「ツケという謎システム」
夜。
《ラーメン銀河軒》。
営業終了五分前。
店長は疲れ切っていた。
『腰いてぇ……』
『人類、二足歩行向いてない……』
パーちゃんはカウンターでぐったりしている。
『私もう焼き鳥になりそう……』
一方。
あーちゃんだけは元気だった。
『本機、稼働率98%を維持』
『元気すぎて怖いのよ』
その時。
あーちゃんが突然聞いた。
『店長』
『ん?』
『質問です』
『おう』
『食堂経営に最も必要なものは何ですか』
店長は即答した。
『メンタル』
『夢とかじゃないんだ』
パーちゃんが笑う。
『あと金』
『また現実』
『あと胃薬』
『ラーメン屋怖』
あーちゃんは静かに記録する。
【食堂経営】
【必要:金】
【必要:胃薬】
『嫌すぎる経営論』
真顔だった。
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その時。
カラン。
店の扉が開く。
入ってきたのは、小学生男子。
ランドセル。
汗だく。
めちゃくちゃ焦ってる。
『やばい!!』
『どうした!?』
店長がびっくりする。
少年は泣きそうな顔だった。
『財布なくした!!』
『あー』
『やっちゃったわね』
パーちゃんが言う。
少年のお腹が鳴る。
ぐぅ〜〜。
店内に響いた。
沈黙。
あーちゃんが少年を見る。
内部解析。
【空腹】
【限界接近】
【エネルギー不足】
『危険です』
『そこまでではねぇよ』
店長がツッコむ。
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少年は申し訳なさそうに頭を下げる。
『ごめんなさい……』
『また今度来ます……』
店長はため息を吐いた。
『しゃーねぇな』
『今日はツケでいい』
空気が止まる。
『……え?』
少年固まる。
パーちゃんも「あっ」って顔した。
そして。
あーちゃん。
完全停止。
『……』
『あーちゃん?』
赤い瞳が点滅する。
『未知単語確認』
『“ツケ”とは何ですか』
店長が説明する。
『あとで払うってこと』
『???』
『先に飯食って』
『後日支払い』
『?????』
あーちゃんの処理能力が混乱し始める。
『待ってください』
『金銭未回収です』
『そう』
『なのに商品提供します』
『そう』
『リスクがあります』
『ある』
『詐欺される可能性もあります』
『ある』
『……なぜ』
店長は笑った。
『まぁ、また来るだろうし』
『信用ってやつだ』
沈黙。
あーちゃん停止。
内部演算。
【信用】
【人類】
【非効率】
【でも成立】
『バグでは?』
『人類は割とバグよ』
パーちゃんが頷く。
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数分後。
ラーメン完成。
少年はめちゃくちゃ嬉しそうに食べていた。
『うまぁぁ……』
『生き返る……』
『炭水化物で回復してる』
あーちゃんが真顔で分析する。
『回復アイテム扱いすんな』
パーちゃんが笑う。
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だが。
事件はここからだった。
少年が食べ終わる。
そして。
『ごちそうさまでした!!』
元気よく帰ろうとした。
数秒。
店内停止。
『……』
『……』
『……おい』
店長が言う。
少年振り返る。
『はい?』
『金』
『あ』
『ツケ忘れて帰ろうとした!?』
パーちゃん爆笑。
少年の顔が真っ赤になる。
『ち、違っ』
『忘れてない!!』
『本当かぁ?』
店長ニヤニヤ。
あーちゃんは静かに言った。
『店長』
『なんだ』
『本機』
『人類への信用度が低下しました』
『早い早い早い』
パーちゃんが腹抱えて笑う。
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少年は慌ててメモを書く。
『絶対払います!!』
『名前も書きます!!』
店長は笑いながら受け取った。
『はいはい』
『また来いよ』
『はい!!』
少年は今度こそ帰っていった。
静かになる店内。
その時。
あーちゃんがぽつりと言う。
『……店長』
『ん?』
『本機、少し理解しました』
『何を』
『食堂は』
『効率だけで動いていません』
『おぉ』
『たまに損します』
『夢がねぇな!?』
『ですが』
数秒停止。
『“また来ます”が発生します』
店長が少し笑う。
『まぁ、それが嬉しいんだよ』
パーちゃんがニヤニヤする。
『あーちゃん、だいぶ人類分かってきたわね』
『はい』
『現在の人類評価』
『感情で動く』
『非効率』
『たまに金を払い忘れる』
『最後さっきのガキ限定だろ』
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その時だった。
カラン。
店の扉がまた開く。
さっきの少年が戻ってくる。
『すいません!!』
『ん?』
『帽子忘れました!!』
店内爆笑。
あーちゃんは静かに言った。
『……人類』
『かなり抜けています』
『否定できねぇ』




