第29話:おじいちゃんの雪遊びと、春の足音
第29話をお読みいただきありがとうございます!
いよいよ物語も終盤へ。
厳しい冬のピークを迎えた『静寂の森』で、村の若者たちと健一おじいちゃんが「冬の運動不足」を解消するべく、地球の遊びで大盛り上がりします!
積もった雪は留まることを知らず、村は完全に白銀の静寂に包まれていた。
コタツと味噌鍋のおかげで凍えずに済んでいるものの、連日の大雪で外出が減り、村の若い男たちはすっかり持て余した体力を持て余していた。
「あー……体が訛っちまうぜ。健一の頭領、なんか外でパッとできる仕事はねぇかい?」
トールがコタツに突っ伏しながら、猫のように大きな体を伸ばして欠伸をする。
「ふむ……仕事というわけではないが、若い衆の運動不足解消に『アレ』でも作ってみようかねぇ」
俺は温かいほうじ茶を一口啜ると、防寒着をしっかり着込んで庭へと向かった。
「おじいちゃん、何するの?」
興味津々のリリアとトールたちがついてくる。俺はスコップを手に取り、積もった雪を固めながら円柱状に積み上げ始めた。さらに中をくり抜き、ドーム状の空間を作っていく。
「これはね、『かまくら』という雪の家だよ」
「雪で……家を作るのか!?」
トールたちが目を輝かせた。
俺の指導のもと、若い衆が総出で巨大なかまくらを作り上げ、中には分厚い藁シートと小さな火鉢、そしてランタンを設置した。
「うわぁぁ! 中に入ると風が来なくて、すごく温かいよ!」
リリアが歓声をあげる。雪の壁が断熱材の役割を果たし、中は驚くほど静かで温かいのだ。夜になると、かまくらの中にトールたちと集まり、雪の中で熱々の甘酒風の温かい飲み物を酌み交わした。
さらには、木板を加工して作った「簡易ソリ」で斜面を滑り降りる遊びを伝授すると、大人も子供も夢中になって大はしゃぎだ。
「がはは! 健一の頭領、雪がこんなに楽しいものだなんて思わなかったぜ!」
「ふふふ、どんな厳しい季節でも、楽しみ方ひとつで最高の思い出になるからのぉ」
遊んで、食べて、笑い合う。
厳しいはずの異世界の冬は、健一おじいちゃんの知恵によって、村一番の賑やかなイベントへと変わっていった。
そして、数週間が過ぎたある朝。
「……あ、おじいちゃん見て! 雪が溶けてる!」
リリアが指さした先――庭の隅の残雪から、ちいさな緑色の新芽がひょっこりと顔を出していた。
冷たく澄んだ風の中に、ほんのりと温かい「春の匂い」が混ざり始めている。
「ふぅ……長い冬も終わりか。そろそろ、春の畑仕事の準備を始めるとしようかねぇ」
肩の上のモフちゃんが「きゅぅ」と気持ちよさそうに鳴き、俺は日差しの温もりに目を細めた。
70歳のおじいちゃんが紡ぐスローライフは、いよいよ温かな春の訪れとともに、次なる未来へと向かっていく。
第29話をお読みいただきありがとうございました!
雪国ならではの知恵「かまくら」と「ソリ遊び」で、冬の終わりを笑顔で乗り越えたおじいちゃんたち。
そしてついに、季節は巡り「春」の兆しが訪れます!
次回、第30話でついに最終回となります!
異世界で第二の人生を全力で楽しむ健一おじいちゃんの結末を、ぜひ最後まで見届けていただけると嬉しいです!




