第7.5話
バレーノはハビアンに連れられて書斎を後にした
静かになった書斎でレガトゥスは一人だった
程なくして、扉をノックする音がその沈黙を破る
オースが入ってきた
レガトゥスは目を上げることなく、近くにあった書物を読んでいる
オースはレガトゥスのほうへ向かい、口を開いた
オース「プラーミャは力を使ってはいませんでした。話によると、バレーノの言葉に気が立ち、腕を見せただけとのことです。あたらしい袖をあてておきました」
レガトゥスは書物に目を通したまま答える
レガトゥス「ふむ…ならばまぁよしとしましょう。あの地域は避難が完了しており、幸い人に見られることはなかったでしょうしネ」
オースはレガトゥスのいる机のそばで立ち止まり、レガトゥスを見る
オース「…わかっていたんですよね。バレーノがアムンストの事実を知った時の反応も、それに対してプラーミャが何をするかも」
レガトゥスはふっと笑う
レガトゥス「まさか。私はあなたたちに力を使用することを禁止しているというのに、そのようなリスクのあることをさせるト?」
オース「…あなたはそれほどになるまでに力を使用しているというのに、僕たちにはそう言うのですね」
レガトゥスはそこで初めてオースのほうを見た
そして書物を机に置き、椅子に深くもたれる
その口元はまだほほえんだままだった
その目だけが、まっすぐにオースを見つめていた
オース「…立てないのでしょう?その椅子から。僕たちの仲間を…バレーノを探すことに力を使いすぎて」
沈黙が部屋中を駆け巡る
隅にある暖炉だけが、絶えずパチパチと音を奏でていた
そしてレガトゥスはほほえみながら答えた
レガトゥス「…この姿も、力も、我々は望んで得たわけではないのでス。むやみに使うものではありませんヨ」
オースはレガトゥスを突き刺すような眼差しで見た
オース「しかしあなたは力が使える限り使用している。僕たちのために。どうしてですか?疲弊すればするほど、【浸食】される可能性だって増えるのですよ?」
少し口調を強めたオースの声が書斎に響く
少し間をあけて、静かに、ゆっくりとレガトゥスは言った
レガトゥス「…それが、私にできることならば、いくらでも使いますヨ」
オースは諦めたように肩の力を抜き、失礼しますと言って書斎を出た
またしても沈黙が部屋中を駆け巡る
レガトゥスは扉の方を見つめ、静かに目を閉じた
そしてぽつりと言った
レガトゥス「…それが私という物語にとっての前提であり、進むべきところへの道しるべなのですから」
レガトゥス「…そうでしょう?…マハト」
静まり返った書斎で、その問いかけに答えるものはなかった




