修学旅行
初めての本当の笑顔…
「今日は待ちに待った修学旅行です。みなさん楽しんでいきましょう!」
今日から2泊3日の修学旅行。外である程度の説明を受けてバスに乗り込む。
この湯ノ峰町からバスで名古屋駅まで行ってそこから新幹線で旅行先の東京まで行く。
「はぁ……朝早くから…おーい、そんなうるさくするなよー」
1番前の席…俺の斜め前に座っている5組の副担任の大我先生が、後ろに向かって大きな声で言う。
正直に言うと…俺はあまりこの先生が苦手…。
今まで関わりがなかったからもそうだけれど、なんか、、先生の中で対応する子の順番が決まってそうで……。
だけれど、先生と1番の仲良しなのはこの大我先生。
だから、俺も仲良くしたいのだが……今のところ上手くいってない……。
「すみません…大我先生、生徒任せちゃって……。」
そう言ってバス内に入ってきたのは、先生だった。
「さっき点呼しました。全員います。」
「ああ…ありがとうございます。……あのここ、いいですか……?」
そう言って俺の席の前に来る。
…って、え…!!…先生が席近くにしてくれた!?
…この座席は先生たちが決めたもの………先生は俺が少しでも楽しめるようにそうしてくれた。
そして、席に座り俺の方を見る。
「よろしくお願いします。」
その言葉に嫌だった修学旅行が少し楽になった。
◇
「え!?昨日の夕飯りんご!?」
バス内では先生と大我先生が入っていいよと言ってくれて、3人で会話をしていた。
大我先生が先生に昨日の夕飯なんでしたかー?って聞いたら、まさかのりんご一欠片と返ってきてつい声が出てしまっていた……。
先生によると、大我先生はこうやって毎回、昨日何食べたか聞いてくるらしい。
「もう〜この前だってちゃんと食べてって言ったじゃないですかー。それだからこんなに細いんですよー」
「大丈夫です。修学旅行先でたくさん食べるので!」
なんだかいつもと違う先生が見れて嬉しい…。すると…
「……っぷ、……あはは!」
と、先生が突然と笑い出す……。あ……
「ちょ、笑ってますけど…全然笑えないですからね…?」
そう言う大我先生の隣でまだ笑っている先生。
……俺、先生の笑ってる顔……初めて見た…。
…この人もちゃんと声を出して笑うんだ…。そう思うくらいにびっくりした状況だった。
そして、俺はなんだかとても嬉しかった…。
◇
「って言った矢先……生徒が4人で分けて食べている鍋をなんで1人で食べるんですか…」
1日目のお昼終わり東京につき昼食を終え今からツリーに行くバスの中。
「まぁ、ぶっちゃけまだいけましたよ?美味しかったので。」
そう言ってニコッと笑う…やっぱり先生は天然だ……。
「でも、お腹空いてましたよね?朝も食べてないわけだし…」
「…ん?朝食べてないってなんで知ってるんですか?」
大我先生の質問に俺はそう聞いていた。
先生は俺らよりも朝が早いのか……そんなことを思っていたけれど返ってきた答えは意外なものだった。
「…僕、朝ごはん食べれないんですよ。」
先生の初めて聞く話だった…。
「…え…それは…どういう……」
「食欲がないというか……食べる気にならないんですよね…。僕もなりたくてこんな細い体になってるわけじゃないんですよ。」
改めて、先生の腕を見る。
細すぎてちょんっと触ったら折れてしまいそうなほど心配になる腕…。
「…そうなんですか」
「あ、でも、痩せてる理由は走っているからもあると思います。一応ちゃんと運動しているので…。」
「あ、確か学生の時は陸上部って言ってましたよね?」
「はい。体力なら自信があります!」
先生はドヤ顔で…楽しそうに言った。
◇
「今日のネズミーでこの前乗れなかったアトラクション絶対乗るんです!」
先生の楽しそうな声が聞こえてくる。ネズミーは日本有名のアミューズメントパークだ。
「先生、今年でネズミー何回目なんですか?」
「2……いや、3ですね…。あんまり行けてないので楽しみです!」
見てわかる通り先生はネズミーが大好きなネズミーマニアさん。
「先生!うちらの班、奥のアトラクション乗りたいんですけどカチューシャもお揃いで付けたいらしくて……なんかいい穴場ないですか…?」
今回ネズミーにいる時間はものすごく短い。
その短時間で、アトラクションに乗りたいし、お土産も買いたいし、夕飯も食べないとだし………やることが意外と多いため混雑に巻き込まれないようなルートをマニアさんに聞いてみる。
「それなら……ここの裏道を使うのがいいですよ。ここの裏道抜けた隣にカチューシャが売っているお店がありますし、ここからアトラクションまではほぼ真っ直ぐで行けるので道に迷うこともないと思います…。」
「……ありがとうございます!!」
この道なら方向音痴の俺でもいけそう!そう思いながらバスはネズミーへと向かっていた。
◇
………ネズミー集合時間19:00まであと15分…うちらの班は……急いでご飯を食べていた………。
「…これ、間に合わんくない?」
「お前今から食うのかよ!?こっから集合の場所までちょっと歩くぞ!?」
「……よし。完食…まじ腹一杯……なんでプラスでチュロスまで買ったんやろ……」
俺もみんなに迷惑をかけないように早食いをしていく。
班の子たちは食べ終わっている子とあともう少しの子、今から手をつける子だっている……。
一応これでも時間短縮に力を入れた方…班でばらけてはダメと言われていたが、アトラクション並ぶ組と、お土産を買う組とで別れてたし……。
普通ネズミーはこんな短い時間で周るところじゃない……そして……
「…ん!食べ終わった!!」
最後まで食べていた子が完食をする。
「おい…!今何時や…!!」
「今……集合の時間まであと、5分!!」
「よし!走るぞー!!」
そうして、食べたばっかりの状態でみんなで集合場所に向かって全力疾走した………。
◇
「ぎ…ギリ、セーフ……」
「何がギリセーフや。5分前行動は守れって言ったやろ。」
集合場所に到着して早々、大我先生のお叱りを受ける……。
だけれどそんなことより……
「うわぁ………」
ネズミーのエントランス。
目の前には、夜仕様のイルミネーションで光っているネズミーランドホテル……その景色がとても綺麗だった………。
「……綺麗…。」
とっても素敵な景色に自然に声が出てくる。
「そうですね……」
と、隣から声が聞こえてくる……って……
「…え!先生……!!」
「驚かせてすいません。……僕…この景色大好きなんですよ………。」
そう言ってキラキラと輝いているホテルに目をやる。
「あ…先生写真撮ってあげますよ!この綺麗な景色をバックに!!」
「…え、あ……そんなわざわざ………」
そんな先生の言葉を聞かずして俺はカメラを構える。
「ほらほら!いきますよ〜はい、チーズ!!」
フラッシュ音が鳴り撮れた写真を確認する。
急に撮ったせいでぎこちなく慌てた先生と綺麗なイルミネーションの光が映り込んでいる……。
「お、ええやん。」
と、隣から写真を覗くように大我先生が見てきた。
「はい。とっても綺麗な写真です…。」
そして、その写真を見とれるように見て、ありがとうございます。と、先生に伝える。
「…よいしょ……はぁ」
その時、大我先生が何か大荷物を床に置く…。ってむっちゃ重そうなんだけど……
「さっきから気になっていたんですけれど、お土産ですか?でも、行きのバスでお土産は買わないって………」
俺が言いたかったことを先生がそのまま聞いてくれる。
俺も行きのバスで買わないって聞いていたから、一瞬お土産ではないのでは…と思ったが大我先生が持っている袋にネズミーのキャラクターがプリントされており完全にパークで買ったものだと思われる。
そしたら、先生が何かを思い出したかのように口にする。
「あ、!…もしかして、奥さんにですか?」
少しいじりが入ったかのようにそう言う。
大我先生は今年3月に結婚したばかり。
それから、ちょこちょいと本人の口から奥さんの話をする。
こっちから振ったら恥ずかしがってしてくれないけれど……。
「…ち、…違いますよ……!!これは…、お、俺の…分なので…!!!」
そう言って全力否定をする大我先生。その姿に先生はくすくすと笑っていた。
「…っ先生も、いつかプロポーズをする時は、ここでしてみては…?」
「……僕にもそんな時が、来ますかね………。」
綺麗な景色を見ながら、先生は少し寂しそうな顔をした……。
◇
「じゃーん!!」
「それいつ使うんだよ……」
中華街を周り終わり点呼をするため自分のクラスのバスに乗る。
そこから、駅まで行き東京とはお別れだ。
「端にあった古着屋で見つけたんですよ!ほらこの緑!先生カラーです!」
俺が今身につけているのは、レンズが緑のサングラス。なぜか目に留まり買ってしまったのだ…。
「似合ってます…!これなら普段使いできますね。」
先生の言葉に大我先生がツッコもうとしているが、静かに止める。
確かに、これ普段使い…?先生のよく分からない天然ぶりが出てしまっている……。
「ほらほら、写真撮ってやるよ。」
「え!?いいんですか?!」
大我先生がそう言ってくれて俺はびっくりする。
…大我先生はこのグラサンで撮る予定だと思っているが、記念に…と思いグラサンを目から外す。
「先生も…写真入ってくれませんか……?」
恐る恐る聞いてみる。
すると、先生はびっくりした顔で言った。
「写真は全然いいんですけど、僕でいいんですか…?」
その言葉に俺はぷっとひと笑いしてしまう。
「はい!」
あの時大我先生が撮ってくれた、先生との写真は今でも大切に保存してある─。
◇
湯ノ峰までの帰りのバス。行きとは違い少々大人数で喋っていた。
「で、先生は学校の先生同士…すなわちおんなじ仕事場での恋愛はありだと思う派ですか……?」
俺の隣に座っている生徒が先生にそんな質問をする。
今は先生のいい人を探そうという話題で真面目な雰囲気になっている。
隣の大我先生は今でも笑いを堪えようと頑張っている。
「まぁ、ありじゃないですかね……。たとえ僕じゃなくて他の先生がやっていても僕は賛成だと思います…。」
「なるほど……峰中の先生ね………。」
なんでこんな話題を恥ずかしなしで言えるのか……生徒は遊んでいる感じがするが……先生はやっぱり天然だ。
「…伊田先生……いやあの人はちょっと合わないか……日石先生は…結婚済みかぁ……」
「あ…!あの、先生は……!」
その時、考えている生徒の隣でもう1人手を上げた。
「あの〜………名前が出てこないけど……!…保健室にいる人…!」
その時姿を思い出す。
この前保健室に行った時に対応してくれた人か……小柄で顔も可愛らしかった記憶である。
「あ〜あのちっちゃくて可愛い人?」
隣の生徒もおんなじことを言っている。やっぱりみんな持っているイメージは一緒だった。
「内蔵田先生な。」
大我先生がそう修正する。
へぇ〜あの先生って内蔵田先生っていうんだ……。しかし……
「ん〜、でもあの先生この前知らない男の人と出かけてたのを見たような………」
ひとりの生徒がそんなことを言う。じゃあダメか……と思ったその時……
「えぇぇ!!??」
先生は大きく驚きその言葉と同時に手に持っていた、紙やペンを一気に落とす。
その状態に大我先生がとうとう笑ってしまう。
「…先生…、動揺しとるっ……」
先生が落としたものを拾いながら大我先生が言う。
「……こ、この話は…終わりです……」
そして、自分の左手を見た。
「気を使わなくて大丈夫です……。僕の、左薬指もいつか光る時がくると………思うので…」
先生の言葉でこの話題は終わってしまった。
◇
「休日はたまに先生と出掛けに行くんやで!」
まるで、俺にええやろと自慢するように大我先生が言う。
一応、この学年の生徒や先生達には俺と先生はセットみたいなイメージがついてしまっている。
で、大我先生からはそれを対抗するような……そんな圧が感じられる……。
「この前だって先生の家に朝早く行って1からコーヒー作ったし。」
そう言って、またこっちを見る。あなたは誰と勝負しているんですか…。
「俺の好きなラーメン屋に行ってもらうかわりに植物のお店だったりかき氷屋だったりも一緒に行ってるしな。もう、三重県の植物屋全部回ったんじゃないってくらい。」
「まぁ……そうですね……」
ほら先生反応に困ってるじゃん!?その瞬間先生が俺の方を見た。
「……だけれど、お母さんのところまだ行ったことないですね……。」
先生が俺を指差して言う。
「え!?お前の家植物屋?!」
びっくりした声で大我先生が聞いてくる。誤解の生む言い方を……
「家じゃなくて……うちの親の職場先が植物屋なだけです…。」
「あ…なるほど…びっくりしたぁ……」
別にそんな驚かなくても……でも、確かにまだ先生は来たことなかったな……
「SNSもフォローしているんで毎回投稿楽しみにしています…!」
先生はにっこと笑い中学生の修学旅行が終了した。
この修学旅行は俺の中でも強く思い出に残り、先生のこともよく知れた嬉しい時間だった──。
改めて作品を読んでくださりありがとうございます。
みなさんはGWどうでしたか…?早いですよね…終わるの…。
GW期間中でもたくさんの人がこの作品を読んでくださり本当に嬉しかったです。
次の投稿は5月9日土曜日の予定です。
ありがとうございました!!




