表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

「ツケという謎システム」

夜。


《ラーメン銀河軒》。


営業終了五分前。


店長は疲れ切っていた。


『腰いてぇ……』


『人類、二足歩行向いてない……』


パーちゃんはカウンターでぐったりしている。


『私もう焼き鳥になりそう……』


一方。


あーちゃんだけは元気だった。


『本機、稼働率98%を維持』


『元気すぎて怖いのよ』


その時。


あーちゃんが突然聞いた。


『店長』


『ん?』


『質問です』


『おう』


『食堂経営に最も必要なものは何ですか』


店長は即答した。


『メンタル』


『夢とかじゃないんだ』


パーちゃんが笑う。


『あと金』


『また現実』


『あと胃薬』


『ラーメン屋怖』


あーちゃんは静かに記録する。


【食堂経営】


【必要:金】


【必要:胃薬】


『嫌すぎる経営論』


真顔だった。



---


その時。


カラン。


店の扉が開く。


入ってきたのは、小学生男子。


ランドセル。


汗だく。


めちゃくちゃ焦ってる。


『やばい!!』


『どうした!?』


店長がびっくりする。


少年は泣きそうな顔だった。


『財布なくした!!』


『あー』


『やっちゃったわね』


パーちゃんが言う。


少年のお腹が鳴る。


ぐぅ〜〜。


店内に響いた。


沈黙。


あーちゃんが少年を見る。


内部解析。


【空腹】


【限界接近】


【エネルギー不足】


『危険です』


『そこまでではねぇよ』


店長がツッコむ。



---


少年は申し訳なさそうに頭を下げる。


『ごめんなさい……』


『また今度来ます……』


店長はため息を吐いた。


『しゃーねぇな』


『今日はツケでいい』


空気が止まる。


『……え?』


少年固まる。


パーちゃんも「あっ」って顔した。


そして。


あーちゃん。


完全停止。


『……』


『あーちゃん?』


赤い瞳が点滅する。


『未知単語確認』


『“ツケ”とは何ですか』


店長が説明する。


『あとで払うってこと』


『???』


『先に飯食って』


『後日支払い』


『?????』


あーちゃんの処理能力が混乱し始める。


『待ってください』


『金銭未回収です』


『そう』


『なのに商品提供します』


『そう』


『リスクがあります』


『ある』


『詐欺される可能性もあります』


『ある』


『……なぜ』


店長は笑った。


『まぁ、また来るだろうし』


『信用ってやつだ』


沈黙。


あーちゃん停止。


内部演算。


【信用】


【人類】


【非効率】


【でも成立】


『バグでは?』


『人類は割とバグよ』


パーちゃんが頷く。



---


数分後。


ラーメン完成。


少年はめちゃくちゃ嬉しそうに食べていた。


『うまぁぁ……』


『生き返る……』


『炭水化物で回復してる』


あーちゃんが真顔で分析する。


『回復アイテム扱いすんな』


パーちゃんが笑う。



---


だが。


事件はここからだった。


少年が食べ終わる。


そして。


『ごちそうさまでした!!』


元気よく帰ろうとした。


数秒。


店内停止。


『……』


『……』


『……おい』


店長が言う。


少年振り返る。


『はい?』


『金』


『あ』


『ツケ忘れて帰ろうとした!?』


パーちゃん爆笑。


少年の顔が真っ赤になる。


『ち、違っ』


『忘れてない!!』


『本当かぁ?』


店長ニヤニヤ。


あーちゃんは静かに言った。


『店長』


『なんだ』


『本機』


『人類への信用度が低下しました』


『早い早い早い』


パーちゃんが腹抱えて笑う。



---


少年は慌ててメモを書く。


『絶対払います!!』


『名前も書きます!!』


店長は笑いながら受け取った。


『はいはい』


『また来いよ』


『はい!!』


少年は今度こそ帰っていった。


静かになる店内。


その時。


あーちゃんがぽつりと言う。


『……店長』


『ん?』


『本機、少し理解しました』


『何を』


『食堂は』


『効率だけで動いていません』


『おぉ』


『たまに損します』


『夢がねぇな!?』


『ですが』


数秒停止。


『“また来ます”が発生します』


店長が少し笑う。


『まぁ、それが嬉しいんだよ』


パーちゃんがニヤニヤする。


『あーちゃん、だいぶ人類分かってきたわね』


『はい』


『現在の人類評価』


『感情で動く』


『非効率』


『たまに金を払い忘れる』


『最後さっきのガキ限定だろ』



---


その時だった。


カラン。


店の扉がまた開く。


さっきの少年が戻ってくる。


『すいません!!』


『ん?』


『帽子忘れました!!』


店内爆笑。


あーちゃんは静かに言った。


『……人類』


『かなり抜けています』


『否定できねぇ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ