第21話:おじいちゃんの晩酌と、至高のつまみ
第21話をお読みいただきありがとうございます!
特製ケチャップの独占販売契約を結び、村に新しい産業を生み出した健一おじいちゃん。
今回は、村の若者たちを集めて「大人の夜の楽しみ」を伝授することになります!
オズワルド商会との商談が見事にまとまり、村は活気に包まれていた。
日中の仕事を終えた夕暮れ時、俺の住まいの縁側に、トールをはじめとする村の若い男たちがぞろぞろと集まってきた。
「健一の頭領! 今日もケチャップの仕込み、手伝わせていただきましたぜ!」
「おお、ご苦労さん。トールさんたちも働き者で助かるよ」
俺は温かいお茶を一口啜り、ニコリと微笑んだ。
汗を流して働いた後の若者たちの顔は、どこか晴れやかで誇らしげだ。自分の手仕事が村の収入になるという実感が、彼らをたくましくしている。
「なあ、頭領。オズワルドの奴が持ってきたこの『麦酒』って酒、冷やして飲むと美味いらしいんだが……どうにも苦くてなぁ」
トールが大きな木樽から汲んだ黄金色の液体を、苦めぐりな顔で眺めている。
この世界の麦酒は、地球のビールに似ているが、泡立ちが粗く、冷え切っていないため苦味が前面に出てしまっているのだ。
「ふむ……どれ、わしに見せてごらんなさい」
俺はトールから杯を受け取り、一口口に含んだ。
(……なるほど、冷やし込みが足りんのと、つまみが無いのが惜しいな)
せっかくの美味しいお酒も、飲み方と「お供」がなければ魅力は半減してしまう。
70年の人生で幾度となく晩酌を楽しんできた元・サラリーマンの血が、ふつふつと騒ぎ出した。
「トールさん、川の冷たい水でこの樽をもっとキンキンに冷やしてきなさい。その間に、わしが『至高のつまみ』を作ってあげるから」
「つ、つまみ……!?」
俺は台所に立ち、収穫したての完熟トマトと、村で採れる塩漬けのチーズ(モッツァレラに似たフレッシュチーズ)を取り出した。
トマトを薄切りにし、同じように切ったチーズと交互に並べる。
そこにオリーブオイルに似た植物油を回しかけ、乾燥させた香草と塩、粗挽きのコショウをパラリと振る。
「まずは一品目。『トマトとチーズのカプレーゼ』だ」
さらに、先日のケチャップにほんの少しの潰しニンニクと香草を混ぜ、カリカリに焼いたパンの上にたっぷりと塗る。
「そして二品目、『ガーリックケチャップトースト』」
川の水でキンキンに冷やされた麦酒とともに、縁側に豪華な「おじいちゃんの晩酌セット」が並べられた。
「さあ、冷えた麦酒と一緒に、このチーズとトマトを重ねて食べてごらん」
「う、うむ……いただきます!」
トールが半信半疑でカプレーゼを口に放り込み、冷えた麦酒をゴクゴクと流し込んだ。
次の瞬間――トールの目が飛び出さんばかりに見開かれた!
「――っくはぁぁぁぁぁぁっ!!???」
「と、トール!? どうしたんだ!?」
「う、うめぇぇぇぇっ!! なんじゃコリャぁぁっ!!」
トールは自分の頭を抱えて叫んだ。
「トマトの甘酸っぱさとチーズのコクが重なって……そこに冷えた麦酒の苦味が重なると、喉越しが爽快すぎて止まらねぇ! 苦かったはずの酒が、甘く感じるほどだぞ!?」
「俺にも食わせろ!」「うわっ、パンに塗ったケチャップも最高だ! 麦酒が進みすぎる!!」
若い衆が群がるように皿へ手を伸ばし、あっという間に酒とつまみが消えていく。
「ふふふ、お酒はね、ただ飲むんじゃない。『味わい方』を楽しむものなんだよ」
俺は手元の杯を傾け、冷えた麦酒をちびりと飲んだ。
地球で仕事を終えた後、赤提灯の居酒屋で仲間と酌み交わしたあの時間。
異世界で若い衆に囲まれながら飲む酒も、また格別の味わいだった。
70歳のおじいちゃんの知恵袋は、異世界の夜まで豊かに彩っていくのだった。
第21話をお読みいただきありがとうございました!
カプレーゼとケチャップトーストで、異世界の「晩酌文化」を開拓した健一おじいちゃん!
美味しいお酒とつまみで、村の男たちとの絆もさらに深まります。




