第23話:おじいちゃんと、森の毛玉
第23話をお読みいただきありがとうございます!
村の憩いの場となった健一おじいちゃんの縁側。
今回は、森の奥からやってきた「ある意外な訪問者」によって、おじいちゃんの生活の知恵が再び冴えわたります!
縁側でヘルメスとお茶を啜っていた午後、庭の隅にある茂みがガサガサと大きく揺れた。
「ん……? トールさんか? いや、足音が聞こえんかったな」
「健一殿、警戒しなされ! 森の魔物かもしれん!」
ヘルメスが慌てて杖を構える。
茂みから転がり出てきたのは、拳三つ分ほどもある、全身が灰色のふさふさした毛で覆われた「丸い毛玉」のような生き物だった。
「きゅぅ……」
弱々しい鳴き声をあげ、毛玉は俺の足元へ力なくすり寄ってきた。よく見ると、短い足とクリクリとした黒い目がついており、まるで巨大な毛糸の玉のようだ。
「……これは『モフウサギ』の幼体じゃな。人前には滅多に姿を現さん珍獣だが……どうやら毛並みがガサガサで、体調を崩しておるようだ」
「どれどれ、見せてごらん」
俺は毛玉をそっと抱き上げた。見た目以上に軽く、毛の奥の皮膚がカサカサに乾燥している。
毛玉は俺の掌の温もりが気持ちいいのか、「きゅ~……」と目を細めて身を委ねてきた。
「ふむ……長年連れ添った家のポチ(愛犬)も、冬場はよく皮膚をかゆがっていたなぁ。栄養不足と乾燥肌だ」
俺は膝を摩りながら立ち上がり、台所から先日の「トマトの皮」や「香草の出し殻」、そして細かく砕いた「卵(に似た鳥の殻)」を混ぜ合わせた特製の餌を作った。
さらには、薬草オイルをほんの少量落としたぬるま湯を桶に張り、毛玉の体を優しく拭いてやる。
「よしよし、かゆいのは辛かったなぁ。しっかり栄養をとって、肌を保湿してやればすぐに良くなるよ」
俺が優しく声をかけながら背中を撫でてやると、毛玉は嬉しそうに『ぷすー、ぷすー』と小さな寝息を立て始め、俺の膝の上で完全に丸くなって眠ってしまった。
「ば、馬鹿な……! モフウサギは非常に警戒心が強く、人間に懐くことなどあり得んのだぞ!? それを、ただ体を拭いて餌をやっただけで……!?」
ヘルメスが目を剥いて驚愕している。
「なーに、人間も動物も、困っている時に優しくしてほしいのは同じですよ。それに、70年も生きていればペットの世話くらいお手の物ですからね」
数時間後、目を覚ました毛玉の毛並みは、見違えるほどツヤツヤのモフモフに復活していた。
すっかり俺に懐いた毛玉は、俺の肩の上にちょこんと乗り、機嫌よく尾を振っている。
「ふふふ、新しい家族が増えたみたいだな」
70歳のおじいちゃんの知恵と優しさは、ついに異世界の可愛らしい野生動物まで魅了してしまったのだった。
第23話をお読みいただきありがとうございました!
傷ついたモフウサギを長年のペット飼育知識で癒やした健一おじいちゃん!
新たな可愛い相棒(?)が増え、おじいちゃんの異世界スローライフはさらに賑やかになりそうです。




