルティナ教官も来て頂いて感謝します。でも、後は少し1人にして欲しくて…。」
「断る。泣くのであれば泣け。」
マルティナ教官は即座に断り俺の横に座る。
『射士を諦めるのです。』
『射士を諦めるのです。』
『射士を諦めるのです。』
神父の声が頭の中で響く。
教会の矢を射る聖人の壁画が目に入る。
森で投げ捨てた矢筒が脳裏を過る。
刹那、視界がボヤけた。涙は一度出ると止まらず、俺は椅子を叩いて泣く。
マルティナは俺の拳を黙って握った。




